主権者教育の特別授業@新潟県立高田高校2024


母校での授業

3年続けての実施

3月18日(月)、母校の高田高校にお邪魔して、2年生向けに、主権者教育の特別授業をしてきました。

高田高校では、昨年、一昨年も同様に、当時の2年生向けに主権者教育の授業をさせていただいており、今回で3年続けての実施となりました。

開始前に校長室で

開始前、校長室にご案内いただいて、ご挨拶。校長先生が、「前回の授業のブログを見たのですが」とお話されたので、何かダメ出しをされるかもと思ってしまったのですが、その後に続いた言葉は「すごく面白そうな授業ですね。」だったので、一安心。

「単に投票を体験するだけの授業ではなくて、生徒同士で議論したり、いろいろと考えさせる内容になっていて、私も楽しみにしています。あいにく仕事の都合で一部しか見られないのですが。」とお話下さり、緊張がほぐれました。校長室に入ると、いくつになっても緊張してしまいますね笑。

上越市長選挙(仮)の模擬投票

1コマ目は、地元上越市の市長選挙という設定で模擬投票。2回投票してもらうことにし、1回目は個人での投票、2回目はグループでの投票にしました。

候補者の演説①→個人での投票

候補者は、「高齢者に優しい町に!」を掲げる女性候補、「子育てがしやすい町に!」を掲げる男性候補、「若い世代が夢を実現できる町に!」を掲げる男性候補の3人。学校の先生方が候補者になりきって力強く演説してくれました。

投票結果は、以下のとおりとなりました。

候補者の演説②→グループで相談→グループでの投票

2度目の演説は、他の候補の政策に対して批判する内容です。その演説を踏まえてグループで投票先について話し合いをしてもらいました。どのグループも議論が盛り上がっていました。

2度目の投票結果は、以下のとおりです。

インタビュー

それぞれの投票の後に、どういう理由で候補者を決めたのか、どんな意見が出たかなどについて、インタビューをしました。自分で手を挙げて答えてくれる生徒さんもいて、堂々とした発言に感心しました。

「今いる市民のことを大切にするのか、それとも将来の世代のことを重視するのかという問題だと捉えた。どちらも大切だけど今のことだけを考えるのではなく、先々のことを念頭に置いたうえで問題解決にあたった方がよいのではないかと思った。」

「確かに実現可能性という点では疑問に思うところもあるのですが、上越に対する深い思い入れ、会社を辞めてまで上越を元気にしたいという情熱が素晴らしいと思って、上越をよくするにはそういう若い世代の情熱が必要なんじゃないかと思いました。」

ミニ講演

休憩をはさんだ後の講演では、概ね以下のようなことをお話しました。

三候補の政策と選挙結果について

何か決まった正解がある訳ではないので、こっちが正しい、こっちは間違っているというような議論の仕方ではなかなかかみ合わず、理解が進まない。3人の候補者が掲げる政策は、できることならやって欲しい政策ばかり。特定の層のことだけを考えた政策でもない。結局のところ、限られた人的・物的資源をどこに優先的に投入していったらよいかという話。

政策の当否を判断する際には、その問題に取り組むべき必要性・緊急性の程度、その政策が問題解決につながるものと言えるかどうか、その政策は実現可能なものかどうか、政策を実施することで別の弊害がでてこないかといった4つの指標で検討することが有用。その前提として、まずは現状を詳しく把握・分析する。

では上越市の現状はどのようになっているか。人口減少問題を例に、地域ごとの違い、自然動態と社会動態、世代別の移動状況など、いくつかの角度から状況を確認。現状を詳しく把握・分析すると、問題が起こっている原因や構造的要因が見えてくる。そうすることで、どのように対応すべきかということも議論しやすくなる。現状認識を共通の土台にして、それぞれの見解をぶつけ合うことでよりよい解決策を探っていく姿勢が大切。

選挙の意義と限界

選挙は代表者を選ぶもの。選出された代表者は話し合いに基づいて、税金の使い道を決めたり、法律や条例などのルールを定めたりする。どちらも私たちの生活に直接かかわってくることであり、「話し合って決める人」を選ぶという点で、選挙はとても重要。

ただ、多数決により選出するものであることから、限界や弊害もある。1つはマジョリティの声が優先されてしまいがちになること(マイノリティの声が届きにくいこと)、もう1つはいろいろな人から投票してもらえるように総花的で玉虫色の公約になりがちで、政策論争が深まりにくいこと。

