主権者教育の特別授業@上越高校2021*追記あり


3年連続

3月1日、上越高校の2年生向けに、主権者教育の特別授業をしてきました。上越高校のホームページに授業のことが掲載されたのでリンクをはっておきます。

上越高校では、2018年度2019年度にも同様に、主権者教育の授業をさせていただいているので、今回で3年連続の実施ということになります。今回も、新潟県弁護士会の弁護士学校派遣制度を利用しての申し込みでした。

「ルールについて考えよう」(1コマ目)

2年生全体(約220人)が体育館に集まり、机も椅子もなしで床に直接座る形。しかも大変寒い。いろいろ困難な事情が重なっていることもあり、昨年に引き続き、「ブラック校則」の問題をメインの素材にして、「ルール」について様々な角度から考えてもらう構成にしました。

全体の流れも昨年と同様です。

1 導入

(1)どんなルールがある?

まずは私たちの身の回りにはどんなルールがあるかについて確認しました。
家での決まり事、学校の校則、ゲームやスポーツのルール、法律、地方自治体の条例、国際条約等々。

(2)ルールは何のためにある?

次に、ルールは何のためにあるのか、どうしてルールを作るのかと問いかけ。
そして、もしルールがなかったらどうなるのかを一緒に考えました。
ルールがなかったらいろいろな不都合や困りごとが起きる。物事を円滑に進めたり、みんなが安心して暮らしたりするためにルールが必要になることを確認しました。

(3)ルールは守るもの?

次は、ルールはどういうものなのかという話。

せっかくルールを作っても守られないと、ルールがないのとあまり変わらない状態となってしまう。ルールは守るものであるということを確認。

2 どんなルールでも守らないといけない?

「小中学校の道徳の授業だと、だからみなさんルールを守りましょうね、でおしまいです。みなさん、そんな話は聞き飽きたって感じですよね。私もそんな退屈な話をしにきた訳ではありません。今日の授業の本題はここからです。」と言って、
「どんなルールでも守らなければならないのでしょうか?どんな状況でも何も考えずにただルールを守ってさえいればいいのでしょうか?」と問いかけ。

そのうえで、板橋区の小学生が「友達と思いっきりサッカーがしたい」という思いから行動を起こして、区議会に陳情して公園の利用時間延長などを実現した話を紹介しました。

そして、子どもでないと気づかないこともあるし、子どもでも遠慮せずに声を上げていい。自分で声を上げ、他の人の声もしっかり受け止める。そのうえで調整するというのが民主主義の考え方であることを確認しました。

3 身近におかしいルールはない?

次に、「みなさんの身近にはおかしいルールはないでしょうか?」と問いかけをして、各地で問題となっている「ブラック校則」の具体例を紹介しました。

校則について法令上明文の規定はないこと、文部科学省が作った『生徒指導提要』には「(状況の変化に応じて)絶えず積極的に見直さなければなりません」と記載されていること、文部科学大臣が国会で「児童生徒や保護者が何らかの形で参加した上で決定するのが望ましい」と答弁していること、実際に各地の学校でブラック校則を見直す動きが広がっていること、県立高校の先生が電子署名の呼びかけをしていること等をお話しました。

4 ルールを変えなければならないとき

「先ほどのお話は、ルールを変えた方がよい場合もあるというお話でしたが、この後のお話は、ルールを変えないと大変なことになることもあるというお話です。」と言って、人類滅亡までの時間を表示する『終末時計』の針が「残り100秒」とされた話を紹介しました。

その要因として、新型コロナウイルスの問題、核兵器の問題、地球温暖化(気候危機)の問題等が指摘されていること、どれも地球に生きる人全てに関わる問題であり、みんなで知恵や力をあわせて問題解決にあたる必要があること、個人・国・世界など様々なレベルでルールや行動を変えていかなければならないこと等をお話しました。

5 まとめ

最後にまとめとして、ルールは何のためにあり、どういうもので、どのように作られる(変えられる)かということを確認しました。この「まとめ」を記入するための用紙を配っていたのですが、生徒さん達が全員熱心にメモをとってくれました。

(1)何のため?→みんなが安心して暮らせるように、よりよく生きられるようにするため。
考え方や価値観、好みなどは、人によって様々。立場によっても物事の見え方や考え方が変わってくる。いろんな意見を持っている人同士がうまくやっていけるように、みんなが安心して暮らせるようにするためにルールが必要。

