地方自治と憲法(上越9条の会での講演)


3回目

3月30日(土)、上越9条の会の例会で、講演をしてきました。上越9条の会では、2016年7月に『憲法カフェから見えてきたこと』というテーマで、また2021年4月には『新型コロナパンデミックと憲法』というテーマで講演の機会をいただいており、今回が3回目ということになります。

上越9条の会からのご依頼は、いつもありきたりでない内容なので使いまわしが効かず、ゼロから準備をしなければなりません笑。ただ、内容もタイミングもドンピシャで、私自身も勉強しなければと感じつつなかなか手が回らないテーマを指定していただけるので、ある種の強制力を利用しながら学べるよい機会となっています。

今回も、以前読んだ本を引っ張り出してきたり、新しく本を買ったりして、学びながら準備を進めました。いつものパターンで深みにはまり、迷宮に入りかけたのですが、講演の前日にようやく割り切ることができ、何とか準備を間に合わせることができました。

講演の概要

当日お話したのは、以下のような内容です。

全体の構成

日本国憲法が保障する地方自治

「地方自治の本旨」は、住民自治と団体自治の2つの要素からなるということについて、概念図を示しながら説明。

団体自治(権力分立の一種)

地方自治の独立性を保障するのが団体自治。

ただ、旧地方自治法の機関委任事務では、勧告→職務命令→代執行という流れで国が強制力を行使することができた。1999年の地方自治法改正で機関委任事務はなくなったが、その一部が自治事務や法定受託事務に名前を変えて残された。法定受託事務については、一定の要件をみたす場合に、勧告→指示→代執行という流れで国が強制力を行使することができる。

沖縄の新基地建設を巡っては、まさにこのような形で強制力が行使されている。しかも、国民が利用することが予定されているはずの行政不服審査請求の制度を、国の機関である防衛省沖縄防衛局が利用するという脱法的な行為すら行われている。裁判では、代執行の要件をみたしているかどうかについて、まともな検討がなされずに判決が出されている。

↓こちらは、沖縄の加藤裕弁護士が作成した一覧表の一部。内容が理解できると感動を覚えるほど、ポイントがコンパクトにまとめられている。

一般の方がいきなり見ても理解するのが難しいと思われるため、裁判の経過をいくつかの関係図にまとめたものも使いながら、概略を説明。

自治事務についても、国に一般的な指示権を認めることなどを内容とする地方地自法改正案が、審議されようとしている。地方自治の独立性を決定的に損なうものといえる。

住民自治(民主主義の学校)

住民の意思に基づく自治を保障するのが住民自治。

杉並区では、住民が予算案の作成に部分的に参加できる「参加型予算」の仕組みが作られ、実施がはじまっている。

また、台湾では、デジタル技術を駆使して民意を反映させるための制度が実施されている。

充実した質疑

講演時間と同じくらい、質疑の時間が確保されていました。「質問があまり出なかったらどうしよう」などと思っていたのですが、司会の方が上手に進行して下さったこともあり、時間が足りなくなるくらいたくさんの質問や意見が出されました。

それぞれが実践していらっしゃることに基づくご質問も多く、経験や問題意識に触れることで私自身もとても勉強になりました。個別の問題について短期間の取り組みをしていくことと同時に、民主主義を自分たちのものにしていくための中長期の取り組みをしていくことが重要ではないかということを共有できたのもよかったと思います。