予想を大きく上回る参加
2月26日(木)、地元の上越市で憲法カフェをしました。オファーして下さったのは、これまでに何度も主催してくれている「未来へたねまき隊」のみなさん。
選挙結果を踏まえて、今後、憲法に関わる問題がどのようになっていくのか話して欲しいというご要望を受け、あれこれ悩みながら準備して、最終的に以下のような構成でお話することにしました。

開催が決まったのが直前だったこともあり、参加者はあまり多くないかなと思っていたのですが、(私の)想定を大きく上回る25人もの方が参加してくださいました。しかも大半が初参加の方という、とても広がりのある企画になりました。
お子さん連れ・赤ちゃん連れの方、地方議会議員の方、元教員・現役の教員、中学生、国政選挙の候補者だった方など、階層も様々。新潟市から遠路はるばるご参加くださった方もいらっしゃいました。主催者の方々のがんばりと、参加されたみなさんの関心の高さを感じました。

お話したことの概要
選挙結果について
議席と得票
自民党が単独で3分の2を超える議席を得て圧勝。ただ、得票数・得票率を見ると、そこまで多くはない。どのような風が吹くかによって大きく結果が異なるのは、小選挙区制度の特徴でもある。SNSが選挙結果に影響を及ぼすようになったことで、風の吹き方・吹かせ方も変わってきている。
SNS発で瞬間的な突風が吹き、選挙制度がそれをさらに増幅させる。4年という長期の任期を有する国会議員を選ぶ方法としては、かなり問題がると言わざるを得ない。民意を適切に反映させるという視点からは、選挙制度そのものについての検討とともに、SNSに対する何らかの規制も必要になってくるだろう。

「3分の2以上」の意味
「3分の2以上」の議席を得たことで、法律や予算の「再議決」が可能になったということと、(衆議院では)憲法改正の発議に必要な議席数を得たという2つの点で、大きな意味がある。高市総理は「国論を二分する大胆な政策に挑戦していきたい」と強い意欲を示している。
ただ、再議決については、参議院での否決から60日後でないとできないという点で時間的な制約があり、それほど簡単な話ではない。憲法改正についても、国会として発議するためには参議院でも3分の2以上の賛成が必要だが、現状では与党でも過半数に届かない状況にあり、こちらも容易ではない。
憲法改正について
自民党としての到達点は、「憲法改正4項目」。それらのうち、自民党と日本維新の会の連立政権合意書で言及されているのは、緊急事態条項と、憲法9条改正の2つ。
緊急事態条項について
内閣の権限を一時的に強化することを内容とするものと、国会議員の任期を延長することを内容とするものの2つが取り沙汰されている。どちらも、そもそも必要なのかという点で十分な説明がされているとは言えない。
また、国家権力に対するコントロールを緩めるものである点でも問題が大きい。

憲法9条について
9条1項・2項は残したままで、9条の2として自衛隊を明記するというのが自民党の条文案。維新の会の改正案は、9条2項を削除し、国防軍の保持を明記。さらに、集団的自衛権の全面行使を容認するというもの。
自民党は、「今ある自衛隊を憲法に書き込むだけだから何も変わらない」という。しかし、自衛隊に対するブレーキの役割を果たしてきた憲法が、アクセルに切り替わることになり、影響は大きい。
安全保障政策について
連立政権合意書、解散表明記者会見、自民党の選挙公約等から、外交・安全保障分野の政策をピックアップすると、以下のようなものが指摘できる。

憲法9条に基づく制度や原則、国是とされてきたものが、ことごとく変更・廃止され、「もはや残っているのは条文だけ」というような状況になってきている。それをさらに加速させる方向性が示されている。

その道を進むとどうなるか
そのような政策を進めるのは、戦争をしようとしているのではなく、戦争をしないためだ。そのためにも抑止力を高める必要があるのだなどと説明される。
では、その道をそのまま進むとどうなるか。安全性を高めるつもりの軍備増強が、軍拡競争につながり、安全保障環境はかえって悪化してしまうこともある(安全保障のジレンマ)。最悪の場合にはやられる前にやらなければという恐怖にかられた相手国からの攻撃を誘発したり、攻撃する口実にされたりする危険すらある。

人口減少で超少子高齢化社会となっている日本。軍拡競争で中国に対応できるほどの予算、人員が日本にあるのか。食料もエネルギーも自給率が低く、武力攻撃に対して無防備な原発を多く抱え、自然災害に対してすら脆さを露呈している日本。「戦争なんてできやしない」と見透かされてしまうだろう。軍備を増やすことで相手国を抑止できると思う方が平和ボケなのではないか。
別の道はあるか
2つの戦争の教訓
国連の原点は、二度の世界大戦における痛苦の経験。その惨害から将来の世代を救いたいという思いから出発した。得られた教訓は、戦争の違法化、紛争の平和的解決、集団安全保障と自衛権、軍縮、国際人道法の5つをバランスよく追求していくことが大切ということ。

憲法9条が戦力不保持を決めたのは、原子爆弾の出現によって「文明が戦争を抹殺しなければ、戦争が文明を抹殺する」ことになりかねない事態となったから。
自分の国をどう守るかではなく、地域の安全をどう作るか
「自分の国をどう守るか」という発想だと、周辺国と利害が対立し、安全保障のジレンマに陥りがち。「地域の安全をどう作るか」という発想になれば、周辺国との利害は一致する。
その発想に基づく粘り強い実践を積み重ねてきているのがASEAN。紛争の平和的解決、武力による威嚇や武力の行使の放棄等を定めた、東南アジア友好協力条約。この条約を承認することを、東アジアサミット参加の条件にすることで、締約国を増やしてきた。

ランチ&懇親・懇談
終わった後は、恒例となりつつある「味噌バー」とヘルシーなお弁当をいただきながら、交流しました。後に裁判期日があったので、ゆったりとという訳にはいきませんでしたが、お一人お一人から感想や思いを直接聞かせていただき、心通わせる深い交流ができました。

何人かの方から、「選挙結果にショックを受けている」「周りの人と政治の話をするのは難しい」「自分に何ができるか考えてしまう」といったお話が出され、私からは概ね以下のようなことをお伝えしました。
何事も0か100かというような発想になってしまいがちだが、わかりやすい成果が得られなくても(100ではなくても)、それがイコールゼロということにはならない。自分が考えたり行動したりしたことによって、自分や自分の周囲には間違いなく何らかの変化が生まれている。そこに積極的な意味を見いだすのか、大きな成果が得られなかったから無駄だと思ってしまうのかは自分次第。
個人的には最近「舞台装置」の重要性を感じている。政治の話はタブーというような雰囲気があっても、もしかしたらお互いに関心があって誰かと話したいと思っている同士かも知れない。憲法カフェのような場や、ツールがあることで、そのタブーを乗り越えて深いやりとりができたりする。自分なりに使いやすい「舞台装置」を探したり作ったりしてみるというのも、「自分に出来ること」の1つかも知れない。
