ママの会@新潟とのコラボ企画についての打ち合わせ(夜バナ特別バージョン)


先週、新潟市内のカフェで、イベントの打ち合わせをしました。

メンバーは、安保関連法に反対するママの会@新潟の磯貝潤子さん、
新潟県弁護士会憲法改正問題特別委員会委員長の水内基成弁護士、
当事務所の田中淳哉弁護士、と私の4人です。

今日は、夜バナ特別バージョンということで、
このときの打ち合わせの様子をアップします。

はじめましてのごあいさつ

水内
県の弁護士会では、今年の6月頃に開催予定のイベント
「安保法制に関する裁判員裁判形式の模擬裁判」の準備を進めています。
その企画を盛り上げるためのプレ企画として、
ママの会@新潟と一緒にミニイベントをさせていただきたいと思っています。

淳哉:
今日はそのプレ企画の打ち合わせをさせてください。

掲載用写真

潤子:
水内先生とはつい先日もお会いしましたし、
淳哉先生とは昨年9月9日のピースキャンドル(県弁護士会主催のパレード)で
お会いしたことがありますが、
篤子先生とは初めましてですね。よろしくお願いします。

淳哉:
あの時は、ほんの一瞬言葉を交わしただけだったので(笑)、
ゆっくりお話しするのは私も今回が初めてですね。
よろしくお願いします。

篤子:
初めまして。
磯貝さんがとっても素敵な方で、お会いできて嬉しいです。
よろしくお願いします。

潤子:
よろしくお願いします。
ママの会@新潟としては、弁護士の先生方と一緒に活動できるのは
とてもありがたいなと感じています。

私たちは勇気を出して声をあげましたけど、
普段は頭の中の8、9割は子どものこととか、
今日の晩御飯は何にしようとかいうことを
考えているような状態なので(笑)、
色々と教えていただけるとありがたいです。

篤子:
すごくよく分かります。私も普段は8,9割は家事、育児のことを考えてます(笑)。
実を言うと、私もあまり安保法制には詳しくないんですよ(笑)。
夫から聞いたりSNSで見たりする程度で。
産後で忙しくて・・・なんて言い訳ですけど(笑)。

安保政策の是非とは別次元の問題

潤子:
いえいえ、分かります(笑)。
ところで、どうして弁護士会で模擬裁判の企画をすることになったんですか?

水内:
弁護士会としては、安保法制について反対の立場をとっていて、
総会決議や会長声明をたびたび出しています。
安保法制は成立してしまいましたけど、
弁護士会としてはこの法律を廃止にするために、
引き続き取り組みを続けていきたいと考えています。
今回の企画も、そうした取り組みの一環として行われるものです。

淳哉:
もちろん、弁護士会にもいろいろな考えの方がいるので、
中には安保法に賛成だという弁護士もいます。
でも、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士としては
憲法を蔑ろにするようなことを認める訳にはいきません。

篤子:
弁護士が人々の権利を守れるのは法律という武器があるからです。
法律が軽んじられると、権利を守ることはできなくなってしまう。
憲法というのは、国民の権利を守るためのもっとも大切な法なので、
それを政府が意味のないものにしようとしていることを、
弁護士会として見過ごすことはできないですよね。

これは、安全保障政策としての是非とはまったく次元の違う問題で、
反対することは弁護士としての職責なんだと私は理解しています

深まらなかった国会審議

潤子:
なるほど~。でも、どうして模擬裁判なんですか?

淳哉:
安保法制については、様々な意見がありますけど、
まだまだ議論が不十分というか、そもそも議論がかみ合っていないと感じます。
裁判の形をとることで、議論をかみ合わせられれば、
安保法に対する理解が深まるんじゃないかと思うんです。

篤子:
国会で安保法案の審議をしていたのがちょうど出産直後だったので、
比較的よくテレビや新聞、SNSを観ていました。

でも、国会中継やニュース、ワイドショーを観ていても、
まったく理解が深まらなかったです。
お互いに自分の主張を言いっ放しで、
そもそも議論になっていないんですよね。

田中篤子 弁護士

淳哉:
11本の法律を一括して審理しているので、論点も多岐にわたります。
このため、質問する議員と答弁する閣僚の間で、
どの論点に関する議論なのかというレベルで認識がズレているようなことがありました。

また、政府の主張に対して具体的な根拠の提示を野党が求めても、
政府がそれを示そうとしないということもしばしばありました。

「もっと時間をかけて丁寧に議論すべきだ」という指摘もありましたけど、
こんなやり方でいくら時間を重ねても、
議論が深まることはないんじゃないかという感じさえしました。

どうして議論が噛み合わないのか

篤子:
「どうして日本の国会ではこんな議論しかできないんだろう」と疑問だったのです。
個々人の資質という面ももちろんあるでしょうが、
国会には議論をかみ合わせるための仕組みがないというのが
根本的な要因なのではないかと思うに至りました。

潤子:
どういうことですか?

