柏崎刈羽原発差止訴訟・第14回口頭弁論期日


3月7日に、新潟地方裁判所で、柏崎刈羽原発差止訴訟の第14回口頭弁論期日がありました。
遅くなってしまいましたが、その様子をご報告します。

1 原告の意見陳述

原告の石山謙一郎さんが、意見陳述をされました。

20代の中頃から、柏崎刈羽原発の建設に反対する取組を続けてきたという石山さん。
巻原発の建設計画を撤回させた後、「脱原発をめざす新潟市民フォーラム」を立ち上げ、現在まで取組を続けてきた思いを語りました。

12670695_1720434568204514_187960225007114401_n

2 原告提出書面の要旨

(1)基準地震動に関する書面(準備書面40)の要旨

高野弁護士は、原子力発電所における基準地震動を定める際に用いられている計算式(耐専スペクトル)の問題点を以下の通り指摘しました。

12494772_1720434551537849_1122412788417713016_n

  • 基礎データが少なすぎること(44地震の107記録)
  • 重要なデータが含まれていないこと(観測点の近くで発生した大地震についての記録がない)
  • 算定のもととなる指標が限られていること(地震規模・等価震源距離・評価地点の弾性波速度のみ)

これらのことから、計算式の予測精度は「倍半分」、すなわち「予測値の1/2~2倍程度となることが多く、2倍を超えることもよくある」といった程度のものとなっています。

基準地震動は、原子力発電所の耐震設計を行う際の基準となるものなので、この値が小さすぎると、地震が起きたときに設備が壊れてしまうことになります。その基準値が精度の低い計算式をもとに定められているのは大きな問題であるといえます。

(2)「安全余裕」の問題点に関する書面(準備書面41)の要旨

和田弁護士は、東京電力が主張している「安全余裕」という考え方に問題があることについて、詳細に主張しました。

12512663_1720434538204517_4922354980053185103_n

(1)「安全余裕」という考え方の根本的な問題

  • 材料力学で用いられるのは、「安全余裕」ではなく「安全率」
  • 安全率=諸々の不確定要素に対する備えとして設ける必要不可欠な安全代の比率
    →安全余裕があるから基準地震動を超えても大丈夫というのは、本末転倒

(2)原発で安全率が低く設定されていることの危うさ

原発は、理論計算により算出された応力値をもとに設計されているため、火力発電や化学プラントなどと比べて、安全率が低く設定されています。しかし、以下の点に照らせば、このことに合理性はありません。

  • 4種類の運転状態(通常・異常・緊急・損傷)のうち、「損傷」状態では降伏応力を超えることまで許容している。つまり、変形して元通りにならなくても、「壊れなければいい」という発想になっている
  • 中越沖地震のときには、計算上の限界値に達する前に、壊れる設備が続出した
  • 亀裂が入ると固有振動数が変化するため、理論計算があてはまらなくなる
  • 東京電力が「余裕」と表現する部分についても誤差がある

(3)東京電力の能力・資質不足に関する書面(準備書面42)の要旨

近藤正道弁護士は、昨年9月以降に明らかになった4つの問題を指摘し、東京電力には原子力発電所を運転・管理する能力や資質がないことを主張しました。

12832574_1720434584871179_7947913190050961485_n

(1)ケーブルの違法敷設
緊急時に安全設備に信号を送る「安全系ケーブル」は、その他の「一般用ケーブル」とは異なり、難燃性の分離板などで厳重に区画管理しなければならないと定められています。
しかし、柏崎刈羽原発でこの2種類のケーブルの多くが区別されておらず、混在していることがわかりました。
これでは、緊急時に信号を送ることができずに、安全設備が機能しないことにもなりかねません。極めて重大な問題です。

(2)設計監理の不備
福島第一原発事故後になされた安全対策工事の設計監理が、東京電力の社内マニュアルの手順通りに行われていなかったことも明らかになっています。マニュアルは保安規定と一体になっているので、これは保安規定違反ということになります。
安全対策工事全体のうち9割以上が、この保安規定違反であることがわかりました。肝心の施工段階でこのようにずさんなことが横行しているのですから、仮に規制委員会が申請書類に基づいて新規制基準に適合すると判断してもそれは実態とかけ離れたものとならざるを得ません。

(3)福島第一原発事故後のマニュアル無視
福島第一原発事故が発生した際、事故時運転操作手順書を無視して、事故対応にあたったことが明らかになっています。
この手順書も保安規定と一体をなすもので、スリーマイル島原発事故の教訓から新たに設定されました。
手順書に従わなかったことで、福島第一原発事故が深刻化したという指摘が専門家からなされています。

(4)福島第一原発事故のメルトダウンごまかし
東京電力は、福島第一原発事故の際、メルトダウン(炉心溶融)の事実を事故後約2ヶ月の間、認めようとしませんでした。その理由として、「当時、炉心溶融の判断基準がなかった」からだと説明していました。

しかし、事故当時既に策定されていた「原子力災害対策マニュアル」中に、炉心溶融の判断基準が明記されていたことがわかりました。これに伴い、言い訳の内容も「基準がなかった」から、「基準はあったけれども、基準があることに誰も気づかなかった」に変わりました。
このように重要なマニュアルの内容を把握していないとは考えられませんし、もし本当に把握していなかったというのであればそれこそ原発を運転・管理する能力も資質もないことを自ら告白するようなものでしょう。
いずれにしても、事故から約5年後のこの体たらくでは、とても信用することができません。

3 報告集会

期日の報告

弁護団から、法廷でのやりとりについて報告がなされました。
以下の動画からご覧いただくことができます。

東京電力のCMに抗議する取組ついて

東京電力が、新潟県内だけで流しているCMに抗議する取組について、中山均新潟市議から呼びかけがありました。
東京電力は、「安全対策を行っていることをアピールする」ためではなく、「安全対策そのもの」や、「福島第一原発事故の被害者に対する賠償」などに、優先的にお金を支出すべきだと思います。