『SNS-少女たちの10日間-』太田啓子弁護士 リモートトーク付き上映


『これからの男の子たちへ 「男らしさ」から自由になるためのレッスン』

テレビ・新聞・雑誌などいくつものメディアで取り上げられ話題になっているこちらの本。すでに読んだという方も多いかも知れません。私は、スゴ腕の整体師さんみたいな本だなと思いました。

著者の太田啓子さんは、二人の男の子を育てる弁護士。ご自身が子育てをするうえで心がけていること、子どもたちの反応や成長を見て感じたことなどが綴られています。

親自身がどんなにジェンダーバイアスに気を付けていても、外部(学校、メディア、周囲の人等)からバイアスのかかった情報がもたらされることは避けられない。それに対してどのように対応したらよいか。男の子が周囲から押しつけられる「有害な男性性」をはねのけるためには、自分の感情を自分なりに言語化できるかどうかが鍵を握る。そして、異性愛者の男性は、自分が「有害な男性性」から自由になるだけでは不十分で、自身が特権マジョリティであることを自覚し、その特権を性差別のある社会を変えていくために行使することが求められる等々。

認知の歪みや、無意識の偏見は、誰しもが持っていると思います。ただ、そのことを認識・自覚することはなかなか難しいと感じます。そして、ジェンダーの問題は、男性にとっては「耳の痛い話」が多く、なかなか素直に受け入れられないこともあります。しかし、この本では、特に男性が抱きやすい疑問や陥りがちな誤解について、細かく目配りされた記述がなされているので、無用な反発や抵抗感を感じることなく読み進むことができます。

本を読み進めるなかで、「背骨が少し歪んでたので直しておきました。」「あ~、やっぱり歪んでましたか。」「そうですね。長時間椅子に座っているお仕事だとどうしても一部に負荷がかかってしまうんですよね。意識して歩くように心がけたり、毎日短時間でもストレッチをしたりするだけでだいぶ違いますよ。簡単なストレッチを動画で紹介してるんでよかったら見てみてください。」といった会話を整体師さんとしているような感覚を覚えました。整体師さんが背骨の歪みを直してくれるように、この本は読む人の中にある認知の歪みをすっきりただしてくれます。

多様性、ジェンダーなど、社会全体の価値観が大きく変わってきている(変わったことが可視化されるようになってきている)なかで、自分の価値観をアップデートする必要性を感じている方も多いのではないかと思いますが、そういう方には最適な書籍ではないかと思います。

映画上映とリモートトークをセットで

その太田啓子弁護士のリモートトークが、2021年7月3日(土)12時30分から、高田世界館で開かれます。

リモートトークは、映画『SNS-少女たちの10日間-』の上映とセットの企画です。成人女性が12歳の少女を装ってSNSアカウントを作り“友達募集”をした場合に何が起こるのか、検証実験をしたところ、「2,458名もの成人男性がコンタクトを取り、卑劣な誘いを仕掛けて」きました。この映画は、その様子を記録した衝撃のドキュメンタリー作品です。

映画の予告編はこちら↓。

「成人男性」であり、二人の男の子と一人の女の子を育てる父親でもある私としては、目を背けている訳にはいかない問題ですが、自分一人では受け止めることができないのではないかとも思ってしまいます。直視したくないほど絶望的な現実をどう受け止め、どう向き合っていけばいいのか、太田弁護士のリモートトークを聞きながら、頭と心を整理したいと思っています。