*6月19日付追記・改定
6月19日現在の状況に即して、内容を一部再改定しました。今後も状況により改定する可能性があります。引き続きよろしくお願い致します。
第1 大きな成果と、残された課題
1 法案は廃案に
報道されている通り、検察庁法の改正を含む国家公務員法等改正案は、廃案となりました。
ツイッターに象徴される世論の大きな盛り上がりや、検察官OBの声明など、様々な取り組みが積み重なって得られた大きな成果です。
2 残された課題
しかし、一連の経過の発端ともいえる黒川検事の勤務延長を決めた閣議決定については未だ撤回されていません。検察官にも国家公務員法の勤務延長規定を適用できるという法解釈の変更が維持されたままでは、検察官人事に対して政府が介入する余地が残されてしまいます。
また、政府・与党は、検察官の勤務延長を認める特例部分を削除したうえで、次の国会に再提出する方向であると報じられています。しかし、その方針が確定している訳ではないようですので、新たな法案が閣議決定されるまでは動向を注意深く見守る必要があります。
このため、今後の課題は以下の2つとなります。
- 国家公務員法の定年後勤務延長規定を検察官にも適用できるとした政府による法解釈の変更を撤回させること
- 検察官の定年後・役職定年後勤務延長を認める特例部分を削除した新たな改正法案を作成させること
第2 反対の声続々と
1 元検事総長らの声明
元検事総長の松尾邦弘氏、元東京高検検事長の村山弘義氏、元大阪高検検事長の杉原弘泰氏、元仙台高検検事長の平田胤明氏、元法務省官房長の堀田力氏らロッキード事件の捜査に関わった検察OBを中心とする14人が、法務省に検察庁法改正に反対する意見書を提出し、記者会見を行いました。
こちらに意見書全文が掲載されています。格調高く、検察官としての誇りと気概を感じる意見書です。ぜひご覧ください。
会見はこちらからご覧いただくことができます。
https://www.youtube.com/watch?v=kBP7oHQ2oQo&fbclid=IwAR18vp63NOv0n5W7KJHsN3fPC7dkGzKxA5nGxQ2AtPKGNG9N4hrzh_UmDEA
2 元特捜検事ら38人が意見書提出
東京地検特捜部に在籍したことがある元検事ら38人が、5月18日、連名の意見書を法務省に提出しました。
こちらに全文が掲載されています。
3 現職の裁判官が批判
仙台高等裁判所の岡口基一裁判官が、民放のラジオ番組で検察庁法の改正案について批判したことを、NHKニュースが報じました。
「岡口裁判官は経緯を解説したうえで「検察官が内閣の顔色をうかがいながら仕事をするようになると危惧される。法解釈の変更を口頭の決裁で済ませるなど、まともな法治国家とは言えない」などと批判しました。」
4 弁護士会も続々声明
日弁連は二度にわたって会長声明を出しています。2020年5月10日に行った記者会見動画はこちらからご覧いただくことができます。
全国に52ある単位会のすべてが、この問題に関する会長声明を出しています。各地の声明はこちらのサイトで整理・紹介されています。
5 市議会意見書
広島県庄原市議会が、検察庁法改正案に反対し、政府に撤回を求める意見書案を賛成多数で可決しました。
6 「#検察庁法改正案の強行採決に反対します」ツイート
「#検察庁法改正案に抗議します」、「#検察庁法改正案の強行採決に反対します」、「#週明けの強行採決に反対します」というように、状況にあわせてツイート内容が進化し、トレンドワード入りしたことをスポーツ報知が報じています。
第3 声を広げ、声を届けましょう
1 声を広げつつ、直接声を届ける
これまでは、与党が短時間の審議で法案の採決を強行する方針を明言していたため、国会議員に直接声を届ける取り組みに特別な力を集中する必要がありました。
ここから先は、そのような超短期集中型の取り組みから、ある程度の期間を見越した取り組みにシフトしていくことが必要になります。今後は、「声を広げつつ」、「声を届ける」の両方をバランスよく取り組んでいくべきではないかと思います。
2 声を広げる
(1)SNSの活用
これまで、ツイッター等のSNSを通じて世論が広がってきました。引き続き、これを積極的に活用しましょう。ここから先は、問題についての理解を深めてもらうという要素も重要になります。わかりやすくまとめられた動画や記事に、一言コメントを付けて発信するのが有用ではないかと思います。参考になりそうな動画や記事を以下に貼り付けます。
■5分で分かる!検察庁法改の内容と問題点について【せやろがいおじさん】
