日本シミュレーション&ゲーミング学会でのミニ講演(主権者教育)


学会の全国大会で

12月5日と6日の2日間で、「日本シミュレーション&ゲーミング学会」の2020年度秋期全国大会が開催されました。「日本シュミレーション&ゲーミング学会」というのは、「シミュレーションとゲーミング、それらに関連する分野の学際的な手法学協会」で、「日本全国のシミュレーション&ゲーミングの研究者、開発者、実務家、教育者、実践家、社会事業者、学生、そして関連する法人などで構成され」ているようです。

今回の大会のテーマは「シミュレーション&ゲーミングと教育の近未来」。当初は、上越教育大学を会場にして開催する予定だったのが、新型コロナウイルスの影響から完全オンラインでの実施となったとのことでした。

私は、この中の「経済・法教育のためのゲーミング研究部会」が主催したセッションにお邪魔しまして、ミニ講演をさせていただきました。

主権者教育の授業実践の報告

講演と言っても、仰々しいものではなく、内容は授業実践の報告です。昨年11月に新潟県立上越総合技術高校で実施した主権者教育の授業について報告しました。

この授業では、上越市の市長選挙に3人が立候補したという架空の設定で、模擬選挙を行ったのですが、その手法がシミュレーション&ゲーミングにも通じるものがあるということで、今回の全国大会の組織委員長でもある上越教育大学の吉田昌幸先生からお誘いいただきました。吉田先生は、授業の報告ブログを読んで興味を持って下さったようです。

セッション全体で2時間の枠のなかで、40分お時間をいただき、「模擬投票を取り入れた主権者教育の授業実践について」報告しました。1年前の授業だったこともあり、当時使ったパワーポイントとブログの記載を頼りに、記憶を呼び起こしながら報告の準備をしました。ブログを書いていた1年前の自分に感謝ですね笑。

ディスカッションで出された多彩なアイデア

報告後、「経済・法教育のためのゲーミング研究部会」のメンバーである上越教育大学の中平一義先生に主権者教育の観点から、また同じく研究部会のメンバーである札幌市立大学の小林重人先生にシミュレーション&ゲーミングの観点から、それぞれコメントをいただいたうえで、質疑やディスカッションを行いました。

  • 選挙結果によってどう変わっていくのかという部分のシミュレーションを取り入れることによって、自然に選挙後にも目が向き、自分事として捉えやすくなるのではないか。コンピューターシミュレーションであればいくつかのパラメーターをいじることで比較的容易に複数のシナリオを示すことが可能だと思う。
  • 過去の問題解決に目が向きがちだが、未来志向で解決していくという発想が必要ではないか。
  • 世界的には代議制からミニパブリックスを取り入れる方向へとシフトしてきている。直接民主制的要素を取り入れるうえでどのような課題があると考えているか。
  • 例えばSDGsの様に、目標を設定していかにしてそこに到達していくかというバックキャスティング型の発想を取り入れることはできないか。
  • 講演の最後に触れられていた対話の部分だけを取り出してS&Gの実践をしてみるのも面白いのではないか。
  • あらかじめいくつかのキャラクターを作っておき、カードなどでランダムに配点したうえで、そのキャラクターであれば誰に投票するかを考えてもらう手法だとよりS&G的な実践になる。

構成員のみなさんが、それぞれの専門的知見に基づいて、アドバイスをしたりアイデアを提供したりして下さるのですが、バックグラウンドが異なるため、視点や着眼点も多種多様で1つ1つのご意見が大変参考になりました。どれも自分だけで考えていたのでは絶対に出てこない発想で、贅沢な学びの機会をいただけたことに心から感謝しております。

現政権は、学問や学術の価値を軽んじたり、その権威や独立性を損ねたりしようとしていますが、今回学会にお邪魔してアカデミックな空気に触れたことで、学術研究の重要性や価値を再認識しました。