つれづれ語り(講師活動)


『上越よみうり』に連載中のコラム、「田中弁護士のつれづれ語り」。
9月13日付朝刊に掲載された、第18回は講師活動についてです。

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講師は人の為ならず

1 講師をしてきました

先日の日曜日,柏崎刈羽9条の会からの依頼で,「安倍改憲を考える」というテーマの学習会の講師を務めてきました。1か月以上前からオファーを頂いていたにも関わらず,仕事や育児,家事に追われてなかなか準備ができなかったことに加え,直前になって北朝鮮の核ミサイル問題が急沸騰して論点が増えたこともあり,ここ数日,この学習会の準備にかなりのエネルギーを費やしてきました。

・・・・つまり,現在,ややエネルギー切れの状態で,このコラムの原稿を書いている,ということです。そんなわけで,今回は,この学習会の準備をしながら頭に浮かんだ様々なよしなし事を,そこはかとなく書きつくることにしました。

2 準備で得られるもの

「学習会の講師をする」という強制力が働くと,普段はとても読めないような分量の文献や資料に目を通せるものだな,とあらためて実感しました。と言っても,集めた資料の3分の1程度しか読み込めませんでしたが,それでも普段と比べればなかなかの量です。

憲法論,改憲論などについては,いわゆる護憲派・改憲派双方のものを読みましたし,安全保障政策,平和構築学,交渉学などにも目を通しました。「わかりやすく話す」ということではプレゼンテーションの方法論なども学びました。

と,これだけ書くと,さぞやすごい学習会だったのではと誤解されそうですが,「たかが数週間これらをざっと読んだだけで,それを1時間程度の学習会にすべて生かせるわけがないじゃないですか。」と,誤解は解いておきたいと思います。学習会に参加した方が当コラムを読んでいるかもしれないので,念のため。

3 いつかやってみたい

改憲を主張されている方々の論文などをじっくり読むと,「気持ちは分かる。それは私も一緒ですよ。」という部分もあれば,「いや,それは誤解だと思いますよ。」という部分もあり,思わず筆者に手紙を送ってしまいたくなります。というか,民事訴訟における「争点整理」をした上で,「この点についてはどうご主張されるのでしょうか?」という「釈明権行使」をしたくなってしまいます。この「議論をかみ合わせたい!!」という衝動は,元裁判官の性なのでしょうか。ぜひ実際に取り組んでみたいと思うのですが,今は育児・家事があるから手が回らなくてねぇ,というずるい言い訳でこの話は終わりにしたいと思います。

4 北朝鮮問題解決のヒント?

交渉学の本を読んだのは,北朝鮮問題解決の糸口になるのは「交渉」しかありえないにもかかわらず,「どのような交渉が望ましいか」について,まったく展望が見えないからです。考えを巡らせるうちに,「そもそも交渉とはなんぞや」に遡って考える必要があるなと思い,自宅にある本を手に取ったのでした。参考になったのは,交渉学の一般論として,「圧力・脅し・攻撃を手段とするパワープレー型の交渉スタイル」から,「主張と対話(対立と相違の理解),価値理解をベースとする適切な自己主張型(アサーティブネス)の交渉スタイル」への転換が必要だという点です。そのための方法論なども非常に勉強になり,これは憲法論議にも通じる話だなと感じました。

おっ,ここから発展していい話が書けそうだぞ,と思ったところで規定の文字数を越えてしまったので,残念ですが(狙いどおり?)今回のコラムはここまで。続きはまたの機会に。