■【サンデーモーニング】2020年5月10日放送 黒板解説「検察庁法改正案」解説:青木理
■【サンデーモーニング】2020年5月24日放送 黒板解説「黒川検事長 定年延長問題」解説:青木理
https://www.youtube.com/watch?v=0WzXyXIybjM
■Twitterで拡散!「検察庁法改正案」って何?(テレ東ニュース)
■元検事と考える!検察の特殊性と定年延長問題の本質(▼市川寛×荻上チキ▼2020年5月14日(木)放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」平日22時~))
■「検察と国民の信頼」(NHK『時論公論』2020年5月26日 清永 聡 解説委員)
■「超難解な〈検察庁法改正法案〉の条文を分かりやすく読み解く」(園田寿 甲南大学法科大学院教授・弁護士)
■検察庁法改正法案―まとめで分かった重大な事実―(園田寿 甲南大学法科大学院教授・弁護士)
(2)報道機関への働きかけ
取材などを通じて「事実を調査する能力」、報道によって「事実を広く知らせる能力」のどちらをとっても報道機関の能力は別格です。世論をさらに広げていくうえで、報道機関が果たすべき役割は非常に大きいと言えます。
よい報道があったらSNS等でシェアする。新聞や雑誌であれば、購入・購読する等、頑張りを様々な形で励まし、支えることも大切です。なかでもオススメは、直接報道機関に声を届けることです。よい報道があれば感想と励ましの声を、そうでない場合には批判の声を届けましょう。
元NHK記者の相澤冬樹さんは、自身の著書(『安倍官邸vsNHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由』)で、当初は全国放送で森友問題を取り上げようとしなかったNHKが「150件ほどの苦情があった」ことで、「徹底報道せよ」との方針に転換したことを紹介しています。わずか150件の苦情で方針が切り替わったのは、届けられる1つの声の背後に数千人の同様の声があると認識されているからでしょう。報道機関に声を届けることには、私たちが思っている以上に効果があります。
最近はどの番組でも専用のホームページがあり、そこからメールを送ることができるようになっています。各メディアの連絡先は「りぼん・ぷろじぇくと2016」が一覧にまとめてくれています。
3 声を届ける
(1)与党議員に対して
与党の国会議員に声を届けることも、引き続き重要です。
批判的な世論の盛り上がりを受けて、自民党内でも、岸田政務調査会長、石破元幹事長、村上誠一郎衆議院議員、船田衆議院議員、泉田衆議院議員、山本有二衆議院議員らが、強引な審議の進め方や法案の内容について、疑問・反対の声を上げています。また、中谷元防衛大臣は、「検察庁の権威というものが非常に地に落ちています。私は法務省のしかるべき人とか黒川氏は責任を取って辞任するべきだと思いますね」と述べています。
声を届ける内容は、政府に対して「検察官にも国家公務員法の規定を適用できる」との内容に法解釈を変更した閣議決定を撤回するよう要求して欲しいということと、検察庁法改正案の勤務延長の特例措置部分を削除した新たな国家公務員法等改正法を成立させて欲しいということです。
声を届ける方法は、メール、電話、ファックス、いずれでもかまいません。可能な方法で連絡しましょう。
初めて議員さん&秘書さんに電話してみた体験レポートがあったので、リンクを張っておきます。架ける前に読むとイメージしやすいですね。
なお、国会議員の連絡先は、こちらのサイト「国会議員いちらんリスト」で確認できます。
例えば、内閣委員会の議員を探したい場合には、まず「内閣委員会・総務委員会」のところをクリックし、次に「内閣委員会40名」の下にある「全て」の部分をクリックします。
そうすると、このような一覧表がでてきます。見てわかる通り、各議員の所属政党(会派)、所属委員会、当選回数、議員会館の電話・ファックス番号、地元事務所の電話・ファックス番号、が記載されているほか、議員のホームページやSNSにもワンクリックで行けるようになっています。メールアドレスがわかる議員についてはメールアドレスも書かれていますし、議員のホームページにメールフォームがある場合にはメールフォームにもワンクリックでいけます。
(2)官邸に対して
首相官邸に対しては、検察官にも国公法の定年後勤務延長規定を適用できるとした法解釈の変更を撤回することと、検察庁法改正案中の勤務延長の特例措置部分を削除した新たな国家公務員法等の改正法案を作ることを求めましょう。
こちらのメールフォームから意見を送ることができます。