つれづれ語り(時代は次のステージへ)


『上越よみうり』に連載中のコラム、「田中弁護士のつれづれ語り」。

2019年7月24日付に掲載された第64回は、「時代は次のステージへ」です。
生活のなかで自然に政治や選挙に興味が持てる環境づくり、多面体折り紙のような議論が行われる国会、AIと憲法、、、新しい時代にふさわしく変えていくべきことがたくさんありますね。

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時代は次のステージへ

1 選挙の夜 

第25回参議院議員選挙は、48.80%という戦後2番目の投票率の低さを記録して幕を閉じました。そんな世間の関心の低さなどお構いなしに、我が家では選挙特番を前に家族中で大盛り上がり。「明日は学校だから早く寝なさい」といくら言っても、子どもたちは「パパとママだけテレビ観て盛り上がって楽しそうでずるい。」とテレビの前から離れようとせず、「どっち応援してるよの?こっち?あ!負けた!くっそ~!!」と盛り上がっていました。私としては夫の解説を聞きながら、ゆっくりと観たかったのですが・・・・。子どもというのは、内容は分からずとも、親の関心の高いものは一緒に観たいし、親が盛り上がっていたら一緒に盛り上がりたいのですね。よく「若い世代は選挙に関心がない」と言われ、主権者教育の充実などが叫ばれていますが、親世代がもっと関心をもって、選挙を盛り上げていけば、そんなものは必要ないのかもしれないと、我が子たちを見ていて感じました。

2 新しい時代に相応しい国会を

さて、選挙の結果、いわゆる改憲勢力の議席は憲法改正に必要な3分の2議席を割り込みました。これを境に、2015年の安保法制のころから続いてきた改憲騒動にも一区切りつけ、今後は、財政赤字、年金、少子化、格差など足元の問題について、知恵を出し合い、解決への道筋をつけるために全精力を傾けてほしいと願う国民は私だけではないと思います。

ところで、少し話は飛びますが、私は、最近、多面体折り紙にはまっています。折り紙のピースを組み合わせてくす玉などを作るアレです。平面の状態では決して組み合わせることのできないと思われた折り紙が、空気を入れて形状を立体にすることで見事に組み合わさりキレイな多面体を構成したときには「あっ」となり、毎回感動します。

前記のような国内の重要課題の多くも、問題を平面的に捉えるのではなく、社会全体の課題の中で立体的に位置づける必要があると感じます。少子化問題と労働問題、セイフティーネットの問題と空き家問題、地方創生と所有者不明土地問題、脱プラスチック政策と森林政策など、1つ1つを切り離し、独立した問題として平面的に考えていると解決が困難と思われることでも、複数の問題を関連づけ、立体的・複合的に捉えることによって、全体をまとめて解決できることがあります。全体としてきれいな多面体に仕上げることをイメージしながら個々の政策を見直していくことで、「あっ」と驚くような解決策が見つかるかもしれません。平面的な主張のぶつけ合いとは一線を画した議論を、新しい国会には期待したいです。

3 AIと憲法

一線を画した議論と言えば、新潟県弁護士会では、11月9日午後2時から新潟大学中央図書館ライブラリーホールにて山本龍彦慶応義塾大学教授による「AIと憲法」についての講演会を計画しています。「強い人間」が「弱い人間」を虫ケラや家畜のように踏みにじっていた時代を変えたのが人権思想や立憲主義です。では、新しく強い知性であるAI(人工知能)が生まれ、それらが人間を評価、選別し、重要な決定や命令を下すようになったとき、それによって人生を踏みにじられる新たな「弱い人間」が生まれるおそれはないのか。人と人の関係を律する「憲法」によってAIと人の関係もコントロールしていこうという新しい試みが静かに始まっています。新しい憲法論について興味のある方は、ぜひ講演会に足をお運びください。