つれづれ語り(悪質商法・詐欺)


『上越よみうり』に連載中のコラム「田中弁護士のつれづれ語り」。
11月15日付に掲載された第22回は、悪質商法・詐欺についてです。

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悪質商法・詐欺商法にご注意を

1 増加する消費者トラブル 

「リサイクルショップですが、ご家庭に不用品はありませんか?」という電話が、最近頻繁にかかってきませんか?

ガソリンスタンドで給油中に無料点検を受け、店員から「タイヤの空気圧に異常がありますね。このままだと事故になる危険がありますよ。」とタイヤの交換を勧められたことはありませんか?

国民生活センターによると、不用品の訪問買取や、ガソリンスタンドでの自動車整備を巡る相談件数が増加傾向にあるようです。前者では、不用品だけ売るつもりが、口車に乗せられていつの間にか大切な形見の貴金属まで廉価で売ってしまった例、後者では、不安をあおられて本来必要のない交換・修理をさせられた例などが報告されています。

もっとも、これらは一例に過ぎません。

全国の消費生活センターに寄せられる消費者被害やトラブルに関わる相談件数は、1985年までは10万件以下でしたが、最近10年ほどは90万件前後で推移しており、高止まりの状態にあります。なかでも、高齢者の相談件数は、最近9年間で約5割も増加しています。

私たちもいつ被害に遭うか分からず、決して他人事とは言えません。

2 どのように身を守るか

 被害に遭わないためには、日頃から、多様化・巧妙化している悪質商法・詐欺商法の手口をチェックしておくことが有用です。国民生活センターのホームページには、様々な相談事例が掲載されていますので、この機会にインターネットで最新の手口を確認しておいてはいかがでしょうか。

また、万が一、騙されてしまったとしても、契約内容や状況によって、クーリング・オフや消費者契約法等の取消権などにより対処できる場合があります。泣き寝入りせずに、まずは、消費者生活センター(025-525-1905)に相談するか、お近くの弁護士にご相談下さい。

なお、最近、実在の弁護士名を騙ってお金を振り込ませる詐欺事件が発生していますので、ご注意下さい。本物の弁護士か偽者かは、次の方法で見分けることができます。

「日本弁護士連合会」のホームページを開く。「弁護士を探す」をクリックし、次のページで「弁護士検索へ」をクリックする。検索ボックスの氏名欄に、その弁護士の名前を入力し、「検索」をクリックする。検索結果の登録番号の数字をクリックする。そうすると、その弁護士の事務所所在地と電話番号、ファックス番号が分かります。その電話番号に電話をかけ、「先ほど○○の件で弁護士から電話をもらった者です。」と伝え、話が通じれば、その弁護士は本物です。判断に困った場合は、消費生活センターにご相談下さい。

3 国の対策が不可欠

このように私たちが自己防衛することも大切ですが、本来は、悪質な業者をのさばらせないよう国や自治体がしっかり対策をとるべきです。

しかし、予算削減やマンパワー不足などを背景に、業務停止命令などの行政処分は十分に行われていないのが現状のようです。

そこで、日本弁護士連合会では、今年5月に、「地方消費者行政の一層の強化を求める意見書」を出し、国が必要な財政負担を継続的に行い、各自治体の専門職員の確保などを行うよう求めました。

国会でこれらの問題が取り上げられ、政府が真剣に対策に取り組むか否かは、ひとえに国民の関心の高さにかかっています。

安心して暮らせる社会をつくるため、みなさんもぜひ注目し、地元の国会議員などに声をかけてください。