つれづれ語り(家族って何だろう)


『上越よみうり』に連載中のコラム、「田中弁護士のつれづれ語り」。

2019年2月6日付に掲載された第52回は、「家族って何だろう」です。

世の中の価値観が変わっていくなかで、「家族」に関わる法律も大きく変わろうとしています。この機会に改めて「家族って何だろう」と考えてみるのも、おもしろいことではないかと思います。

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家族って何だろう

先日,小学校で,助産師の穂苅貞枝さんから,「かけがえのない命」とのテーマで受精から妊娠,出産についてのお話を親子で一緒にお聞きする機会がありました。「たくさんの奇蹟が重なり合って君たちはこの世界に生まれてきたのよ。」とのお話に,子どもたちは真剣に聞き入っている様子でした。この翌日ころから,息子の学年では性教育の授業が始まり,「こんなことを習ったよ」と報告がありました(先生から「おうちの人と話してね」との宿題が出たようです)。最近少しずつ男らしいからだつきになってきた長男。思春期の恥じらいと子どもらしい無邪気さが同居する繊細な年頃になってきたのを感じます。

そんな長男とは打って変わって,保育園児の次男は,まだまだお下品ネタでゲラゲラと笑い転げるお年頃。男女の違いをたずねても,「身体の一部が違う」くらいの認識しかありません。少し前にも,「ボク,大きくなったら○○くんと結婚したい!」と元気よく宣言していました。

そんな次男に長男は,「男同士は結婚できないんだよ。日本ではね。アメリカとかならできるけど。」と丁寧に説明しており,思わず「おおっ,さすが現代っ子!」と関心してしまいました。最近では女の子に人気のアニメ「プリキュア」でも男の子のプリキュアが登場し,「男の子だってお姫さまになれる!」という台詞がでてきて話題になりました。LGBTに対する理解や関心は,ここ数年の間に大きく進んでおり,それらの影響を受けて育った子どもたちは,私たち親世代とはまったく違った感覚をもって生きていくのだろうと感じます。

法律の世界でも,現在,家族制度についてさまざまな変更が検討されています。

2015年に東京の渋谷区や世田谷区などで始まった「パートナーシップ制度」(同姓のカップルを結婚に相当する関係と公的に認証する制度)は,導入する自治体が少しずつ広がりをみせ,先日はついに茨城県が全国の都道府県で初めて導入する方向で調整を進めていることが報道されました。

先日私は,さいたま市(大宮)で開催された関東弁護士会連合会などが主催する相続法改正等の研修会に参加してきたのですが,そこで法制審議会(法相の諮問機関)での議論に詳しい先生方から,今国会で特別養子縁組制度についての法改正が一段落つくと,次は,親子関係,同姓婚についても順次検討が進められる予定であると伺いました。そうした中,これからの法改正を考える上では,そもそも「家族って何だろう」という根源的な問いにあらためて向き合うことが不可欠になってくるといいます。

社会の中で「家族」はその他の人間関係とは違った特別な扱いを受けており,そのことを私たちは当たり前のこととして受けとめていますが,「なんで?」とチコちゃんに聞かれたとき,みなさんはどのように答えるでしょうか。家族を保護する理由,家族として認められる条件をつきつめて考えていくと,「そのカップルの間に赤ちゃんが産まれるかどうか」は無関係であることに気づきます。子どもの誕生はひとつの「奇蹟」であり,それは祝福されるべきことですが,それを「家族」の条件とするのはさまざまな人々にとって酷に過ぎるのは言わずもがなです。

では,家族と家族でないものとの違いっていったいなんだろう?

そう聞かれると,男女の違いについての次男の認識の浅さをまったく笑えない自分に気づくのでした。