今年予定されている「安全保障法制の整備」の内容


安倍総理は、今月6日のあいさつで、「4つの分類にしたがって法整備を進め、切れ目のない法制をつくる」として、今年の通常国会で安全保障法制を整備する意向を表明しています。

1 「4つの分類」の内容

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(1)第1類型:日本が攻撃されていなくても武力行使できるようにする

上の表のうち、青色の部分は日本が武力行使する場面に関するもので、緑色の部分は武力行使以外の活動をする場面に関するものです。

従来は、日本が武力攻撃を受けた場合に限って、武力行使=個別的自衛権を行使することができるとされてきました。

この制限を取り払ったのが昨年7月1日の閣議決定です。
昨年7月1日の閣議決定で、一定の要件を満たした場合には、日本が攻撃されていなくても武力行使ができるとしました(集団的自衛権の行使、集団安全保障の一環としての武力措置)。
これらの変更に対応する法改正が予定されています。

(2)第2類型:現に戦闘が行われていなければどこでも自衛隊が他国軍隊の支援をできるようにする

第2類型は、以前のブログでも書いた「後方支援」の範囲を広げる法改正です。
従来は非戦闘地域(=現在戦闘行為が行われておらず、かつそこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域)での後方支援しか認められていませんでした。

しかし、昨年7月1日の閣議決定でこの制限を取り払い、現に戦闘が行われている地域(戦闘現場)でなければ、将来的に戦闘が行われる可能性がある地域であっても、自衛隊が活動できるとしました。この閣議決定に対応する法改正が予定されています。

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(3)第3類型:自分を守るためでなくても武器を使えるようにする

第3の類型は、PKOなど国際協力活動に参加中の自衛隊について、武器の使用基準を緩和するものです。従来は自分やまわりの者の身体、自衛隊の武器などを守る場合に限定されてきました。

しかし、昨年7月1日の閣議決定で、以下の2つの類型での武器使用を可能にしました。
この閣議決定の内容にあわせた法改正が予定されています。

  • 「駆け付け警護」:武装勢力に襲われている他国軍やNGOの救護・援助
  • 「任務遂行目的での武器使用」:自衛隊の任務を妨害する武装集団等を排除

紛争地域で活動するNGOからは、このような武器使用は現実的ではなく、かえってリスクを高めることになるなどの指摘がなされています。

(4)第4類型:本来警察権で対応すべき領域についても自衛隊が関与できるようにする

第4の類型は、「グレーゾーン」と呼ばれる領域に関する改正です。
本来であれば警察権によって対応すべき領域のうちの一部について、自衛隊による対処を可能にするための手続を閣議決定で定めることが予定されています。

これに対しては、元防衛官僚からも、「不審船事件」(1999年)をうけて法改正したのになぜ自衛隊の関与が必要なのか紛争をエスカレートさせないようにするためにも慎重な政治的判断をすべきではないか等の疑問が呈されています。

2 安全保障法制整備の意味

(1)日本が武力攻撃を受けた場面ではないこと

4つの類型に共通するのは、いずれも日本が武力攻撃を受けた場面の話ではないということです(冒頭の表参照)。

つまり「安全保障法制の整備」というのは、日本の防衛と直接関係がない場面での自衛隊の活動を広げることを意味しています。

(2)自衛隊が戦闘に巻き込まれるリスクが飛躍的に高まること

武力を行使する第1類型はもちろんですが、それ以外の類型でも、以下のような活動をすることになる以上、自衛隊が戦闘に巻き込まれるリスクが飛躍的に高まることは間違いありません。

  • 自衛隊が紛争地域で他国軍隊を支援する(第2類型)、
  • 襲撃されている他国の軍隊などを守るために自衛隊が武器を使用する(第3類型)、
  • 海上保安庁が対応すべき場面で自衛隊が出て行く(第4類型)

その先に待ち受けているのは、本格的な戦争や国内でのテロなどの最悪の事態です。
私たちの日々の生活に重大な影響を及ぼすことになる「法整備」をさせるわけにはいきません。