『上越よみうり』に連載中のコラム、「田中弁護士のつれづれ語り」。
2018年7月18日付に掲載された第38回は、プール・水遊びの事故防止についてです。救えるはずの命を失うことのないように、ガイドラインや通達などに目を通しておくことが必要ですね。
プール・水遊びが始まりました
今年も、保育園や幼稚園、小学校などでプールや水遊びが始まりました。夏の暑い盛りの時期は熱中症が心配で外遊びにも慎重になるため、プール遊びは貴重な運動の機会。子どもたちも大好きな遊びですね。母親としては、プール遊びをした日の夜はぐっすりと眠ってくれるのもありがたいです。
しかし、全国をみると、保育園や幼稚園では毎年のようにプールや水遊び中の重大事故が発生しているという事実もあります。保育・幼稚園関係者のみなさんには、その危険性を再認識し、安全に楽しくプール遊びや水遊びを行える環境作りを継続していただきたいと思います。
重大事故の例をみると、平成26年7月に京都市の認可保育園で4歳の子どもが水深約25センチのプールで水遊び中に溺れ、低酸素脳症で死亡したという痛ましい事故が起きています。子どもは数十センチの水深でも溺れることがあるということを再認識し、水深が浅いからといって油断して水遊びの監視を怠ることのないよう十分注意する必要があります。
また、事故の防止には、職員個人の努力に任せるだけではなく、施設(事業責任者)として十分な監視体制を構築しておくことも大切です。
事故防止については、内閣府・厚生労働省・文部科学省による「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」(平成28年3月31日)や、厚生労働省の通知「保育所、地域型保育事業及び認可外保育施設においてプール活動・水遊びを行う場合の事故の防止について」(平成29年6月16日)などに具体例が示されています。
例えば、監視業務と指導業務の役割分担をして監視に専従する者を指定し、
①監視者は監視に専念する、
②監視エリア全域をくまなく監視する、
③動かない子どもや不自然な動きをしている子どもを見つける、
④規則的に目線を動かしながら監視する、
⑤十分な監視体制の確保ができない場合はプール活動の中止も検討する、
⑥時間的余裕をもってプール活動を行うなどの監視の際のポイントについて,
職員に事前に十分な教育を行うことなどが求められています。
重大事故が起きたケースでは、こういった監視体制が不十分だったことに加え、事故後の対応が不十分で、迅速な救命措置が行えなかったことなども問題となっています。万が一子どもの重大事故が発生した場合に、職員が迅速で適切な対応ができるよう、普段から事故シュミレーションを実施して、事故後の対応を練習しておくことが有用です。
言うまでもありませんが、子どもたちのプール活動において、保育関係者のみなさんは、その安全を管理して事故を防止する法的責任を負っており、これを怠れば、損害賠償責任や刑事責任を追及される立場にあります。
子どもたちの笑顔を守り、そこで働く職員のみなさんが安心して働くことができるように、安全管理に関してこれまで国や地方自治体から示された通達やガイドラインを保育にあまり反映させてこなかった施設管理者の方々には、今一度、上記ガイドラインや通達等を再確認し、職員間で情報共有の上、対策を講じていただきたいと思います。