つれづれ語り(水難事故)


『上越よみうり』に連載中の「田中弁護士のつれづれ語り」。
8月16日付朝刊に掲載された第16回は、水難事故についてです。

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海遊びに行く前に

子ども用ライフジャケットを購入しました

夏休み期間中,子どもたちを連れて,海水浴や川遊びなど,自然の中でのレジャーを楽しむご家庭も多いと思います。私たち家族も,先日,子どもたち3人を連れて海水浴に行ってきました。
その準備の際,夫から,「子どもが3人もいれば,誰かから目を離すこともありそうだし,ライフジャケットを購入した方がいいのでは。」と提案され,初めて子供用ライフジャケットを購入しました。みなさんのご家庭では,海遊びの際,子どもにライフジャケットを着用させていますか?

毎年,海や川で多くの子どもの命が失われている

日本では,毎年300人以上の子ども(0~14歳)が,不慮の事故で亡くなっています。この中でも,水に溺れて亡くなる溺水事故は,2010年から2014年までの5年間で450件以上発生しており,そのうち,海や川などで溺れて亡くなる事故は202件発生しています。
上越市でも,2014年5月に,上下浜の海岸で,波打ち際で遊んでいた子ども3人が波にさらわれ,助けに向かった大人2人も溺れ,5人全員が死亡するというショッキングな事故が起こりました。海や川での事故は,決して他人事ではありません。

子どもを守るために注意すること

海や川での事故を防ぐためには,
①天候の変化や海・川の状態に注意し,悪天候時や悪天候が予想される時には海や川に行かないようにする,
②遊泳区域以外の場所に行かないほか,転落等のおそれがある場所,水温の変化や水流の激しい場所,深みのある場所,藻が繁茂している場所など,子どもにとって危険な場所がないか事前に確認し,危険な場所に子どもを行かせないようにする,
③子どもだけで遊ばせず,必ず大人が付き添って,子どもから目を離さないようにする,
④幼児や泳げない学童には,必ずライフジャケットを着用させる,
⑤万一,事故が起こったときの連絡手段を確保するため,携帯電話を防水パックに入れて携行することなどが推奨されています。

ライフジャケットを着用しよう

このうち着目したいのは,子どもにライフジャケットを着用させることです。「浅瀬で遊ぶだけだし,浮き輪で十分でしょ?」と思うかもしれませんが,浮き輪は大きな波が来たときなどに身体から外れてしまうことがあります。また,子どもは小さな波にも足をすくわれることがあり,浅瀬で溺れることも珍しくありません。命を守るのに浮き輪だけでは不十分なのです。
また,ライフジャケットを着用している時と未着用時では,事故の結果が大きく変わってきます。国土交通省海事局によれば,海中転落時に,ライフジャケットを着用していた場合の生存率は85%,死亡率は15%なのに対し,ライフジャケット未着用の場合は生存率31%,死亡率69%になるとの結果が出ています。万が一の事故の際も,ライフジャケット着用の有無で,生存率・死亡率が大きく異なるのです。

子どもたちに安心して遊んでもらうためにも,楽しい夏のレジャーで悲劇を生まないためにも,ライフジャケットの着用を心がけたいですね。