(2)どういうもの?→守るものであると同時に、必要に応じて変えるものでもある。
みんなが安心して暮らしていくためには、決めたルールを守ることが必要。
でも状況が変わり、ルールを守っていたのでは不都合が出てくることもある。そんな場合には、不都合を解消してみんなが安心して暮らせるようにするために、ルールを変える必要がある。

(3)どうやって?→みんなで作るものであり、みんなで変えるものでもある。
「みんなで作る」際に、無理に1つの意見にまとめたり、数が多い方に決めたりするのは望ましくない。そうしてしまうと、「一部の人」が安心して暮らすことができなくなってしまうから。それぞれに主張し、違いを互いに理解し尊重しあったうえで、できるだけ「みんな」が安心して暮らせるように知恵を絞って調整する。
変える場合にも「みんなで変える」。どんな不都合があるのか、変える必要があるのかは、当事者にしか気づかないこともある。声を上げること、きちんと伝えることが大切。遠慮は美徳ではない。

「何でも聞いちゃおう」(2コマ目)

2コマ目は、視聴覚室に移動して、2年1組と2組の生徒さんを対象にした授業。「弁護士さんに何でも聞いちゃおう」ということで生徒さんから出される質問に答えました。

どうして弁護士になろうと思ったのか、裁判以外の仕事はどういうものがあるのか、弁護士の仕事のやりがいは?等の定番の質問だけではなく、収入の話、少年法改正の話、死刑制度についてどう考えるか等、しっかり話すとそれなりの時間が必要な質問も出ました。

また、投票先を選ぶときの方法や考え方、よくわからないのに投票するのは無責任ではないかなど、選挙に関わるかなり突っ込んだ質問もありました。

中身がしっかりあって、難しすぎなくて、かつ時間内に収まるという3つの条件をすべて満たす回答をするのはかなり大変でしたが、頭をフル回転させながらなんとか乗り切りました。

生徒さんたちの感想

生徒さんたちの感想が届きました。その一部をご紹介します。

わかりやすかった
・身近な例を出しながら説明していただき分かりやすかった。
・身近な話題で分かりやすかったです!
・身近なルールについてわかりやすく学べてよかったです。
・堅苦しいイメージが身近になりました。ありがとうございました!!
・今回の話は学校の校則など身近なことだったので、よく学べた。
・図がたくさん用いられていて、とても分かりやすかったです。
・話がまとまっていてわかりやすく、聞きやすかったです。弁護士の方は堅苦しい方が多いのかと思っていたので、面白い話が聞けてよかったです。
・とても分かりやすかったです。ルールについていろいろ考えさせられました。
・とてもわかりやすくてよかったです!!
・すごくわかりやすく頭に入ってきました。
・とても分かりやすくルールについて知ることができた。

面白かった、よかった
・楽しく理解することができた。
・全部の話がとても興味深かったです。今日はありがとうございました。
・とてもよかったです。ありがとうございました。
・身近な内容でよかった。

ルールを変えること
・いつものルールを守りましょうという講演会かと思っていたら、守るべきものでもあるけど必要があれば変えるものだということだったので、驚きました。面白かったです。
・ルールは守るだけではなく、状況に応じて変えることが大切であるとわかりました。
・ルールは従うだけでなく、おかしい点や不満なところがあれば、まず声を上げて一緒に作っていくものだとわかった。
・ルールは従うしかないものだと考えがちだけれど、私たちが安心してよりよく生きていくためにも、間違っていると思うことには声を上げていくべきなのだということがわかりました
・守るべきルールはきちんと守る、おかしいなと思うルールについては声を上げる。学校も含めて、身近にもそういうルールがあるから、自分も声を上げていきたいです。
・当たり前のように存在するルール。でも、日本にも、世界にも、身近にも、変えていかなければならないルールがたくさんあり、それを変えていくのが私たち自身なのだと深く感じました。見ててとてもわかりやすかったし、実際にルールを変えた例をお話してくださったのですごく身近に感じました。

