つれづれ語り(森友学園をめぐる問題)


2017年3月1日付「上越よみうり」に掲載されたコラム「田中弁護士のつれづれ語り」。

今回は、いま話題の森友学園をめぐる問題について、会話形式でまとめました。いろいろ派生して、様々な問題が出てきていますが、核となる問題のさわりだけ触れています。

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「森友学園」をめぐる問題って?

今回は、最近気になるニュースについて、淳哉弁護士との会話形式でお届けします。

篤子:大阪市の学校法人「森友学園」(籠池泰典理事長)の問題がニュースになっているわね。そもそも問題の発端は何だったの?

淳哉:財務省近畿財務局が、昨年6月に大阪府豊中市内の国有地を森友学園に対して格安で売却したと報じられたのがきっかけなんだ。

篤子:格安って、どのくらいの金額で売却されたの?

淳哉:1億3400万円だよ。これは近隣の国有地の売却価格の約1割と言われている。

篤子:どうしてそんなに安く売却されたの?

淳哉:
財務省は、その土地の時価(不動産鑑定士による鑑定価格)9億5600万円から、その土地の地下に埋設されたゴミの処分費用として8億1900万円を差し引いたと説明している。
でも、8億1900万円というのは単なる見積額で、実際にゴミの処分費用として支出したわけではないことがわかっている。そんな金額を差し引くのが適正と言えるのか、国会で大問題になっているんだ。

篤子:もし、相当な根拠もなく8億1900万円もの値引きがされていたとしたら大問題ね。

淳哉:そうだね。国の財産を適正な対価なく処分してはならないという財政法9条の規定に抵触することになると思うよ。

財政法9条「国の財産は、法律に基く場合を除く外、これを交換しその他支払い手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはならない。」

篤子:他にはどんな問題があるの?

淳哉:
売買契約までの経緯にも疑問がもたれているよ。
財務局と森友学園は、この土地について、一昨年5月に定期借地契約を締結している。その間に森友学園が廃材や汚染土の撤去工事を行っていて、その費用1億3176円は,貸主が負担すべき「有益費」(民法608条2項)にあたるとして国が負担しているんだ。

しかし、その後、森友学園は、「基礎工事中に地下深くから新たなゴミが出てきた」と国に報告し、その結果、8億1900万円の値引きの上で売買契約が締結されている。
しかも、代金は異例の10年分割払い。

一連の経緯を見ると、まるで森友学園が安価に土地を手に入れるために考え抜かれたスキームのようで、話ができすぎているように見えるし、政治家の関与抜きにはあり得ない奇怪な契約だという指摘もある

仮に政治家が口利きしていたのだとすると、あっせん利得罪(あっせん利得処罰法1条。法定刑3年以下の懲役。)やあっせん収賄罪(刑法197条の4。法定刑5年以下の懲役。)が問題になってくるよね。

篤子:次々に新しい事実が明らかになってきているから、今後どうなっていくのか目が離せないわね。