県内で10回目
10月18日(金)、上越市立三和中学校で、薬害教育の特別授業をしてきました。
今回の授業は、柏崎第二中学校の先生が、三和中学校の先生に薬害教育のことをお話してくださったことがきっかけで実現しました。新潟県内では4年前から中学生向けに薬害教育の特別授業に取り組んでいて、今回が10回目の授業ということになります。
1コマ目はいつもの形で
今回は、1コマ目(50分)が体育館で2・3年生(85人)向けの講演形式の授業、2コマ目(50分)は教室に移動して3年生向けの授業でした。1コマ目は基本的にこれまでの授業と同じ内容で、以下のような流れでお話しました。
導入部分は弁護士が話しますが、あくまでもメインは被害者(原告)の方のお話です。
今回お話いただいた方は各地で10回近くお話ししていらっしゃいますが、それでも緊張するとおっしゃっていました。
肝炎と診断されたときの気持ち、治療薬の強烈な副作用で苦しめられたこと、娘さんに対する思いなど、原告が語るお話に、生徒さん達は真剣な表情で聞き入っていました。涙ぐんでいる生徒さんもいました。
授業と授業の間の休み時間に校長室で先生とお話しましたが、教頭先生や担当の先生が、「教科書やテキストで読むのと、直接お話を伺うのとではまったく違いますね。本当に貴重な経験をさせていただきました。」「話に引き込まれてあっという間の1時間でした。」と感想を伝えてくださいました。
2コマ目はグループワーク
2コマ目では、6人ずつのグループに分かれて、グループごとに国、製薬企業、医療従事者、(それ以外の)国民の4者のいずれかになってもらい、次の2点について話し合ってもらいました。
- どうして薬害の発生や拡大を防げなかったのか
- どうしたら防げると思うか
その後、グループごとに話し合った結果を発表してもらいました。話し合う時間が15分くらいしかなかったので大変ではないかと思いましたが、どのグループもよく考えられた意見を堂々と発表していて感心しました。
発表後に先生から話を振られて、以下のようなことをお話しました。
- 製薬企業にも競争がありそれに勝ち抜かなければならない。新薬の開発にはお金がかかるためその販売を止めるというのは企業にとっては大きなダメージとなる。
- 早く薬を使えるようにして欲しいという患者の声もある。早期の承認と安全性の確保はなかなか両立が難しい。
- 大きな組織の中で個人の正義感を発揮することの難しさもある。
- 以上のようなことがあるとしても薬害を引き起こしてよいということにはならない。そういう難しさがあることも踏まえて、どうしたら薬害を防ぐことができるかを考えて欲しい。
私がこのようなお話をしたのは、事前に授業内容について担当の先生と打ち合わせる中で、「様々な社会問題を考えるうえでは、立場を異にする複数の他者を前提としながら、それでもなお、普遍的な価値を志向できるかどうかが試されているように思います。生徒には様々なジレンマの中で思考停止に陥ることなく、粘り強く考えていく態度を時間をかけてでも獲得してほしいと思っています。」という思いを伺っていたためです。正論を言って終わりにするのではなく、現実にある様々な事情も踏まえて、問題を解決するために考え行動する力を身につけて欲しいという先生の願いに強く共感しました。
最後に被害者の方から生徒さん達に、話を聞いて真剣に考えてくれたことについてのお礼を伝えたうえで、「いろいろ難しい現実はあるけれども、それでも私は薬害を二度と繰り返して欲しくないと願っています。」との訴えがありました。
熱心な先生に感謝
担当の先生は、大変なご多忙のなか、今回の授業内容について打ち合わせをするために当事務所まで2度にわたって足を運んで下さいました。その間にもメールや電話でのやりとりを重ねました。
授業中に生徒のみなさんに書いてもらった感想文には、授業を通して感じたり考えたりしたことが用紙一杯に綴られていました。連絡帳でもこの授業のことを書いてくれた生徒さんがいたとのことです。充実した授業になったのは、準備に時間と労力を割いて下さった担当の先生によるところが大きいと感じています。
報道
上越タイムスの記者さんが、台風被害の取材などで忙しい時間の合間を縫って取材に来てくれました。2019年10月21日付朝刊に写真入りの記事が載りましたので貼り付けます。