『上越よみうり』に連載中のコラム、「田中弁護士のつれづれ語り」。
2021年3月17日付に掲載された第105回は、「共有についての改正ポイント」です。篤子弁護士が前回(第103回)に引き続き、民法・不動産登記法の改正案の内容について、わかりやすく解説しています。
共有についての改正ポイント
1 前回に引き続き
前回のコラムでは、民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正案のうち、「相隣関係」と呼ばれるお隣さんとの法律関係に関わる変更点をお伝えしました。
今回は、「共有」に関する変更点についてお伝えします。
なお、改正案及び関連する新法案は、今月5日に閣議決定され、今国会での成立が見込まれています(より専門的な解説は当事務所のホームページをご覧ください。)
2 共有地が生まれやすい背景
土地の所有者が死亡した後、遺産分割や相続登記をせずに先代名義のままで放置しているケースは少なくありません。このような場合、土地の登記上の名義は先代のままになっていても、実体的な権利は相続人へと移っています。相続人が複数いれば、その相続人の共有となります。この状態で相続人の一人が亡くなれば、さらにその相続人も共有者に加わります。このようにして共有者が際限なく増えていくことがあります。ある自治体では、共有地の用地取得の際に、昭和初期当時は50数名の共有地だったところが、その後相続により約700名まで共有者が膨れ上がっていることが判明したケースもあったようです。
3 共有だと何が困るのか
複数の共有者がいる土地の利用や取得を希望する場合、まず共有者全員の氏名・住所を調査して、全員と交渉する必要があります。しかし、共有者が多数だったり、所在不明等の共有者がいたりすると、その手間が非常に重いため、取得を断念せざるを得ないケースも少なくありませんでした。
また、共有地の所有者が、その土地の売却や利活用をしたいと思った場合、その内容に応じて、全員の同意あるいは過半数(頭数ではなく持分価格の過半数)の同意が必要ですが、これも同様に、所在不明等の共有者がいたり、態度を明確にしてくれない共有者がいたりする場合には、身動きがとれずに困ることがありました。
4 改正のポイント
そこで、今回の改正案には、共有者が土地の売却や利活用がしやすいように、①どのような場合に全員の同意が必要で、どのような場合は不要かを法律上明確にする、②所在不明等の共有者や態度を明確にしない共有者がいる場合には、裁判所から、公告等の手続を経て「その他の共有者全員の同意を得れば共有物を利用できる」とする決定を出してもらい、これによって共有物を利用できることにする、③共有地の管理について対外的な窓口を置けるように、共有物の管理者に関するルールを整備する、④共有者の一部が供託を利用して所在不明等の共有者から持分を取得できる制度を作る、ことなどが盛り込まれています。
共有地をお持ちで、他の共有者と連絡が取れないために売却等ができずにお困りの方などは、この改正で先が見えるようになるかもしれません。国会での法案審議に注目しておいてください。
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