民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正点 その2(共有関係1)


前回のブログ(その1)では、民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正案のうち、「相隣関係」に関する3つの改正点についてまとめました。
第2弾の今回は、「共有」に関わる民法の改正点についてまとめます。

なお、改正案及び関連する新法案は、3月5日に閣議決定されました。政府は、今国会での成立を目指しています。

所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議(第7回)配布資料

1 共有者の他の共有者に対する義務を明確化

(1)現行の規定とその問題点

現行法上,共有物を使用している共有者が、他の共有者に対してどのような義務を負うかについては、具体的な規定がなく、これが共有物の円滑な使用の妨げになっているという指摘がありました。

(2)改正案の内容

そこで,共有物を使用する者と他の共有者の関係について,次のような規律を設けました。

  • 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。
  • 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。

2 共有者全員の同意が必要となる場面を整理

(1)現行の規定とその問題点

民法第251条と252条は,共有者間の利害等を調整しながら,共有物の有効な利用・管理を実現するために,共有物を「変更」する場合には共有者全員の同意が必要、「保存行為」は各共有者が単独で可能、その他の「管理に関する事項」は持分価格の過半数で決めると規定しています。

この規定によると、例えば、「A,B及びCが各3分の1の持分で土地(更地)を共有している場
合に,Aのみが当該土地を駐車場として利用し,Aは,B及びCに対して利用料を支払う」という定めは「管理に関する事項」となり、A、B、Cのうち2人が賛成すればいいということになります。

しかし、実際の社会では、「変更」と「管理」の区別が難しいことなどから、「念のために」と全員の同意を取らざるを得ない場面が多くあり、土地の利活用の妨げとなっていました。
また、共有者が所在不明等の場合には、同意を得ることが困難であるという問題もありました。

(2)改正案の内容

そこで、改正案では、共有者全員の同意が必要な場面を整理し、要件を明確にしました。

  • 共有物の変更行為
    【原則】 共有物の変更=全員の同意が必要。
    【例外】
    ① 形状・効用の著しい変更を伴わないもの(※1)→持分価格の過半数の同意でよい。
    ② 所在不明等共有者がいる場合→裁判による(公告による簡易な手続※2)
  • 共有物の管理
    【原則】持分価格の過半数の同意でよい。
    【例外】
    ① 意向を明らかにしない共有者がいる場合→裁判による(公告による簡易な手続※3)
    ② 所在不明等共有者がいる場合→裁判による(公告による簡易な手続※4)
    【留意事項】
    共有物を使用中の共有者がいる場合も、基本的には同じ(必ずしもその承諾は不要)。
    ただし、使用中の共有者に「特別の影響」がある場合には、その承諾が必要。
  • 共有物の保存行為
    各共有者が単独で可能。
  • 使用収益権の期間
    上記規定に基づき設定できる使用収益権の期間の上限は、次のとおり。
    ア  樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 10年
    イ  前号の賃借権等以外の土地の賃借権等 5年
    ウ  建物の賃借権等 3年
    エ  動産の賃借権等 6箇月

3 共有物の管理者に関する規定の新設

(1)現行の規定とその問題点

現行民法でも、共有物の管理者を選任することができます。
しかし、共有者全員の同意が必要なのか、それとも持分価格の過半数でよいのか、管理者の権限や義務はどうなのかについては、具体的なルールはなく、はっきりしていません。

共有者が多数だったり、共有者間の関係が希薄な場合などに、共有物の円滑な管理を図るために、管理者を決めておき、その管理者に管理を委ねることができるよう、ルールを明確しておく必要性があると指摘されていました。

(2)改正案の内容

そこで、次のようなルールを設けることが提案されています。

  • 共有者が共有物の管理者を選任し、解任するときは、前記「共有物の管理」のルールに従う。
  • 管理者は、共有物の管理に関する行為は、単独でできる。ただし、共有者が決定した管理事項には従わなければいけない。これに反した管理者の行為は無効(ただし善意の第三者には対抗できない)。
  • 管理者は、共有物の変更行為をするときは、共有者全員の同意が必要。ただし、形状・効用に著しい変更を伴わないものを除く。また、所在不明等共有者がいるときは、裁判(※2の手続)による。

長くなりましたので、今回はここまでに。
共有物の分割、所在不明等共有者の持分の取得・譲渡などについては、次回その3で整理します。


※1 当初は「改良を目的とする行為で、かつ、著しく多額の費用を要しないもの」として、通常の修繕やリフォーム(リノベーションまではいかない程度のもの)を想定していたようです。しかし、目的や金額ではく、「他の共有者に与える影響の大きさの程度によって決めるべきだ」との意見から、このような表現に落ち着いたとのこと。なるほどと思う反面、要件としては分かりにくくなってしまったように思います。

※2 裁判の申立て→公告(公告期間は1ヶ月以上)→期間内に所在不明者等共有者から異議の届出なし→「所在不明等共有者を除く全員の共有者の同意を得れば変更できる」という決定(非訟事件)

※3 裁判の申立て→公告(公告期間は1ヶ月以上)→期間内に意向不明共有者が賛否を明らかにしない→「意向不明共有者を除く全員の持分価格の過半数で決めることができる」という決定(非訟事件)

※4 裁判の申立て→公告(公告期間は1ヶ月以上)→期間内に所在不明者等共有者から異議の届出なし→「所在不明等共有者を除く全員の持分価格の過半数で決めることができる」という決定(非訟事件)