デジタル技術の活用

そういう限界を、デジタル技術を活用して乗り越えられないか。

台湾では公共政策のアイデアをプレゼンする大会がある。解決したい地域の課題を集めるところからスタートし、参加チームは課題の解決策を政府のオープンデータに基づいて検討し、提案する。民間投票で上位に入った20チームは、台湾総統府で直接プレゼンすることができ、上位5つに入ったアイデアは、予算付けされて1年以内に国の政策として実行することが約束されている。民間投票は少数意見を取り込みやすいように、単純多数決ではなく、クアドラティックボーティングという特殊な投票方法が用いられている。

また、誰でも気軽に行政に対する提案をオンラインで行うことができるプラットフォームも設置されている。60日以内に5000人以上の賛同を集めた提案は、行政の関連部局が検討して2カ月以内に書面で回答しなければならないとされている。優れた政策が実現されやすくなる利点がある。

終わりに

アメリカの科学雑誌が毎年公表している「終末時計」。今年は「人類滅亡まで残り90秒」とされた。核兵器の拡散、気候危機の深刻化などがその要因。

よく社会のことや世界のことに関心を持ちましょうなどと言われたりするが、こちらが関心を持っているかどうかにかかわらず、地球で暮らしている以上、無関係ではいられない。温暖化(気候危機)にしても核兵器の拡散にしても、自分だけがその影響から逃れるということは、性質上できない。どうせ無関係ではいられないのであれば、関心をもって、積極的に関わった方がいいと思う。例え話で言うと、沈みゆく船に乗っている人が「自分は船が沈むかどうかについては関心がない」と言っていたらおかしい。

また、問題の規模や深刻度が大きいので、他人任せにしていてどうにかなる問題ではない。みんなで知恵を出し合って、アイデアを出し合って、解決に向けた取り組みをしていかないといけない。そのために求められるのが、「異なる意見の人と話して、相互理解を深めたり、新しい考えに辿りついたりする力」=対話力。

今日の授業を1つのきっかけにして、自分とは違う意見の人と対話して、いろいろな発見をしてもらえたらうれしい。

生徒さん達の感想

いろいろ聞けた

  • 投票や選挙制度が中心の企画と思っていましたが、想像以上に色々なお話を聞くことができ、有意義な時間を過ごさせていただきました。模擬投票では、3人の候補者の公約や経歴などを自分なりに比較して選びましたが、かなり悩んだので、実際の選挙ではさらに選ぶのが難しいのだろうなと思いました。なので、今日この形で大変でき、とても良かったなと思います。初めて投票するのがいつになるのか分かりませんが、よく考えて参加したいと今日改めて思いました。ありがとうございました。
  • テーマから、難しい話だと思い込んでいましたが、私たちがこれからいかすことができるような対話のポイントまで知ることができてよかったです。
  • とても価値のある時間だったと思います。
  • 今回はいつもの講演会と違って、班で話し合ったり、演説を聞いたりする機会があって、楽しく、より頭に入りやすい講演だと思いました。今回学んだり考えたりしたことを、実際に選挙権を得たときに活用していきたいと思いました。
  • 座学だけでなく、演説やグループワークなどの企画があってすごく楽しかったです。ありがとうございました。
  • 模擬投票をすることで、実際の選挙を想定しながら、分かりやすく政治を学ぶことができた。グループで話し合う際には、上越市の現状を理解し、緊急性や優先順位を考えながら、3人の候補者を比較し、全員が納得したうえで一人の候補者を選ぶことができてよかった。今後も、実現可能性や弊害について考慮しつつ、上越市の未来や国の今後と向き合っていきたい。また、自分の意見とは違う班員の意見が聞けたのは面白かった。講演では、上越市の現状をデータとともに学んだり、今後必要な力について知れたりしてよかった。
  • 自分が住む市の課題について考えることができたし、有権者の責任なども感じることができて良かった。これから生きていくうえで重要な、考えを深めていくもととなる要素を多く蓄えることができた。

