つれづれ語り(お隣さんとの法律関係が変わります)


『上越よみうり』に連載中のコラム、「田中弁護士のつれづれ語り」。

2021年2月17日付に掲載された第103回は、「お隣さんとの法律関係が変わります」です。篤子弁護士が、「相隣関係」に関する法改正案(2023年度の施行を目指しているもの)の内容について、わかりやすくまとめています。

お隣さんとの法律関係が変わります

1 民法・不動産登記法の改正案

所有者不明土地問題の解消策を議論していた法制審議会(法相の諮問機関)が、今月10日、民法や不動産登記法の改正要綱案をまとめ、上川陽子法相に答申しました。政府は今国会で関連法案を成立させ、2023年度の施行を目指しています。

新聞報道などでは、3年以内の相続登記が義務化される点や土地の所有権を手放せる制度(正確には国庫に帰属させる制度)が新設される点などが注目されていますが、実は、それ以外にも改正点は多岐にわたります。そこで、何度かにわたり、改正点の内容をご紹介します(より詳しい解説は当事務所のホームページをご覧ください。)

まず、今回は、「相隣関係」と呼ばれる、隣接する土地の間の法律関係に関する改正です。

2 隣地使用権についての改正ポイント

隣地との境界付近で工事をする際、測量や資材の搬入等で隣地の使用が必要となる場合があります。その場合、どの範囲で隣地使用が認められるのか現行の民法では曖昧な点があり、工事をする場合には念のため隣地所有者の承諾を得るか、承諾に代わる判決を得る必要がありました。隣地所有者が所在不明等の場合には大変な時間と労力です。

改正案では、境界付近での工事や測量の際には、これに必要な範囲で隣地の使用ができることが明文化されました(ただし、住家への立ち入りには居住者の承諾が必要です)。お隣さんにとって最も損害の少ない方法を選ぶ必要があることや、通知が可能な場合には事前の通知が必要なことなど、その条件も整備されます。逆に言うと、お隣さんが境界付近で工事をする場合、事前の通知があれば、こちらの承諾までは不要になります(ただし、工事で損害を受けた場合には償金請求ができます)。

3 竹木の枝の切除について

隣が空き家等の場合、越境してきた竹木の枝の処理に困ることがあります。現行法では、竹木の所有者に切除を請求できるものの、自ら切除することはできません。空き家など管理不全の不動産が増える中でこれでは困ると指摘されてきました。

改正案では、①竹木の所有者に枝の切除を催告したのに相当期間内に切除されなかった場合、②竹木の所有者が所在不明等の場合、③急迫の事情がある場合には、自ら切除できるようになります。

4 ライフライン敷設のための改正

他人の土地を通らないと電気、ガス、水道などのライフラインが引けない土地を「導管袋地」と言います。導管袋地の所有者が、ライフラインを引くために他人の土地を利用する際、その土地の所有者の承諾が必要かどうかについて、民法には明確な規定がありませんでした。

改正案では、ライフラインの確保に必要な範囲で、他人の土地や導管設備等の使用を認めることとし、その条件についても整備されました。相手にとって最も損害の少ない方法を選ぶこと、事前に通知をすること、損害が生じたときは償金を払うこと、導管設備等を使用する場合は応分のメンテナンス費用を負担すること等々です。逆に言うと、これらの条件を満たしている場合には、ご自身の同意がなくても自分の土地や導管設備等が利用される場合がありますのでご留意ください。


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