声を上げること、行動すること
・子どもでも声を上げてルールを変えて欲しいと言ってもいいことがわかった。
・私たち自身が声を上げていくべきだとわかった。
・問題を感じた人が自分で行動を起こさなければならないのだと感じた。
・自分の行動につながるような話が聞けた。特に小学6年生が遊ぶ場所を守った話とか、校則についての話が印象的だった。
・声を上げることが大切だということと、その権利は誰にでもあるのだということがわかりました。
・校則や、それ以外のルールについて、私たちも意見を言ってよいことが知れてよかった。ルールについて自分なりにさらに考えてみたい。わかりやすかった。
・誰かの行動でルールが改善される国でよかったと思った。
・何も動かないで他者の行動を待っているだけの人よりも、うるさがられても権利を主張する人の方がいいと思いました。
・弁護士さんも人や世の中をよくしようとしているんだと思いました。
・小学6年生がすごい!
・大抵の小学生ならあきらめてしまうことでも、議会にまで訴えて変えることができたのはすごい。
・学校を変えたい!
・私たちに直接関係のある校則について話していただいたおかげで身近に感じることができた。ブラック校則に関し、「校則だから仕方ない」と言う教師にこの講演を聞いて考えてもらいたいと思った。

ルールについて考えた
・ルールの大切さをより深く感じられた。
・ルールの在り方をとても考えさせられる貴重な時間になりました。本当にありがとうございました。
・学校のルールや、日本、世界のルールの在り方について、よく学べました。お話を聞いて、もっと知りたいと関心を持つことができました。
・私たちの生活の中にもいろいろなルールがあり、それに関わって様々な活動がされていることが分かった。
・身近なルールについて詳しく解説してくださったので、考えさせられる内容だった。
・ルールについての理解が深まった。また聞きたい。
・ルールについてより深く知ることができたと思います。いろいろな考え方ができるんだなと思いました。
・普段考えないことを考えることができてよかったです。

いろいろ聞けた
・いま世界で起きていることについて話を聞けてよかった。
・ルールについての話から、終末時計の話につながるとは思っていませんでした。知らない話もたくさんあって、面白かったです。
・現在の世界や日本の問題について改めて認識できたよい機会だった。
・最近のニュースも入っていてわかりやすかった。国家試験を受けてみたい。

「何でも聞いちゃおう」(2コマ目)の感想
・弁護士さんは、簡単には答えられないであろう質問にも、わかりやすく、ポイントを絞って教えてくれてうれしかった。ありがとうございました。
・一つ一つがためになる大切なお話だと思った。
・普段聞けない気になってきたことが、聞けて、ためになったし、自分からもっと調べてみたいと思うことができました。
・今まで気にはなっていたけど、知る機会がなくてわからなかったことが、いっきにきけた感じがして、話しを飽きずに聞くことができました。貴重な話を聴けて良かった。
・田中弁護士のお話を聞いていたら、さらに気になることが出てきて、いろんなことに興味が湧いてきた。
・弁護士さんの話を聞いて、私は全然知らないことが多いということがわかった。
・自ら情報を得る姿勢をもって判断していきたいと思った。
・法律についても選挙についても一方向だけの意見で簡単に決められるものではない。自分の意見を持ちつつ、ほかのいろんな角度からのものを考えてみるのは大切なのではないかと思った。
・弁護士さんは大変だけど国のさまざまなことに関わる大切な仕事だと思った。選挙に行くか行かないかの議論では、行かないなどの消極的な行動も、何らかの形で政治に影響を与えていることを知れた。
・弁護士=遠い存在、とても固い存在、そう思っていた印象を変えることができました。また全員が一人一人しっかりと法律を理解することがとても大切で、選挙についても、一人一人が責任をもって行うべきことだと実感しました。
・弁護士はすごい職業だけど、あまり好かれるイメージは私の中ではなかった。でもなにか弁護士に頼らなければならないときには、田中さんのような良い弁護士さんにお願いしようと思った。
・弁護士さんから話を聞いて、新しい知識を得て、価値観が少し変わったような気がします。選挙についての視点も参考にさせてもらって考えていきます。
・小中でもっと政治のことを勉強して、国を少しでも良くできる人に成長してくるべきだったと思った。弁護士さんから話を聴けて、本当に楽しかった。
・弁護士さんの話を聞いて、法律も選挙も身近なことに感じられた。もっと知識をつけて、選挙に行こうと思った。

オファーをお待ちしています

これまでいろいろな形で縁がつながり、いくつかの高校で主権者教育の特別授業をさせていただきました。カリキュラムの調整が大変ななかで、お話する機会をいただけることは、ほんとにありがたいことだと感じています。

引き続き、チャンスがあれば積極的に取り組んでいきたいと思います。
主権者教育をどうしようかと悩んでいる先生がいらっしゃいましたら、お気軽にお問い合わせください。