自衛隊が進める戦争準備 (敵基地攻撃能力(反撃能力)保有と防衛費大幅増の問題点 その3の1)


これまで、敵基地攻撃能力(反撃能力)保有と防衛費大幅増の問題点について、2回(その1その2)にわたって書いてきました。今回は、その続き(3回目)という位置づけです。少し長いので、数回に分けてアップします。

1 「大規模な被害が生ずる可能性も否定できない」

浜田防衛大臣は、2023年2月6日の衆議院予算委員会で以下のとおり答弁し、集団的自衛権の行使として「敵基地攻撃」を行った場合に、相手国の反撃(武力攻撃)によって日本に大規模な被害が生じる可能性があることを認めました。

「我が国が限定的な集団的自衛権を行使した後、事態の推移によっては、存立危機武力攻撃を行う他国から、我が国に対する武力攻撃が発生し、我が国に被害を及ぼす場合もあり得ると考えております。」

「具体的にどのような被害が生じるかについては、攻撃の規模の大小、期間の長短や攻撃が行われる地域、攻撃の対応等も様々であることから一概にお答えすることは困難であります。その上で、我が国に対する武力攻撃が発生した場合、自衛隊としてはその被害を極限すべく全力で対処することになりますが、あくまで一般論ということで申し上げれば、大規模な被害が生じる可能性も完全に否定できるものではないというふうに考えております。」

政府は、日本が攻撃を受けていなくても、集団的自衛権の行使として「敵基地攻撃」を行うことがありうるとしています。日本が「敵基地攻撃」を行えば、攻撃を受けた相手国は日本を攻撃(反撃)することになります。その攻撃(反撃)によって「大規模な被害が生じる」可能性があることは、当然といえば当然で、防衛大臣も認めざるを得ませんでした。

浜田防衛大臣のこの答弁は、あくまでも「一般論」であり、「可能性も否定できない」という消極的な表現が用いられていますが、自衛隊は、現実に日本が武力攻撃を受けることを想定して、それでも戦闘が継続できるように様々な対策を進めています。

2 核兵器、生物兵器、化学兵器による攻撃への備え

対策の1つめは、自衛隊施設の強靱化です。

その具体的な内容が、2022年12月23日に防衛省がゼネコン向けに行った説明会で配布された資料(「自衛隊施設の強靭化に向けて」)に記載されています。

  • 主要司令部などの地下化を推進
  • 主要施設のHEMP攻撃対策を推進
  • 主要施設のライフラインの多重化を推進
  • 多層抗たん性向上策として分散パッドの整備等を推進
  • 火薬庫の整備や、民間燃料タンク借り上げにより、必要保管料を確保
  • CBRNe(シーバーン)に対する防護性能の付与として、施設の機能・重要度に応じた構造強化、離隔距離確保等の施設再配備・集約化などを実施

「HEMP攻撃」というのは、高高度の核爆発により電磁パルスを発生させる攻撃です。瞬時に強力な電磁波を発生させることにより、電子機器を誤作動させたり損傷させたりする狙いがあります。

また、「CBRNe(シーバーン)」というのは、化学兵器、生物兵器、核兵器、爆発物などによる攻撃(Chemical Bio Radioactive Nuke)です。「防護性能の付与」の具体的内容としては、「NBC(核・生物・化学)兵器や敵戦闘機による空爆などの攻撃を想定した基準」に適合するように、「排水溝への有害物質の流入を防いだり、密閉性を高めたりする」工事などが想定されています(産経新聞電子版2022年12月18日)。

防衛省配布資料「自衛隊施設の強靭化に向けて」より

強靱化工事の対象となるのは、全国283地区の基地・駐屯地・通信所等にある約2万3000棟の建物。工事費用は、今年度以降の5年間だけで4兆円。最終的に工事が終了するのに10年かかるとされています。

3 多数の戦傷者が生じる事態への備え

対策の2つめは、戦傷医療対処能力の向上です。

『国家防衛戦略』では、「部隊の防護能力の強化、外科医療に不可欠な血液・酸素を含む衛生資器材の確保、南西地域の医療拠点の整備も行う」とされています。

これをうけて、『防衛力整備計画』では、自衛隊那覇病院の機能強化や、血液製剤及び医療用酸素を確保するための措置を講ずるとしています。

「南西地域における衛生機能の強化に当たっては、自衛隊那覇病院の機能及び抗たん性を拡充することが有効と考えられることから、同病院の病床の増加、診療科の増設、地下化等の機能強化を図る。」

「戦傷医療における死亡の多くは爆傷、銃創等による失血死であり、これを防ぐためには輸血に使用する血液製剤の確保が極めて重要であることから、自衛隊において血液製剤を自律的に確保・備蓄する態勢の構築について検討する。また、血液製剤と並び戦傷医療において重要な医療用酸素の確保のため、酸素濃縮装置等についても整備を行う。」

自衛隊は、現在、血液製剤を日本赤十字社から調達していますが、それに加えて、採血から製造、長期保存までをすべて自前で行えるようにするため、今年度中に自衛隊中央病院で血液製剤の試験製造を始める予定であると報じられています(時事通信2022年9月15日付読売新聞オンライン2023年3月9日付)。

4 大型弾薬庫の建設

対策の3つめは、大型弾薬庫の建設です。

長期の戦闘には大量の弾薬が必要となります。自衛隊の弾薬庫は、現在約1400棟ありますが、浜田防衛大臣は、今後10年間で新たに130棟を建設する予定であると答弁しました(2023年3月2日参議院予算委員会)。「敵基地攻撃」に用いる長射程のスタンド・オフ・ミサイル等の大型の弾薬を大量に保管するために、大型弾薬庫を新設することが計画されているのです。

NHK「青森NEWS WEB」2023年2月15日から

今年度予算では、陸上自衛隊大分分屯地(大分市)と海上自衛隊大湊地方総監部(青森県むつ市)で新設工事を行うための費用、さらには陸上自衛隊祝園分屯地(京都府精華町)と海上自衛隊呉地方総監部(広島県呉市)で調査を行うための費用が計上されています。

しんぶん赤旗2023年3月3日付から