司法修習生向け研修
7月27日(水)、司法修習生向けの民事弁護実務研修で、講師を担当しました。司法修習生というのは、司法試験合格後、実務家になる前に研修中の方々です。私が今回担当した研修の内容は、「医療過誤(患者側)」でした。
研修の時間は、12時30分~17時(!)という長丁場。しかも、研修会場は新潟市にある県弁護士会館なので、上越市からだと高速道路を使っても往復4時間はかかります。「控えめに言って苦行」な訳ですが、「講師を任されるのは信頼されているからこそ」「修習時代の恩返し」などと自分に言い聞かせながら準備をして、研修に臨みました。
追体験できるように
自分の修習時代を振り返りますと、貴重な研修をたくさん受けたはずなのですが、ほとんど記憶に残っていません。そこで、実務的な細かい話をするよりも、医療過誤事件のやりがいや醍醐味、魅力などを伝えられる内容にしたいと考えました。
また、経験がないと具体的にイメージすることが難しいので、自分が過去に担当した事件を素材にして、法律相談の事前準備から裁判の終わりまで、手続き全体を追体験できるような構成にすることにしました。全体の流れは↓こんな感じです。
そして、事前に「事案の概要」を配布して、「自分が法律相談を担当する前提で、事前の準備・検討をしてみてください」ということと、「事件を受任した場合に、何をどのように調査するか考えてみてください」ということを事前課題にしました。
双方向で
「休憩時間を除いて4時間も一方的な講義をするのは、聞く方も話す方もしんどいと思うので、できるかぎり双方向でやりとりしながら進めたいと思います。いろいろ問いかけをするので、なんでもいいのでリアクションしてください。」とお願いして、講義をはじめました。
最初は、修習生から自己紹介をしてもらいました。「何でも自由に話してくれていいんですが、この項目は必ず触れてください」とお願いしました。唐突に振られて戸惑う方もいるかも知れないなと思っていたのですが、みなさんしっかり自己紹介されていて感心しました。
図解やグラフなどを使って基本的な概念を説明
医療過誤事件を担当するうえで知っておいた方がよいことや、「医学的機序」「過失」「因果関係」の検討の仕方などについて、図やグラフを使いながら説明しました。
原資料も示しつつ
また、私自身がどのように検討したか、どのような点で迷ったか、訴状にどのように書いたのか、といったことを、原資料を示しながらお話しました。協力医に送った手紙、死亡診断書、訴状、尋問調書、鑑定書なども、個人情報をマスキングしたうえで、実際に使った現物を見てもらいました。
患者側代理人に求められること
おわりに、「患者側代理人に求められること」として、「医療事故被害者の5つの願い」をふまえて、それらにできる限り応えられるように心がけているということをお話しました。
最後に、薬害スモン事件の福岡地裁判決に引用された原告の歌を紹介しました。
被害に遭い自分のことすら自分でできなくなってしまった。そのように「こわれた」身体でも「役に立つ」ことがあるという。被害に遭った自分が訴えることによって、薬害の再発を防止することができる。自分のような被害に遭う人をこれ以上出して欲しくない。こんな悲劇を二度と繰り返して欲しくないから、今日も街頭で訴える。
被害者がご自身の被害を乗り越えて、自分にできること、自分にしかできないことを見出し、薬害の再発防止のために尽力する。崇高な思いが込められた感動的な歌です。
今回話を聞いた修習生の中から、1人でも2人でも、医療過誤事件を担当してくれる人が出てくればうれしいです。