『上越よみうり』のコラム、「田中弁護士のつれづれ語り」。
2021年4月14日付に掲載された第107回は、「どうする空き家?」です。篤子弁護士が、空き家問題について、全国各地の進んだ取り組みを紹介しています。上越市でも空き家問題は深刻さを増していますので、より踏み込んだ対策を期待したいですね。
どうする空き家?
1 Kinaiyaプロジェクトのイベントにて
先月12日、町家交流館高田小町で、「どうする空き家?」と題する公開ミーティングが開催されました。ミーティングを主催したのは、高田市街地の空き家リノベーションなどに取り組んでいる「Kinaiyaプロジェクト」という若い人たちのグループです。私は、ミーティングの冒頭で、上越市の空き家問題の現状、課題、今後求められる対策などについての解説を担当しました(詳しい内容は当事務所のHPに掲載していますので、そちらをご覧ください。)。コロナ禍のため定員数を抑えての開催でしたが、建築士、司法書士、不動産業者など「空き家問題の専門家」だけではなく、介護福祉職員、学校職員、町内会長など、多彩な顔ぶれが集まり、充実した会となりました。
2 高まる空き家問題への関心
全国的に空き家が増えていることは周知の事実ですが、近年は、上越市でも、市民のみなさんの関心が高まっているのを感じます。いわゆる団塊の世代の方々が相続準備を意識する年代になってきたことに加えて、空き家の倒壊や火災などが相次いで発生したことなども影響しているのかも知れません。
「自分が入院したり施設に入ったりしたらこの家は空き家になりそうだがどうしたらよいか」「実家が空き家のまま放置されておりだいぶ老朽化している。売れそうもないし、子どもたちに相続させるのも申し訳ないので、生前に何とかしておきたい。」「近所の空き家が長年放置され荒廃しており危ない状況だが、持ち主がわからず、どうしたらよいかわからない。」等、空き家に関する悩みを抱えていらっしゃる方も増えているようです。
3 官民の連携体制を
現在、全国の自治体で、官民連携による空き家対策の取り組みが進められています。必要な対策は、①空き家問題の普及啓発、②空き家の発生抑制、③空き家の実態把握、④空き家の流通促進、⑤空き家の利活用、⑥空き家の除却、⑦市街地の面的整備との連携が必要な空き家への対応など、多岐に亘ります。いずれも、官のみ、民のみでは効果的な対策が困難なため、官民の連携協力体制を構築することが急務とされています。そのため、多くの自治体が、民間事業者との間で連携協定を締結して事業にあたっています。
なお、自治体が保有する空き家情報は高度な個人情報ですが、効果的な空き家対策を行う上で民間事業者との情報共有は不可欠です。そこで、「空き家所有者情報の外部提供に関するガイドライン」(国土交通省住宅局作成)では、空き家情報を適切に共有するために事業者との間で個別に連携協定を締結しておくことが推奨されています。
4 全国の取り組み例
例えば、最近では、北海道比布町が、無償譲渡物件の不動産マッチング支援サイト「みんなのO円物件」を運営する不動産会社との間で、空き家等の流通および利活用促進に関する連携協定を締結したと報じられました。また、東京都調布市は、昨年、建築士会、多摩信用金庫、ミサワホーム株式会社、三井住友銀行などとの間で空き家等ワンストップ相談窓口事業に関する連結協定を締結しました。これは、単なる相談受付にとどまらず、事例構築、ケーススタディ、課題解決に向けたスキームの考案なども目指した事業です。これらはほんの1例で、インターネット上では全国の様々な取り組みが公開されており、今や参考事例には事欠かない状況です。
上越市では、これまでのところ、宅建協会、シルバー人材センターほか2つの管理業者との間で連携協定を締結し、空き家バンクのHPも開設するなど、最低限の対策はしています。もっとも、多くの市民は「空き家問題への取り組みが十分だ」とは感じていないようです。なぜ全国の自治体が空き家対策を強化しているのかということを考えると、当市でも他の自治体の進んだ取り組みを参考にしながら、より一層の積極的な対応を期待したいところです。
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