後編は2つの柱で
11月27日(水),上越総合技術高校で主権者教育の特別授業をしてきました。1週間前の授業の後編です。
全体の流れはこんな感じ。
1つの柱は、「投票先を選ぶときにどんなことをどんな風に考えたらいいか」という点について、模擬選挙を題材にお話するもので、もう1つの柱は「自分と違う意見の人とどんな風にやりとりしたらいいか」ということをお話するものにしました。
投票先を選ぶにあたって
何か正解のようなものがある訳ではないし、どのように選ばないといけないというような決まりがある訳でもない。ただ、実際に投票した後で「自分が思ってたのと違った」となってしまうのは残念なので、参考までに私なりの見方をお話したい。
各候補の公約・政策について
公約の内容とともに、候補者の経験や能力も重要な判断要素になる。
子育て候補は、子育て経験も議員経験もある。
不公平という批判もあったが、経済的にゆとりのある家庭の子どもとそうでない家庭の子どもの不公平を解消するための政策。少子化・人口減少が進む今の状況からすると、子育て支援策は子どもがいる世帯にとってしか意味がないものとは言えないのではないか。
高齢者候補は、見方によっては一番経験豊富。
コミュニティバスの拡充は高齢者だけを対象にした政策ではない。老人ホームについても同様で、施設に入れなければ在宅介護という重い負担が現役世代にのしかかることになる。介護離職をせざるを得ないケースが出てくれば社会全体にとっても大きな問題。
若者候補は、経験・能力とも未知数。
上越市の人口規模・経済規模に照らしてショッピングモール誘致に現実性があるか、スポーツセンターの建設費・維持費を捻出し続けることが可能なのかなど、聞いてみたいことがたくさんある。
実際に選挙をやったらどうなるか
もちろん「やってみなければわからない」が、人口分布や世代別投票率からすると、高齢者の世代が投票する候補が圧倒的に有利。
この数字を見たうえで、選挙で勝つためにどういう戦略を採るかといえば、やはり一番投票に行く人が多い高齢者世代をターゲットに据えることになるだろう。
「選挙なんか行っても意味ないんじゃない?」という人もいるが、実際はその逆。
「選挙に行かないと自分達の方を向いてもらうことはできない」。
選挙(で勝つこと)がすべてではない
でもすぐに投票率を上げることは難しい。世代別人口の差も考えると多少投票率が上がったくらいでは勝てない。ではどうしたらいいか。
今回の「市長選挙」の様に当選者が一人という選挙ばかりではない。複数の当選者が出る議員選挙等の場合には、自分達の要求を実現してくれる議員をどれだけ多く選出できるかが勝負になる。今年の参議院選挙では車イスを使用する障害者が当選したことで、国会のバリアフリー化が一気に進んだ。900万人以上いると言われる障害者からすれば、自分達の代表を国会に送り込むことで大きな成果を勝ち取ったという見方もできる。
また、選挙には問題を顕在化したり、政策を形成する機能もあるから、ゼロ(落選)か100(当選)かではない。
自分と違う意見の人とどう関わるか
調整のパターン
意見の異なる二人が話し合いをした場合にどうなるか、いろいろなパターンがありうる。
対話を通じてお互いの理解が深まったり(A+、B+)、それまでは思いつかなかった新しい発想が浮かんだり(C)するのが望ましい。
現実社会の様々な問題が私たちに求めていること
国内では、人口減少、財政赤字。世界では、一方に8億人を超える飢餓人口、もう一方に超富裕層。増え続ける軍事費。温暖化の進行と異常気象等々。
こういう問題に対して無関心でいることはできても、無関係でいることはできない。人口減少、財政赤字、異常気象のすべてから逃れることは不可能。どうせ無関係でいられないのなら、関心を持ち、よく知ったうえでどう対応すべきかを考えた方がよいのではないか。たとえ話になるが、沈みゆく船に乗っているときに「この船が沈むかどうかについて興味ない」と言うのはおかしい。
実際にも、「誰かに任せておけば大丈夫」、「専門家にやってもらえばいい」、というような問題ではなくなっている。意見の違いや対立を乗り越えて、みんなで知恵を出し合わないと解決できない。
