安保法制がわかりません。教えて!アンポンタン!!(その5)


アン 最後は、表⑤の自衛隊法の改正についてだね。

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タン これも、「武力攻撃に至らない事態」で、紛争の時の話じゃないんだね。

アン

改正点はいくつかあるけれど、大きな変更は、
在外邦人の救出と、外国軍隊の武器等防護かな。

在外邦人の救出

タン

現行法では、在外邦人の「輸送」はできるけれど、
「救出」に関する規定はないんだよね。

アン そうだね。これを改正して「救出」もできるようにするんだ。

タン 救出って、どういうケースが想定されているの?

アン

日本人が誘拐された場合とか、日本の大使館や領事館が占拠された場合とか、
ハイジャックされた日本の航空機が空港に着陸した状態等があげられているよ。

ポン 自衛隊ってそんなにすごいことができるの?

タン

世界最強のアメリカ軍ですら救出に失敗するくらいだから、
自衛隊にはそんなことできないと思うよ。

アン

警察予備隊の機関誌として1952年に創刊された
防衛問題の専門紙「朝雲新聞社」が、今年2月、国会での議論について
「陸上自衛隊の能力を強化し、現行法を改正すれば、
人質救出作戦は可能であるかのような内容だ。国民に誤解を与える。」
と批判するコラムを載せたことが話題になったね。

タン 軍隊が出て行ったら人質にとっても逆に危ないという指摘もあるね。

アン

そうだね。イラクで人質になった高遠菜穂子さんは、
「人質になった自分が解放されたのは、結局自分が武器を持っていなかったから。」
と言っているよ。
そして「あのとき自衛隊が助けにきたらどうなったと思いますか」と聞かれて、
「私たちは多分殺されていたと思う」と答えているんだ。

ポン 人質になっちゃった人を助けることはできないってこと?

タン

高遠さんは「私たちがそうだったように、このような状況になった場合、
軍事力ではなく交渉力で解決する以外にない」と言っているね。

アン

地元の有力者とか、中立性が高い国際機関に仲介してもらい、
交渉で解決を図ることが重要なんだ。

実際、アフガニスタンで発生したNGO職員の誘拐事件は
ほとんどのケースでこのような交渉によって解決しているよ。

タン

う~ん。なんだか安易な発想で、
現実離れしたことをしようとしている感じがするね。

外国軍隊の武器等防護

図2
(写真は朝日新聞デジタルから)

アン

現行法では、自衛隊の武器等を防護することが認められている。
これを改正して、他国軍の武器等の防護もできるようにするんだ。

タン 武器の防護って、具体的にはどういう場面を想定しているの?

アン

日本の周辺で警戒監視活動をしていたり、共同訓練をしていたりするときに
米軍艦を自衛隊の護衛艦が守るというようなケースだね。

ただし、これに対しては
護衛中の米軍艦が攻撃されれば武器を使って応戦する訳で、
集団的自衛権とほとんど変わらないという批判がされているよ。

タン

そうすると、これも危険が大きいし、
憲法に違反するんじゃないかってことも問題になるね。

終わりに

アン

これで、説明は一通り終わりだね。
どうだった?

タン

難しくてわからないところもいくつかあったけれど、
だいぶ理解は進んだかな。

でも、~事態とか、国際平和~法とか、似通った言葉がたくさん出てきて、
それぞれの言葉の意味とか関係がすごくわかりにくいね。

「よくわからない」っていう人がほんとに多いし、
いつまでに成立させるかを先に決めるような乱暴なやり方はしないで
ちゃんと議論して欲しいよね。

アン

5回に分けて説明してきた内容の1つ1つがほんとに重大な変更だし、
憲法との整合性も問題になるから、それらを一括して提案するというのは
かなり強引なやり方といえるね。

特に、憲法との関係については、
絶対に曖昧にしたままで済ませるべきではないね。

ポン

難しい話がたくさんあったけど、今回1つだけ分かったことがあるよ。

タン どういうこと?

ポン

自衛隊の人が、人を殺したり、殺されたりすることになるんだなっていうこと。
これまでは、日本が攻撃された場合の90の選択だったと思うんだよね。

タン 苦渋ね。

ポン

そうそう。クジューの選択。
でも、これからは、日本が攻撃されていないのに、こちらから出掛けていって、
人を殺してきてください、場合によっては殺されることもありますって
自衛隊の人にお願いすることになるんだよね?

アン そういうことになるね。

ポン それって、すごく重い決断だと思うんだよね。

アン

そうだね。国民の代表者が法律で決めるっていうことになるわけだから、
国民1人1人が他人事じゃなく自分の問題として考えないといけないよね。

ポン

そう。だから、スポーツニュース以外のニュースもちゃんと見ようかなと思ったよ。
新聞を読むのはちょっと無理そうだけど。

タン

最後の決意はなんか微妙だけど、ポンもいろいろ考えられたみたいでよかったよ。
ありがとう。

アン

そうだね。いろいろ話して僕も勉強になったよ。
また機会があったらやりたいね。

(終わり)

改正法案は、今日閣議決定され、明日国会に提出されるようです。
重大な問題を孕んだこの問題について、今後も情報を発信していきたいと思います。
ご注目ください。