憲法カフェ@上越(敵基地攻撃)


「敵基地攻撃」について

2月23日、地元上越市で憲法カフェの講師をしてきました。

主催してくれたのは、新日本婦人の会上越支部のみなさま。
以前、2019年11月にもお招きいただいたことがあります。

オファーの内容は、「憲法改正問題について、9条を中心にお話を」ということだったのですが、「9条改正」よりも「敵基地攻撃」のお話の方が中心になってしまってもよいですか?というやりとりを経て、準備がスタートしました。

「敵基地攻撃」の問題については、2020年10月に、県弁護士会の主催で柳澤協二さんをお迎えしてオンライン講演会を開催しています。そのときに学んだことを振り返りつつ、雑誌に掲載された論文、パンフレット、新聞の切り抜きなどをまとめ読みして準備しました。

全体の構成

当日お話した内容は、こんな感じ。

敵基地攻撃とは何か

防衛大臣の答弁をもとに、どのような攻撃が想定されているのかを確認。
そのためにどのような装備が必要となるのかを、図を示しながら確認。

なぜ敵基地攻撃が浮上したのか

ゲーム・チェンジャーと言われる極超音速ミサイルの登場が、イージス・アショアの導入断念へとつながった。そしてイージス・アショアの「代替策」として敵基地攻撃が浮上した。

また、中国のミサイル開発に伴うアメリカ軍の戦略の変化と、それを受けた日本に対する要求の変化も背景にある。

法律上の問題

(過去の政府答弁を紹介しながら)政府解釈を前提としても、憲法に違反することを確認。
武力攻撃の「着手」についての判断を誤れば先制攻撃となり、憲法はもちろん国際法にも違反することになること。

防衛政策としての問題

現状の装備ではまったく無理であり、必要な装備を揃えようとすれば莫大な費用がかかる。
莫大な費用を支出して装備を揃えたとしても軍拡競争を招き、かえって安全保障環境は悪化する。
集団的自衛権の行使として敵基地攻撃をする可能性すら排除されておらず、巻き込まれのリスクが高すぎる。

「現実的」に考える

日本は貿易で成り立っている国。輸入も輸出も一番の相手国は中国。食料自給率は際立って低い。
戦争となれば物流がストップし、それだけでも、経済、社会、私たちの生活全般が深刻なダメージを受ける。武力攻撃がなされればさらに甚大な被害が生じることは当然。

戦争は何としても回避すべき。問題はどうやって回避するか。抑止力は様々な要素が複雑に絡み合って作用しうるもの。そもそも効いているかどうかすら確かめる術はなく、どうしたら作用させられるかの判断は極めて困難。そうであるのに抑止が破れたときの破滅的な事態については、無視ないし軽視されがち。

国際法上、安全保障には5つの要素があるとされている。戦争の違法化、紛争の平和的解決、集団安全保障と自衛権、軍縮、そして国際人道法。どれ1つが欠けてもダメで、すべてがバランスよく追求されることが必要。

ASEANでは、様々な紆余曲折を経つつも、平和的な紛争解決のための努力が積み重ねられてきた。いまインド太平洋地域をめぐって、2つの異なる構想が示されている。どちらの構想に理があるか、日本がどういうスタンスで関わっていくべきか、明らかではないか。

INF条約は失効してしまったが、冷戦真っただ中に2つの大国の軍縮を成し遂げた画期的な条約だった。アメリカとロシアだけではなく、中国も巻き込み、規制対象も拡大して締結しなおす方向性が目指されるべき。

おわりに

敵基地攻撃は戦争そのものであり、明らかに憲法に違反する。それを保有し、実行することになれば、9条は完全に死文化してしまう。「憲法を変えるな」という声だけではなく、「憲法を守れ」という声を広げていかなければならない。

岸田総理は、年内に国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画を改訂して、敵基地攻撃能力の保有を正式に決めようとしている。世論調査では、反対よりも賛成が多いが、「わからない」が一番多い。問題点を伝えていくことが大切。

おみやげ

娘へのお土産に、手作りの「うさぎ雛」をいただきました。細部まで丁寧に作りこまれた「うさぎ雛」からは、作ってくださった方の平和を願う強い気持ちが伝わってきました。