選挙の実感がわいた

  • 今までの授業でも習ってきた内容から、さらに一段踏み込んだ役立ちそうな内容が学べて、政治や選挙について詳しくなれたように感じた。
  • 分かりやすくてとても勉強になりました。今まで選挙ができる年齢なんだという自覚がなかったけど、今日具体的に選挙について教えてもらえ、やっと自覚が芽生えました。
  • 選挙という、来年自分に関わってくる問題について詳しく知ることができた。人生でこれから確実に役立つことだったので、知識としてとても興味深い講演だと思った。
  • 若い世代の投票率が低いと言われるし、自分自身も政治への関心が低い方だったが、今回の講演で興味を持ち、政治への関心がわいてきた。
  • 私の位置ではマイクの音が届きにくかったこともあり、お話が聞き取れなかった部分もあったのですが、スライドの内容がとても分かりやすかったので理解することが出来ました。今まで選挙は、「参加した方がいいけれどしていない人が増えているもの」「もうすぐ参加できるようになるもの」という認識しかありませんでしたが、今日の企画を経て、選挙に参加するという行為が現実味を帯びてきました。また、選挙以外にも、1人の国民として政治に参加していく将来について考えるきっかけになりました。
  • 来年には自分も投票できるのだなと思いました。誰に投票するかとなったとき、実現可能性や有効性、緊急性など様々な面から考えるとおっしゃっていたので、18歳になって機会と権利を得られた時には、しっかり向き合って多面的に検討し、貢献したいなと思いました。
  • 模擬選挙を体験したり講演を聞いたりして、もうすぐ有権者になるのだという実感がわきました。どの候補者も良い面とあまり良くない面があり、選ぶのが難しかったです。身近な話だったので、マイクの調子が悪く聞き取りづらかったのが残念です。
  • 3つの政策を比較し1票を投じてみて、自分が投票する権利を持つ日が近いことを実感させられた。目先の利益に気を取られず、長い目で見て将来後悔することがない選択ができるよう、これから自分の住む地域のニュースを見て情報収集に取り組むようにしたい。
  • 模擬投票をしたことで少し選挙について身近になった。来年から投票する側になるのでとても良かったと思う。いろんな人の意見を聞いて、3人の候補者それぞれに良さがある気づいた。弁護士と初めて会って、親近感がわきました。
  • 選挙は私達高校生にとって身近なもので、来年には直接関わるようになります。今回の講座をとおして、間近に近づいていることを改めて感じました。私は選挙にしっかりと参加したいので、今回のような授業で体験することができて良かったです。すごくためになりました。

模擬投票がよかった

  • 演説がリアルでわかりやすくてよかったです。実際に投票するときのような体験ができて、面白かったです。いろいろな人と話して異なる意見を聞こうと思いました。
  • 模擬選挙では、候補者の意見の差が感じられて面白かった。また政策の検討の仕方やこれから必要になる能力などが学べ、18歳になる私たちにとって、とてもためになる講演会だった。
  • 模擬選挙をするのは初めてだったので、体験できてよかった。来年は18歳となり選挙権を手にし、選挙が身近になものになるので、投票先の選び方を参考にしたい。
  • 模擬投票では、様々な政策があり、その中にもメリット・デメリットが必ずある中で、もっとも良いものを考えることはとても難しいと感じました。100%良い政策というものはないなかで、批判すべき点はどこにあるのかを考えることが、地域をよりよくする政策へと導いていくのだと思いました。
  • 模擬選挙はやってみてすごくわかりやすかったし、イメージしやすかったです。
  • 3人の候補者から投票する人を決める活動では、実際の選挙のときに、候補者のどんなところに着目したら良いのかを学ぶことができました。また候補者に対する批判的な声もすごく勉強になりました。ありがとうございました。
  • 体育館のマイクの調子が悪く多少聞き取りにくいところがあったが、全体的には身近に感じられる話が多く、模擬選挙などもあって楽しく参加することができた。

政策の評価の仕方について

  • 投票するときに、まずは現状を把握して、必要性・緊急性、有効性、実現可能性、弊害など、様々な視点から考える必要があることがわかりました。また、これからは異なる意見の人と対話し、相互理解を深め、新しい考えに辿りつく力が必要だということが分かったので、いろいろな人と対話をすることを心がけたいと思いました。
  • 候補者の公約を比べて、検討することは有効な手段だと思った。実際の選挙でも、有効性、実現可能性、弊害などの要素を比較検討して投票したいと思う。
  • 政策を検討する際、必要性・緊急性、有効性など4つの点から考えるとよいというお話は、別の物事を判断するときにも参考になる有益なお話だと感じた。意見が異なる人と対話を通じて相互理解を深め、新たな案を作り出していくという話を受け、今後は互いを尊重していきたいと思った。
  • 投票するときは、現状をよく知り、必要性や有効性、実現可能性、弊害などをよく考えたうえで候補者を選ぶことが重要だと分かった。また、人と対話するときの大切なポイントを知ることができて、とても参考になりました。

