いじめ予防授業@直江津中学校


事前の準備

6月22日(木)、直江津中学校の全校生徒向けに、いじめ予防授業をしてきました。直江津中学校には、ここ2年ほど2年生向けの薬害教育授業でおじゃましており、そうしたご縁もあって、直接お声がけいただいた形です。

これまで、妙高市内の小中学校でいじめ予防授業をしてきましたが、上越市の学校では今回が初めてです。最後に授業をしたのが2年くらい前で、そのときに使ったパワーポイントを見返してみたところ、スライドが見づらかったり、説明が舌足らずだったりするところが目について、手直しするのに意外と時間がかかりました。

また、他の学校でやったのと同様に、事前準備として、真下真理子弁護士著『弁護士秘伝!教師もできるいじめ予防授業』(教育開発研究所)で紹介されている事例をもとに作ったワークシートを送りました。当日、授業前に聞いたところ、なんと各クラスの道徳の授業で取り上げて検討して下さったようです。

授業でお話したこと

これまでの授業と同じように、問題を出して挙手で回答してもらいながら話を進めました。テーマは、以下の3つです。

  1. いじめとは何か
  2. いじめはどうして許されないか
  3. いじめをなくすためにどのようなことができるか

体育館で、全校生徒を対象にした授業だったので、集中して聞いてもらうのは難しいのではないかと思っていたのですが、みなさんしっかり手を挙げて回答してくれ、個別に質問したときにも自分の考えをはきはき答えてくれていました。特に、中野富士見中学いじめ自殺事件の経緯についてお話した際には、全員の視線がこちらに集まって、真剣に聞いてくれているのをはっきりと感じました。

最後に、「自分と自分以外の人との関係をどう捉えたらよいか」、「お互いを尊重する」というのはどういうことかという点について、概ね以下のようなことをお話しました。

人はそれぞれに違っていて、様々な個性を持っている。人類の歴史をさかのぼっても自分と同じ人はいない。後にも先にも自分という人間は一人だけ。そこにかけがえのない価値がある。何か得意なことがあるからとか、何かの役に立っているからとか、そういうことがあってもなくても、それぞれにかけがえのない価値があるというのが、憲法の考え方。

「尊重する」というのは、自分とは違う他者をありのままで、違うままで受け入れるということ。違うからちょっと合わないなぁとか好きになれないなぁという人もいる。尊重するというのは、それでも無理に仲良くしたり同調したりするということではない。好きになれないし、仲良くしたりもできなくても、不当な扱いを受けていたらおかしいと声をあげる、それが尊重するということ。

それは口で言うほど簡単なことではない。好きな人が不当な扱いを受けていたら、「かわいそう」「助けたい」と自然に思う(シンパシー)。あまり好きになれない人が同じ扱いを受けていたときにおかしいと気付いて声をあげられるか。そのためには、想像力(エンパシー)、対話力、寛容さや忍耐力など様々な力が必要になる。大人になると自動的にそういう力が身に着くわけではない。だから大人の世界にもいじめはある。

同じ中学校の中でもいろいろな人がいるけれども、成長するにつれて自分の世界が広がっていくと、これまで以上に全く違う価値観・考え方・生き方の人たちと出会うことになる。その人たちとお互いに尊重し合い、対話を通じて理解を深められるように、いろいろな力を身に付けていってほしい。

授業後の懇談

授業後、校長室で懇談しました。

校長先生は、昨年度まで妙高中学校の校長をしていらっしゃったので、校長会の研修などで接点がありました。「来客があって途中からしか聞けなかったですが、弁護士という立場からのお話はやっぱり視点が違っていて、理解が深まるなと感じました。」とお話されていました。また、教頭先生からは「生徒たちはもちろん私たち教員にとっても学ぶところが多い授業でした。保護者の方にも聞いていただきたい講演でしたね。」というお話がありました。

直江津中学校には、今年度中にまた薬害の授業でおじゃますることになりそうで、それも楽しみです。

*2024年1月11日付追記

直江津中学校区の小中学生が参加する小中スクール集会で、この授業で紹介した設例をもとに、生徒さん達が実演して、何がいじめにあたるかを考える取り組みがなされたようです(小中スクール集会について報告する直江津中学校のブログ記事)。1回の授業で伝えられることには限界があるので、このように継続的な取り組みをしていただけることはとてもうれしいです。ありがとうございました!