『上越よみうり』に連載中のコラム「田中弁護士のつれづれ語り」。
1月24日付に掲載された第27回は、柏崎刈羽原発の現状と今後について、です。
今後、東京電力や国は、再稼働に向けて、なりふり構わない感じになっていくと思われるので、それに振り回されないためにも、どんな課題や問題があるのかを具体的に認識しておくことが大切ではないかと思います。
なお、規制委員会の審査手続については、以前のブログ記事でわりと詳しく書いているので、そちらもあわせてお読みいただければと思います。
柏崎刈羽原発の現状と今後
今回は、気になる柏崎刈羽原発の現状と今後について、篤子弁護士との会話形式でお届けします。
篤子:柏崎刈羽原発の審査が終わったの?
淳哉:去年の年末に、7つある原子炉のうち6号機と7号機について、規制基準に適合するという「審査書」が正式決定されたね。
篤子:じゃあもうすぐ再稼働するの?
淳哉:今回の決定は、安全対策の基本的な方針が了承されたということ。
この後、建物や設備・機器などの詳細な仕様が書かれた「工事計画」や、運転管理上のルールにあたる「保安規定」についても認可を得る必要がある。工事完了後には、設備や機器の性能を現地で確認する「使用前検査」が行われる。これらの手続きが年内にすべて終了する可能性もあると言われているよ。
篤子:今年中に再稼働することになるの?
淳哉:再稼働には、地元自治体の同意も必要とされている。米山知事は、原発事故、避難計画、健康や生活への影響という3つの検証が終わらない限り、再稼働の議論は始められないと言っている。これらの検証が終わるまで2~3年はかかるとされているから、再稼働するとしてもその後になると思うよ。
篤子:安全性について問題はないの?
淳哉:審査に合格したからといって、絶対的な安全を保障するものではないよ。
規制基準では、柏崎刈羽原発のように複数の原子炉が集中していることに伴う危険性は考慮されていないし、避難計画の有無や内容が審査対象になっていないという問題もある。
こういう根本的な問題以外にも、審査の過程で安全性に関わる問題点がいくつも指摘されているよ。
①活断層や中越沖地震の影響が考慮されていない
地質学者は、火山灰層の組成成分分析結果に基づき、敷地直下を通る断層が活断層である可能性を指摘している。もし活断層だとすれば規制基準に適合しないことになるはずだけど、この指摘は事実上無視されてしまった。
また、原子炉を含む諸設備が、中越沖地震によりダメージを受けて強度が低下していることが考慮されていないという問題も指摘されている。
②免震重要棟や防潮堤の耐震不足
免震重要棟は、中越沖地震の際に現地対策本部となるべき建物が損傷してしまった経験を踏まえて、「免震」機能を備えた建物として設置された。でも改めて解析したところ、耐震性が不足していて、7パターンある基準地震動のすべてで建物が損傷してしまう可能性のあることがわかったんだ。
防潮堤についても、再解析の結果、液状化対策が不十分で、大地震の際に傾むいてしまうおそれのあることが判明した。このため、想定される津波よりも低い敷地面に建てられている1~4号機の原子炉建屋や免震重要棟は、津波により浸水する可能性があることになる。
③緊急退避所の問題点
重大事故が起こったときに現地対策本部がおかれる緊急退避所についても、
十分なスペースが確保できないとか、6、7号機に近接し過ぎていて安全に作業することができないのではないかといった問題が指摘されている。
④基本的な不備
安全上重要なケーブル数千本が規格外のものであることや、原子炉建屋を含む複数の建物内に建築基準法違反の貫通部が数十箇所あることなども明らかになっている。
災害時には、こういう不備が事故を拡大する原因になりうるから見過ごせないよね。
⑤組織としての問題
免震重要棟が7パターンの基準地震動すべてで耐えられないというデータは、2014年4月時点で得られていたんだ。それなのに、2017年2月まで「7つのうち5つの揺れに耐えられない」という誤った説明をしていた。
東京電力は、内部の連絡不足が原因と言っているけど、解析結果が約3年もの間伝わっていなかったというのは、組織としてかなり問題があるよね。
篤子:ほんとにいろんな指摘がされているのね。
淳哉:みんなの命や生活にも関わる問題だから、原発自体には賛成という人も含めて、注視していく必要があると思うよ。