12月24日、柏崎刈羽原発差止訴訟の第13回口頭弁論期日がありました。
1 原告の意見陳述
人類と原発は共存し得ない
最初に、原告団の矢部忠夫さんが、意見陳述を行いました。
矢部さんは、48年前に運動に関わりはじめたときから、
「人類と原発は共存し得ない」という考えを持ち続けてきたと語りました。
そして、原子力発電の歴史はたかだか70年に過ぎないが、
その間に世界を震撼とさせた大規模な事故が3度も起こっていること、
使用済み核燃料の最終処分は未解決なままであること、
世界の原発先行国は、脱原発を指向しはじめていること等を指摘しました。
日本における原発の問題点
また、国内の原発の問題点について、以下の通り述べました。
- 地震・火山列島の日本に54基もの原発があること、
- 原発がすべて止まっても電力不足は生じなかったこと、
- 原発はテロに対して完全に無策であることなど、
柏崎刈羽原発の問題点
さらに、柏崎刈羽原発の問題点について、以下の点を指摘しました。
- 8年前の中越沖地震で破壊された危険な原発であること、
- 軟弱な地盤の上に建てられていること
- 東京電力は16万人の被害者や、10万人の避難生活者に対する責任を果たしておらず、
今年9月に発覚したケーブル混在敷設問題等から明らかな通り、
いい加減な体質は現在に至るまで変わっていないこと - 先日公表された「ベント拡散シミュレーション」は、6号機のみを対象とするものであるが、
それでも許容できないレベルの被曝をすることなしに避難することはできないこと
矢部さんは、最後に力強く、裁判所に対して運転差し止めの判断を求めました。
2 原告提出書面の要旨
原告側は、準備書面37~39の3つの書面を提出しました。
(1)準備書面37について
準備書面37は、「被告が策定した基準地震動には合理的根拠がない」ことを主張する書面です。
高野弁護士は、被告が基準地震動を策定する際に前提としている5つの点が、
いずれも観測データと整合しておらず、従って合理的な根拠がないことを、
具体的に指摘しました。
(2)準備書面38について
準備書面38は、「中越沖地震で明らかになった柏崎刈羽原発の危険性」に関する書面です。
和田弁護士は、中越沖地震で3700もの不適合事象が発生したと述べたうえで、
原発の危険性について以下の諸点に基づき具体的に指摘しました。
- 設備安全性に対する評価が「健全」との結論を導くための目的主義的なものになっていること、
- 県の技術委員会で問題が指摘され、グレーゾーンが残ることを東京電力自身が認めていること、
- 地震応答解析でスペクトルの拡幅を実施していないこと、
- 再循環ポンプモーターケーシングの減衰定数を偽装していること
(3)準備書面39について
準備書面39は、「福島原発事故の原因を解明しないままで行う安全対策に
実効性があるとは言えないこと」に関する主張書面です。
伊東弁護士は、以下の諸点について具体的に説明しました。
- 福島原発事故による損傷の調査は実施されていない以上、
耐震設計の抜本的見直しが必要ない等とは言えないはずであること - 高圧注水のためのRCIC(原子炉隔離時冷却系)が
福島原発事故の際に停止した原因は未解明であり、これに頼るのはリスクが高いこと - 減圧のための逃がし安全弁についても、
福島原発事故で作動失敗となった原因が未解明のままであるから、
被告の対策が十分とはいえないこと - 減圧後の注水については、福島原発事故時に行ったものと変わらないこと
その要となる配管は耐震重要度分類でCクラスに位置づけられており、
地震で損傷するリスクが高いこと - 格納容器ベントも、福島原発事故時に成功しなかった原因が解明されていない上、
水素爆発に影響を及ぼした可能性も否定されていないこと
3 報告集会
期日の報告
集会の冒頭で、和田弁護団長から、
高浜原発の運転差止の仮処分命令を取り消した裁判所の決定について、
極めて不当な判断であるとの発言がありました。
(全国連絡会の声明はこちらをご覧ください)
その後、意見陳述をされた原告の矢部さん、
準備書面の要旨を陳述した高野弁護士、和田弁護士、伊東弁護士から報告がありました。
街頭宣伝の報告と今後の行動についての呼びかけ
また、原告の共同代表の一人である大西しげ子さんから、
同日に行われた街頭宣伝についての報告と今後の行動について呼びかけがありました。
弁護士会の企画、リーフレットについて
また、松永弁護士からは、弁護士会の企画やリーフレットについて説明がなされました。
なお、報告集会の様子は、以下の動画でご覧いただくことができます。