『上越よみうり』に連載中のコラム、「田中弁護士のつれづれ語り」。
2020年1月22日付朝刊に掲載された第76回は、「空き家対策セミナーに参加して」です。篤子弁護士が、空き家対策セミナーに参加して感じたことや、上越市において空き家問題を解決していくためにどのような取り組みが必要であるか等について書いています。
空き家対策セミナーに参加して
1 参加のきっかけ
今月18日(土)に上越市土橋の市民プラザで上越市主催の空き家対策セミナーが開催されました。私は、本コラム第30回『土地も断捨離できる日がくる?』(2018年3月7日掲載)と第32回『増える空き家とこれからのまちづくり』(同年4月25日掲載)で所有者不明土地問題と空き家問題に着目して以降、関心を持ち続け自分なりに勉強してきたのですが、昨年新潟県弁護士会で発足した空き家対策の専門部会のメンバーとなり、上越地域を担当することになりました。現在、上越市の所有者不明土地問題・空き家問題について、県弁護士会が専門的見地からバックアップできるような体制づくりを進めるべく、上越市との協議を進めているところです。そんなこともあり、せっかくの貴重な機会なので聴きに行くことにしました。
2 セミナーの概要
講師をされたのは、NPO法人新潟ホーム管理サービスの青木英朗理事長です。同法人は、平成29年2月に上越市と空き家等の管理に関する連携協定を締結し、現在、上越市内で10数棟の空き家管理を請け負っているそうです。管理の委託を受けた空き家については、月1回巡回し、換気、清掃、枝木剪定、草刈等々の管理作業を行っているそうで、管理費用は月3000円とのことでした。
講演では、上越市の空き家の現状や将来の見通し、空き家が放置された場合に生じる問題、空き家法に基づいて所有者が受ける行政処分の内容、空き家問題が生じる背景や原因、空き家の予防策などについて説明がありました。講演の最後に、「空き家になる前にしておくべきこと」として、①早めに家族で相続について話し合っておくことと、②生前に不用品を処分しておくことの2点が挙げられました。特に強調されていたのは②の点で、家具や食器等も含めて遺品の大半は買取業者に買い取ってもらえず、廃棄するために多大な費用がかかることから、残された家族に迷惑をかけないためにも生前に物の整理・処分をしておくことが大切だと強く訴えたいとのことでした。
3 空き家問題の解決に向けて
空き家問題が生じる背景や原因についての説明では、所有者が認知症等で判断能力が低下しているケース、相続人間で実家の管理や処分について意見が割れて話し合いがまとまらないケース、長期間相続登記がされていない等の理由で所有者の把握が困難なケースなどが紹介されました。いずれも私たち弁護士が日常業務の中で対応を迫られることの多いケースです。
今回の講演では、空き家問題の「予防」のために何ができるかという観点で様々なお話があり、それ自体とても大切な話だと思いましたが、それと同じかそれ以上に、今現在起きており、これからも生じるであろう空き家問題の「解決」のために何ができるかという観点での取り組みも非常に重要ではないかと思います。
この点、新潟市では、不動産分野で、不動産協会、宅地建物取引業協会、土地家屋調査士会、建築分野で、建築士会、建築士事務所協会、住宅相談協議会、解体分野で、解体工事業協会、法務分野で、弁護士会、司法書士会、行政書士会と、それぞれの専門家団体と市が連携協定を締結し、各種の専門家が合同で開催する空き家無料相談会が年2回ほど開催されています。
上越市では、現在、空き家の維持管理についての連携協定が締結されているのみで、上記のような各種専門家団体との連携協定は未締結の状態です。当弁護士会からはすでに連携協定締結の申し入れをしているところですが、新潟市の取り組みを参考に、上越市でも充実した空き家問題の相談や解決支援の体制が構築されることを期待しています。
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