これから先必要になるのは、専門的な知識や技術とともに、意見が異なる人との対立や分断を乗り越え、対話を通じて『よりよい答え』を一緒に見つけていく力、すなわち対話力だと思う。
対話の際の注意点
自分と違う意見の人と対話をするときには順序や心構えが大切。
相手の話をよく聞いて、自分と相手の共通点を探す。見つけた共通点は相手と共有することが大切(「この点についてはあなたとまったく同じ考えです」)。そのうえで意見(結論)が違う理由を考える。このことにより、相手の意見についても、自分の意見についても、テーマとなっている事柄それ自体についても、理解が深まる。最後に自分の考えを伝える。 そしてまた相手の話を聞く。
出前授業をする際に求められること~リカバリー能力
・・・という感じでお話したのですが、冒頭の、「模擬選挙の候補者についてコメントしている部分」で眠そうな顔をする生徒がではじめ、徐々に頭が下がる生徒さんがちらほら。
話をしながら、「あ~、これダメか。こういう話だと眠くなっちゃうか。」「やっぱりクイズ形式にしとけばよかった」などと思ったのですが、もともと時間いっぱいギリギリで話す内容を用意していたこともあって、どのように切り替えたものか迷ってしまい、咄嗟のアドリブができずじまいでした。フィギュアスケートでジャンプをミスした選手が後の方に飛ぶジャンプを連続ジャンプに切り替えてリカバリーすることがありますが、ああいうことが出来るようにならないといかんなと反省しました。
汎用性が高くて即効性のある「目覚ましネタ」を身につけたいと思います。
生徒さん達の感想*12月4日付追記
生徒さん達の感想が届いたので追記します。話したことがしっかり伝わっていることがわかり、ほっとしました。
対話に関するもの
「対話の話がわかりやすかった。」
「教わった対話の仕方を心がけて、意見が違う人と対話できるようにしたい。」
「対話の4つのポイントがしっかりわかってよかったです。実際に普段の生活で使えたらいいなと思いました。」
「異なる意見の人とたくさん話して、違う意見に辿り着いたり、そのテーマについての理解をさらに深められるようになりたい。共通点を探して共有することと、意見が違う理由を考えることが大切だとわかった。」
「しっかり意見交換すれば意見が違う人とも分かり合えるようになるのかなと思った。」
「対話をする中で意見が違う理由を考えることが大切だと知って、私も考えてみようと思いました。」
「相手と意見が違う理由を考えるというのが一番すごいと感じました。」
「たくさんの視点からの考え方や捉え方があるので、柔らかい対応・対話の仕方が大切だと思った。」
講演で取り上げた社会問題に関するもの
「時事的な内容も取り入れられていて面白かったので体育館が寒くなければまた聞きたいです。」
「この内容を学ぶには時間が短すぎると思った。今日のお話は人生において重要だと思うので、もっと詳しくやって欲しい。」
「選挙の話だけではなく、様々な社会問題などについても分かって面白かったです。相手の意見をしっかり聞く大切さもわかりました。」
「借金時計、人口減少の影響、世界の飢餓人口と格差の拡大など、いろいろな問題に対して興味がでてきた。」
「将来について勉強になることが多かったです。難しい内容をかみ砕いて説明してもらえたのでとてもわかりやすかったです。」
「無関心と無関係は違うという話が印象に残りました。」
その他(おもしろかった、わかりやすかった)
「弁護士はマジメな人というイメージが強かったけど、おもしろい人だとわかった。」
「今回の講演も前回の投票体験もとても楽しくできて、よかったです。」
「分かりやすいお話で色々よく考えることができました。」「とてもわかりやすくてよかった。」「説明が分かりやすかった。」「とても分かりやすかったです。」「分かりやすい内容で聞きやすかった。」等々。
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