グループワークが楽しかった

  • 1時間目の模擬投票は、とても現実味があり、仲間と議論をして楽しかった。自分は一人の個人としての1票にあまり意味を感じていなかったので、この講演を通して1人1人が意見を伝えることの大切さを学ぶことができて良かった。
  • 模擬選挙を体験したことで、候補者をどのような視点で選ぶべきかについて考えが深まった。班の中で意見が異なっており、自分にはなかった考えもでてきて、自分が投票をするときに参考にしようと思った。また、自分の利益だけではなく、未来の社会の姿、他の世代のことも考える政治的な観点での考え方も身につけていきたい。
  • 様々な意見が出てくるので、それぞれの利点や欠点を正しく理解する力をこれから身に付けていかなければならないと感じた。来年から選挙に参加する際は、今日やったことをしっかり活かしたい。
  • 模擬投票をしてみて、候補者の選び方などを学ぶことができたので良かったです。また、他の人と意見交換をしたことで、別の視点にも気づけたので、異なる意見に耳を傾けることが大切だと思いました。配布物に、候補者の目玉政策や経歴、どういう町にしたいかなどをわかりやすくまとめてあったのが助かったので、実際の選挙のときにもこういうものがあったらいいなと思いました。
  • グループで話し合うことで、自分では思い浮かばなかった考え方も見つけることができました。
  • グループワークのときに他の人がどのような基準で候補者を選ぶのかを聞けて、とても面白かったです。マイクの調子が悪くて全部の内容をきちんと聞き取れなかったのが少し残念でした。
  • 他の人と意見を交換することで自分の意見をより深いものにすることができた。来年は選挙権を持つ年になるので、少しでも政治に関心を持つように生活していきたい。
  • 候補者が一人ひとり実際に話すのが分かりやすかったし、講演を聞いて選挙について考えを深められた。

対話について

  • 弁護士はもっと堅い職業だと思っていたけど、今回の講演を聞いてみて、そんなことはなく、割と身近な職業であることを知ることができて面白かった。また、模擬市長選挙で自分の考えをチームで意見交換することができて楽しかったし、自分にはない視点の考えを聞くことができたのも面白かった。
  • グループで話し合いをしたことで、自分が投票したいと思う人が変わった。この経験を通じて、若者の投票率のみを上げようとすることに疑問を感じた。講演の中であった対話のお話ともつながるが、実際の選挙でも、今回の模擬投票のグループワークのように、他の人の意見や価値観を聞くことが大事なのではないかと思った。
  • 課題を解決するために必要なことを学べたので良かったです。学校での探究活動など、課題解決に向けた探求の場で活かしていきたいです。特に、現状の把握・分析によって、課題解決への道筋を見つけることができるということが強く印象に残りました。また、地球全体の問題を解決するためには、1人1人が知恵を出しあって話し合い、解決策を導く対話力が必要なように、問題を解決するための対話力の必要性に改めて気づかされました。授業中や、日常の中での話し合いからスキルを身に付けていけたらいいなと思います。
  • 選挙を自分事として考えるきっかけとなりました。また相手と話す対話力の重要性も知れたので今後の生活に生かしていきたいです。
  • これから必要になってくるのは対話力で、対話するときの注意点やその目的、取り組むときの姿勢、マインドなどを学ぶことができた。このアドバイスを活かして、自分の意見をはっきり言ったり、異なる意見を持つ人とも積極的に意見を交わしていきたいと思う。
  • 模擬投票では、なぜその候補者を選んだのか真剣に考えることができ、これからの役に立ちそうだと思った。対話についても、論破が目的ではないのだと学んだ。
  • これからの時代に求められる対話力は、私も必要になると感じています。対話を通じて相互理解を深めることで、自分のためにも相手のためにもなるんだということを学ぶことができました。

台湾の制度について

  • 模擬投票は、どの候補者もいま一つで選ぶのが難しかったです。グループでの意見を集約することにも難しさを感じました。講演で特に印象に残ったのはデジタル技術の活用についてです。台湾で実際に行われている政策のプレゼン大会では、地域の声や意見だけではなく、具体的な政策まで聞くことができ、またそれを実際に実行するというところがとても良いなと感じました。この制度であれば、多数派の中で埋もれてしまった少数派の声を聞くことができますし、今回のようにいま一つな候補者が当選したとしても、自分の解決したい課題をピンポイントで政策として実行できるからです。
  • 模擬投票でいろいろな意見や考えを出したり、考えたりすることができて楽しかった。また上越市の人口減少について、進学を機に市外・県外へ出て、それ以降帰ってこない人が多いということを知った。台湾では、いろいろな意見を集めるためにインターネットを使ってプレゼン大会が行われていることを知った。日本でも導入したらよいと思う。