小泉元総理の「原発ゼロ」発言


1 各種メディアが取り上げ

小泉純一郎元総理が、脱原発への転換を表明していることが話題になっています。

新聞、週刊誌、テレビが次々と取り上げ、ネット上でも賛否両論の議論が展開されています。菅元総理や生活の党の小沢一郎代表が歓迎のコメントをし、昨日は国会質問でも取り上げられました。また、海外メディアも注目しているようで、「ニューヨーク・タイムズ」や「ウォール・ストリート・ジャーナル」が、小泉元総理の発言を取り上げています(海外メディアの報道を紹介する記事)。

2 毎日新聞の記事

小泉純一郎元総理の「脱原発」発言が、最初にまとまった形でメディアに載ったのは、今年8月26日付毎日新聞の「風知草:小泉純一郎の原発ゼロ」ではないかと思います。以下、抜粋を引用します。

「オレの今までの人生経験から言うとね、重要な問題ってのは、10人いて3人が賛成すれば、2人は反対で、後の5人は『どっちでもいい』というようなケースが多いんだよ」
「いま、オレが現役に戻って、態度未定の国会議員を説得するとしてね、『原発は必要』という線でまとめる自信はない。今回いろいろ見て、『原発ゼロ』という方向なら説得できると思ったな。ますますその自信が深まったよ」
というのが、脱原発のドイツと、フィンランドの核廃棄物最終処分場「オンカロ」を見学する視察ツアーの道中でのやりとり。

以下は、帰国した小泉純一郎元総理に山田孝男記者が尋ねた際のやりとり。
--どう見ました?
「10万年だよ。300年後に考える(見直す)っていうんだけど、みんな死んでるよ。日本の場合、そもそも捨て場所がない。原発ゼロしかないよ」
--今すぐゼロは暴論という声が優勢ですが。
「逆だよ、逆。今ゼロという方針を打ち出さないと将来ゼロにするのは難しいんだよ。野党はみんな原発ゼロに賛成だ。総理が決断すりゃできる。あとは知恵者が知恵を出す」

3 原発の根本的欠陥

小泉純一郎元総理が言っていることは、単純明快で、「原発の使用済み核燃料を安全に処分する方法が確立されていないから、原発は辞めるべきだ」というものです。

これは、原子力発電が抱えるもっとも根本的な欠陥であり、人類はこの問題に対する解決策を見いだすことができていません。小泉元総理が視察した最終処分場「オンカロ」も地中深く埋めてしまうことで問題を先送りするだけ。「無害化」できるのは10万年先なので、その間の安全を保証することは誰にもできるわけがないのです。

「トイレなきマンション」はだめだということで、原発に反対する人々が何十年も前から言い続けていたことなのですが、社会的影響力のある人が言うとこんなにも違うものかと感じます。
もちろん、小泉純一郎元総理1人が言っていてもこれだけ話題になるはずもなく、その背後には多くの国民の思いや行動があるわけですが、それを読んでワンフレーズで発信する手法には、小泉純一郎元総理ならではのものがあると思います。

4 無責任きわまりない安倍総理

小泉純一郎元総理は「現役」時代には、「原子力政策大綱」を閣議決定し(2005年10月)、
原子力立国計画を策定するなど(2006年6月)、原発推進政策をとっていました。

しかし、福島第一原発事故をきっかけにして、原発に対する考え方が変わっていったようです。

それと比べると、安倍総理は事故から何も学んでいないご様子。
アベノミクスの「成長戦略」に原発政策を盛り込んで再稼働を積極的に推進し、「日本の原発は世界最高水準」と称し自ら主導して海外に原発輸出を売り込む。汚染水を管理できていないことは誰の目にも明らかなのに「コントロールされている」「完全にブロックされている」と強弁してはばからない。

このままでは日本に対する国際的な信用が地に墜ちるのは間違いないでしょう。