つれづれ語り(保育事故)


「上越よみうり」に連載中のコラム、「田中弁護士のつれづれ語り」。
本日付朝刊に掲載された第10回目は、保育事故についてです。

クリックで拡大表示します。

クリックで拡大表示します。

子どもが保育園や幼稚園でケガをしたら?

待機児童解消のために規制緩和が進められる一方,保育園等での事故が後を絶ちません。今月12日の内閣府の発表では,昨年1年間で,全国で875件の重大事故の報告があり,うち13件は死亡事故でした。

もし子どもが保育園等でケガをした場合,親としてはどう対応すべきでしょうか。

1 前提として

子どもはさまざまな経験を通じて成長するものです。子ども同士のケンカや少し冒険的な遊びも,子どもの成長には欠かせません。小さなケガであれば神経質にならずに見守るという姿勢も大切です。もっとも,重大なケガや後遺症が心配されるようなケースでは,親の毅然とした対応が重要になってきます。

2 まずは,事実関係の確認

まずは,ケガの原因を把握するため,ケガをした状況を含めた事実関係をなるべく具体的に聴き取ることが大切です。お子さんがある程度大きい場合は直接話を聴くこともできますが,3歳未満児の場合などは,まず担任の先生等から,場合によっては,ケガをした状況を直接見た先生等から,詳しく話を聴き取ります。

3 つぎに,原因の検証と再発防止策の検討

その上で,ケガの原因をどのように捉え,それに応じた再発防止策をどのように講じるつもりなのかを聴き取ります。原因が個々の職員のヒューマンエラーなのか,園に組織としての問題があるのかによって,講じるべき再発防止策も異なりますので,そこを意識して聴き取ることが大切です。

この段階になると,担任の先生等の他に,園長や市の保育課に話を聴くということも必要になってくる場合があります。

4 そして,賠償

重大事故により,治療費や通院交通費などの損害が生じたり,お子さんに後遺症が残ってしまった場合などは,損害賠償の請求を検討されると思います。賠償については保険で対応するのが基本ですが,保険がおりない場合や,保険金額に不満がある場合,保険金(賠償限度額)を超える損害が生じている場合には,別途交渉や裁判によって解決することになります。この段階では,弁護士に相談することをオススメします。

5 コミュニケーションの基本スタンス

大切な我が子がケガをしたのですから,保育園を責めたり,謝罪を求めたくなるのは親として自然なことです。しかし,あまり早い時期から保育園と敵対関係になることは,スムーズな情報公開や意見交換の妨げとなるため,大人の対応を心がけたいものです。できれば,信頼関係を深めながら,よりより解決策,事故の再発防止策を一緒に検討できる関係になりたいですね。

ご自身では感情的になってしまうという場合には,早めに弁護士に相談し,園との交渉を委ねることも検討されるとよいでしょう。