篤子:
国会には、完全に公正中立な立場で審理を運営して、
客観的な立場から判断を下す役割を負う人がいません。

このため、議論をかみ合わせ、根拠を提示させ、
質の高い議論を目指すという動機付けがそもそもないですし、
そのためのトレーニングが積まれることもないのだと思います。
だから、政府が議論をすり替えたり、はぐらかしたり、
根拠もなく断定したりしても、それを正すことができないのでしょう。

潤子:
う~ん、なるほど。
そうするとああいう風になってしまうのも仕方がないんでしょうかねぇ。

裁判で用いられる争点整理手続

篤子:
制度の悪い面が出てしまっったということなんでしょうね。
でも裁判の場合は、争点整理と言って、
双方の主張をかみ合う形で整理する手続があります。

争点整理は、以下の様な手順で行われます。
1)双方の主張をふまえて論点を抽出する。
2)論点毎に結論を導く上で意味のある主張と、意味のない主張に振り分ける。
3)意味のある主張のなかで、事実に関する主張と、法律に関する主張を振り分ける。
4)事実に関する主張のなかで、双方とも異論のない部分と対立する部分を振り分ける。
5)対立する部分について、主張を裏付ける根拠や証拠があるのか、ないのかを振り分ける。

そうやって振り分けていき、
最終的にどの点について判断すれば
全体の結論が出るのかということをあぶり出して、
その点に絞って集中的に審理をしていくんです。
その際も、裁判所は、ぶれてしまった議論を軌道修正したり、
不明点を正すなど、そのつど指揮をしていきます。

潤子:
へぇ~、全然知らなかったです。

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篤子:
このように厳密に争点整理、訴訟指揮を行うのは、
きちんと議論を整理しておかないと、あとで判断を下す際に
裁判所自身が困ることになるからです。
議論が整理されていない裁判の判決を書くことほど大変なことはありません。
複雑で困難な事件ほど、争点整理にはじっくり時間をかける必要がありますし、
日ごろの争点整理のトレーニングもとても重要なものだと認識されています。

私は、安保法制の国会審理を見るなかで、
改めて裁判所の争点整理の意義を見直しました。
思考を整理し、議論を深め、根拠に基づいた結論を出すための
一つの究極の形なのではないかと。

淳哉:
確かにそうかも。

要望を通したいのであれば

篤子:
それと、裁判の大切な原則の一つに、当事者主義というものがあります。
これは、ザックリしたイメージを言うと、
「あなたの要望を通したいなら、
あなたが全責任をもってプレゼンテーションして下さいね。
あなたのプレゼンが成功し、裁判所を説得できなければ、
あなたの要望は通しませんよ。」というものです。

これは裏を返せば、
『私の要望に反対するなら、あなたが反対のプレゼンテーションをするか、
対案を出すべきだ。それができないなら、私の要望を通すべきだ。』
という理屈は裁判所では通用しませんよ」、ということです。

こういう理屈、安保法の問題ではよく唱えられましたが、
裁判所ではそもそもそういうことは言えないルールになっています。
これもいいな、と改めて思いましたね。

そうやって審理したうえで、以前夜バナのブログでも言いましたが、
「乗り降り自由の原則」に基づいて活発な合議を交わすんです。

民主主義において議論がもっとも大切なものだとすると、
日本の司法というのは、ある意味で、
もっとも進んだ形で民主主義を実践しているのではないか、とすら思いました。
裁判官を辞めてから時間が経っているため
若干想い出が美化されているかもしれませんが(笑)。

淳哉:
というようなことを、夜な夜な妻から聞かされるうちに、
模擬裁判という形で安保の問題を議論してみてはどうか、
というアイデアが浮かんできたんです。
争点整理の手法を用いて論点を整理することで、
これまでの議論の到達点が見えて、
さらに議論を深めることができるんじゃないかと思うんです。

結論ありきにならないように

潤子:
なるほど、先生方の想いがよく理解できました。

ただ、正直な話、模擬裁判って言っても、私なんか最初から「反対」って思っているから、
結論は反対に決まってるのになって思っちゃうんですけど・・・・。
それに、議論を深めるって言っても、
そんなに難しいことまで一般の人が知りたいと思うかなというのも少し心配です。
裁判って、難しいイメージですし、一般の人が聴いて分かるものでしょうか?

