安保法制がわかりません。教えて!アンポンタン!!(その1)


日本の安全保障政策を根本から転換する安保法制の審議が、今月半ば頃からはじまる見込みです。

でも複雑すぎてよくわからないという声がたくさん聞かれます。法改正によっていったいどういうことをしようとしているのか、アン、ポン、タンの3人と一緒に学びましょう。

安保法制でできるようになること

アン 「安全保障法制」って知ってる?

ポン そりゃあ知ってるよ。あれでしょ?しゅーだん的自衛権を認めるってやつでしょ?

タン それも含まれるけど、それだけじゃないんだよ。

ポン あれ?そうだっけ?

アン

そうそう。集団的自衛権の行使だけじゃなくて、集団安全保障措置の一環としての武力措置もできるようになるし(表②)、戦争をしている他の国の軍隊への「後方支援」についても、これまで以上にいろんなことができるようになるんだよ(表③、④)。

タン

あとは、PKO協力法も改正されて、国連とは関係のない有志連合に自衛隊が参加したり(⑤)、武器を使用することができる場面も広がったりするんだよね(⑥)。

ポン 漢字が多すぎて途中からついていけてないんだけど、、、。

アン じゃあ、順番に説明するよ。

ポン お願いします。

これまではどうだったの?

20150502213143-0001

アン まずは、上の表を見てみて。

ポン お~、なんか色がきれいだね。

タン そこか。

アン まず①のところを見て

ポン 武力攻撃事態って書いてあるね。

アン

そう。日本が外国から武力攻撃を受けたりした場合は、この「武力攻撃事態」ってことになるんだ。

タン その場合は、個別的自衛権を行使できるってわけだね。

ポン 攻撃されっぱなしって訳にはいかないから、反撃するってことか。

アン そういうこと。まあ、反撃っていうよりは防御って言う方がしっくりいくけどね。

タン いままでは、この場合しか武力を行使しちゃいけないってされていたんだよね。

ポン それはどうしてなの?

アン

一言で言えば憲法9条があるからだね。憲法9条2項には、戦力を保持しないって書いてある。でも、日本が攻撃された場合に国民を守れないのでは困るということで、「国民を守るための必要最小限の実力組織」なら持ってもいいんじゃないかと考えられてきたんだ。
「国民を守るための必要最小限の実力組織」だから、日本が攻撃された場合に、これを排除するためにしか、武力を行使できないとされてきたんだ。

ポン う~ん。なんか難しい。

タン

憲法9条があるから、これまでは、日本が攻撃されたときしか武力を行使しちゃいけないとされてきたってとこだけおさえておけばいいよ。

ポン わかった。

集団的自衛権の行使が可能に

アン

でも、②の「存立危機事態」に該当する場合には、日本が攻撃されていなくても、集団的自衛権の行使、つまり武力行使ができるようになるんだ。

ポン え~!集団的自衛権って、日本が攻撃されてないときの話なんだ。

タン 自衛っていう言葉が入っているから、誤解しやすいけれど、そうなんだよ。

ポン へえ~。ところで、ソンリツキキジタイってどういうこと?

アン

「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合のことだよ。

ポン よくそんなの覚えられるね。こっちは聞いてるだけでくらくらしてきちゃうよ。

タン

日本が攻撃された場合に匹敵するくらいの状態だなんて説明されたりもするけれど、ほんとにそういう場合に限定されるのか疑問だという声もあるよ。

ポン どういうこと?

限定された集団的自衛権?

アン

国会では、例えば、ホルムズ海峡に機雷が敷設された場合にも、この存立危機事態に該当する場合があるから、集団的自衛権を行使して、この機雷を除去する活動に加わることもありうるという説明がされているんだ。

図1 (画像は朝日新聞デジタルから)

ポン ホルムズ海峡ってどこにあるの?

タン 中東だね。ペルシア湾とオマーン湾の間にある海峡だよ。

4c39c621cfc6b3043ae80a9dd15ff234 (画像は朝日新聞デジタルから)

ポン そこに機雷がまかれるとどうして日本が攻撃された場合に匹敵するくらいの状態になるの?

アン

イランがここに機雷を敷設すると石油を運ぶタンカーも通れなくなって、日本にも経済的に大きな影響が及ぶから、存立危機事態に該当するというのが政府の説明なんだ。

ポン 実際そんなにやばいことなの?

アン

日本には石油備蓄法という法律があって、国は90日分の石油を備蓄しなければいけないことになっているんだ。このほかに、民間でも相当量の備蓄をしているよ。

タン

日本は資源が乏しい国だからそれなりの備えはしているってことだね。この備蓄分がなくなるまでの間に外交交渉などで石油を確保するというのが、これまでの日本政府の基本的なスタンスだよ。

ポン

いままではそれでやってこられたってことかぁ。そんな場合でも、日本が攻撃された場合に匹敵するっていうのは大げさ過ぎる感じがするね。

集団的自衛権を行使することによるリスク 

アン そうだね。逆に、掃海活動に加われるようになれば解決できるのかという問題もある。

ポン どういうこと?

タン

機雷をまくというのも武力の行使だから、もう完全に紛争状態に入っているってことなんだよね。仮に機雷を除去できたとしても、紛争地帯にある狭い海峡を、石油を積んだタンカーが通れるのかという根本的な疑問がある。

ポン 確かに、それは危なすぎるね。

アン

それに、まいた機雷が除去されるのをイランが指をくわえてみているはずはないから、掃海活動にはかなりの危険を伴うんだ。安全に機雷を除去するためには、事前に戦闘機や潜水艇等の戦力を奪っておかないといけないから、イランとの間で激しい戦闘になることが前提だよ。

タン

機雷を除去することそれ自体も武力行使にあたるから、掃海活動に加わることによって、日本は中立国ではなく紛争の当事国になる。つまり戦争に参加するということだから、自衛隊員の犠牲はもちろん、日本本土が攻められたり、国内でテロが起きるリスクも高くなると言われているんだ。

アン

イランをめぐる核協議で、先月はじめに枠組み合意が成立したんだ。イランが機雷を敷設するような事態にはならないのではないかということも言われているよ。

ポン

う~ん。難しい話を一度にたくさん聞いたから半分くらいしか頭に入ってきていない感じだけど、とにかく大変なことになりそうだったことだけはわかったよ。今日はこのくらいで、続きはまた今度頼むよ。

(続く)