『上越よみうり』に連載中のコラム、「田中弁護士のつれづれ語り」。
2020年10月28日付に掲載された第95回は、「空き家問題のパンフレットを作りました」です。篤子弁護士が、自身もかかわって作った新潟県弁護士会の空き家問題パンフレットについて、わかりやすく紹介しています。
1 弁護士会で作成
上越市でも全国でも、空き家問題が深刻化、顕在化してきていますが、新潟県弁護士会では、このたび、空き家問題と弁護士の果たす役割について解説したパンフレット「空き家問題・予防と解決Q&A」を作成しました。
2 空き家問題解決に必要なこと
空き家問題と一口に言っても,解決のためには様々な課題をクリアする必要があります。その中には,売れるかどうかという純粋な不動産流通の問題や,建て替えやリフォームが可能かといった建築の問題,空き家をどう管理していけばよいのかという維持・メンテナンスの問題の他にも,法律,税務,登記,福祉,金融など,様々な分野にわたる課題解決が必要な場合があります。
そのため,空き家問題の全般的な基礎知識をもった自治体の相談員を中心に,各分野の専門家が密接に結びつく形で,連携協力関係を築いていくことが欠かせないと言われています。近く到来すると言われている大量相続時代の前に,上越地域でも上記体制を構築しておかなければならないと常々感じています。
3 弁護士の敷居を下げるために
ところが,法律や相続を取り扱う専門家というのは,弁護士のほかに,税理士,司法書士,行政書士などがおり,それぞれの活動フィールドは異なるものの,具体的に何がどう違うのかというのは,一般の方にはなかなか見えにくい部分がありました。また,日本には,「裁判沙汰になると世間体が悪い」という偏見が色濃く残っているためか,弁護士への相談をためらう傾向も見られます。これまで,「どういう場合に弁護士に相談したらいいのか分からない」という声も多く聞いてきました。
そこで、連携協力体制づくりの第一歩として,どういったケースで弁護士の介入が必要なのか、弁護士に相談した場合にどのような対応が可能なのかについて、わかりやすくまとめたものが必要だと思い、パンフレットを作成することにしたのです。
4 パンフレットの概要
事例別Q&Aの中では,自宅が将来空き家になることを心配している高齢の親(CASE1)、空き家を相続した相続人(CASE2)、親が施設に入所し実家が空き家になることを心配している子(CASE3)、借地上の家が空き家となり地代が入金されずに困っている地主(CASE4)、隣家や近所の家が空き家で困っている近隣住民(CASE5,6)など、立場の違いごとに、よくある典型的な悩み事について、解決策と弁護士に依頼できる内容がコンパクトに記載されています。
また,紙面の都合上、Q&Aでは代表的な事例しか取り上げられませんでしたので、それとは別に、弁護士の介入が必要なのはどのような場面かを整理したページも設けました。色々な分類があるとは思いますが、パンフレットでは、①所有者の確定に課題のあるケース(所有者が行方不明、相続人が不存在の場合なども含む)、②共有者間の意見が一致しないケース、③所有者の判断能力に課題のあるケース、④所有者に対する強制的措置が必要となるケースに分けています。他分野の専門家に相談したけれど,なかなか話が先に進まない場合,上記のどれかに当てはまる可能性があります。このパンフレットを参考に,弁護士への相談を検討してみてはいかがでしょうか。相談先や相談方法は,パンフレットに詳しく記載されています。
このパンフレットは,当事務所のHPあるいは新潟県弁護士会のHPにPDFデータが掲載されており,ダウンロードが可能です。また,パンフレットの冊子本体は,市役所等を中心に,配布・設置のご協力をお願いしているところです。まとまった部数が必要な方や配布・設置にご協力いただける方は,新潟県弁護士会(空き家・空き地相談センター。025-222-5533。)もしくは当事務所までご連絡下さい。
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