淳哉:
議論を深めたいという目的があるので、出来レースの様にはならないように、
賛成派の主張もしっかり準備します。
実は今、賛成派の本をたくさん読んで勉強しているんですよ。

モヤモヤを解消する

篤子:
安保法制に関しては、賛成派、反対派、無関心層がいると一般には認識されていますが、
それ以外にも、
「それなりに関心はあるが、賛成か反対かはよく分からない」、
「一応反対だが、賛成の意見を聞くと納得してしまう部分もある」
という中間層がいると思います。

「ニュースで見て漠然と怖い法律だという印象は持ったが、
賛成派の冷静な突っ込み解説を聞くと、自分が誤解していたのかなぁという気もして、
結局よく分からないままだ。」とか、
「戦争には絶対反対だが、安全保障のために必要な法律なら仕方ないのだろうか。
安保法が無いために危険に晒されるのも、安保法があるために戦争に巻き込まれるのも、
どっちも嫌だ。結局どうすべきなのかはよく分からない。」といった方たちです。

私はこれを「モヤモヤ層」と呼んでいます。
以前、NHKの朝イチで安保法の特集をしていた際、
コメンテーターの青木さやかさんや坂下千里子さんがこういう趣旨の発言をされていて、
共感を覚えた方も多かったのではないかと。

水内:
去年の夏は、連日安保法の問題がテレビで取り上げられていたので、
完全な無関心層よりもこういったモヤモヤ層の方が多いかも知れないですね。
弁護士の中にも隠れモヤモヤ層は結構いると思いますよ(笑)。

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淳哉:
模擬裁判企画では、反対の結論ありきのものではなくて、
モヤモヤ層にスッキリしてもらえるクオリティーのものを目指したいと思っています。
反対派の理屈も賛成派の理屈も理解できて、なおかつ、
結局どの点に関する価値判断の違いが立場を分けるのかも明確に理解できた上で、
自分の立ち位置を決める、そういう風にできたら理想だなと思っています。

難しくならないように

水内:
一般の方が裁判員として参加する「裁判員裁判」の形をとるので、
難しい言葉遣いはできるだけ避けて、書類も少なくし、
「見て、聞いて、分かる裁判」にするつもりです。

篤子:
実際に刑事裁判で行われている裁判員裁判も、
裁判所、検察官、弁護士がそれぞれ工夫を凝らして
「見て、聞いて、分かる裁判」を実現しているので、それは可能だと思います。

ママの会とコラボしたプレ企画

潤子:
そうなんですね。ただ、やっぱり裁判というと硬いし、難しいイメージがあるので、
ママたちにはとっつきにくいかなという感じもします。
正直に言うと、誘いにくいというか、どうやって誘ったらいいか分からないというか(笑)。

淳哉:
そのために、今年の4月頃に、
ママの会と共同でプレ企画をやりたいなと考えているんです。
これから弁護士会内部での手続を踏まないといけないので、
まだ正式に決まっている訳ではないんですけれど。

潤子:
プレ企画って、どういうものを考えているんですか?

淳哉:
ミニ模擬裁判をするとか、
ママの会@新潟と憲法カフェのコラボ企画として
磯貝さんと女性弁護士のトークイベントをするとか、
具体的にはこれから企画を練りたいと思っています。

水内:
トークイベント、いいですね。
篤子先生とかどうですか?

篤子:
え?私ですか?いやいやいや・・・・(笑)

より魅力ある企画にするために

潤子:
毎日忙しいママたちに来てもらうには、
スイーツがついているとか、有名人が来るとか、
ちょっとした「お楽しみ」があるといいですよね。

イベント終了後に講師の方などと一緒にランチをしたり、お茶をしたりしながら、
参加者同士で感想や意見、それに連絡先を交換する
「シェア会」の時間を設けると喜ばれます。

篤子:
美味しい物だと,デザートビュッフェがテンションあがりますよね。
マクロビスイーツのビュッフェとか。
市内の有名ベーカリー数店からパンを買ってきて,
食べくらべできる,みたいなのもいいですね~。

潤子:
それいいですね~。
メインの企画の他に、プチ講座みたいなものをセットにするのもいいと思います。

篤子:
なるほど~。何か手作りしたりするのありますよね。
美容とかファッション関係のものだったら私も行きたいです(笑)。

SNSの使い方講座とかも意外と需要がありそうですよね。
フェイスブックを使いこなしている方に解説してもらって,
ついでにママの会のfbをフォローしてもらうようにオススメするとか

水内:
次々に面白そうなアイデアが出てきますね~。
協力して楽しいトークイベントにしましょう!

*追記
この話し合いは、この企画に結実しました。