つれづれ語り(相続法改正)


『上越よみうり』に連載中のコラム、「田中弁護士のつれづれ語り」。

2018年12月5日付に掲載された第48回は、相続法の改正についてです。
約40年ぶりに改正法が成立しましたが、準備期間に差があるため、施行時期にずれがあります。改正法のポイントを施行時期ごとにまとめました。政府広報オンラインの解説記事や、政府インターネットテレビの動画のリンクもはっておいたので、そちらもご覧ください。

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約40年ぶりに変わる「相続法」

1 「相続法」が変わる

今年7月に「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」及び「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立したことをご存知でしょうか。昭和55年以来40年ぶりに民法のうちいわゆる「相続法」の分野が見直されたのです。

今回は、その内容について簡単にご紹介したいと思います。

2 改正のポイントは?

社会の高齢化に対応するため、残された配偶者の生活保障を手厚くしたり、遺言書を利用しやすくしたり、相続人以外の親族が介護等に貢献した場合にも寄与分を認めたりするほか、現行制度で不都合のあった遺産分割や遺留分制度の見直し、相続と登記の関係、故人の預貯金の払戻しに関する改正などが盛り込まれています。

新制度に必要な準備期間に差があることなどを理由に施行日がバラバラになっているため、以下、施行日ごとに、何が変わるかをかいつまんで紹介します。

3 平成31年1月13日から施行されるもの

【自筆証書遺言の方式緩和】

これまで「全て手書き」が必要だった自筆証書遺言ですが、遺言書に添付する「財産目録」についてはパソコンで作成した目録や通帳のコピーなどが認められ、遺言者の負担が軽くなりました。

4 平成31年7月1日から施行されるもの

多くの新制度はこの日から施行されます。

内容は、①遺産分割等についての見直し、②遺留分制度についての見直し、③相続の効力と登記の関係についての見直し、④相続人以外の者の貢献を考慮するための「特別の寄与」の制度などが盛り込まれています。

具体的には、①20年以上連れ添った夫婦の場合は生前に自宅の贈与(名義変更)を受けても遺産の前渡し(特別受益)とは扱われなくなったこと、遺産分割前でも故人の預貯金の払戻を受けられる制度が作られたこと、②遺留分を金銭請求権として整備し直したこと、③法定相続分を超える相続をした部分については登記等がなければ第三者に対抗できなくなったこと、④相続人以外の親族が介護等で貢献した場合に「特別の寄与」が認められ相続人に金銭請求ができるようになったことなどです。

5 平成32年4月1日から施行されるもの

【配偶者居住権及び配偶者短期居住権に関する規定】

配偶者居住権とは、例えば夫婦の自宅が夫名義になっていた場合、夫が亡くなった後も妻が生涯または一定期間自宅に無償で住み続けられる権利です。自宅の所有権を取得するよりも評価額が低額になるため、その分、預貯金など他の遺産をこれまでよりも多く取得できるという点にメリットがあります。一方、配偶者短期居住権とは、遺産分割などで誰が自宅を取得するかが決まるまでの間、少なくとも6か月間は無償で自宅に住み続けられる権利です。いずれも、残された配偶者の生活保障を手厚くするために行われた改正です。

6 平成32年7月10日施行されるもの

【法務局における遺言書の保管等に関する法律】

これまで遺言の紛失や書き換えなどを防ぐには、公証役場で公正証書遺言を作成する必要がありましたが、自筆証書遺言を法務局で保管してくれる制度ができました。これは法務局の体制整備に時間がかかることから施行日が先になっているようです。

7 詳しい内容は

文字数の関係であまり詳しい説明はできませんでしたが、インターネットで「政府広報オンラインページ 相続法」で検索すると詳しい解説記事が、「政府インターネットテレビ 相続法」で検索すると分かりやすい紹介動画が掲載されていますので、気になる方はそちらも併せてご覧ください。