子宮頸がんの「予防接種」を受けた後に、失神、けいれん、歩行障害、不随意運動、脱毛等の症状がでるケースがあり、問題になっています。
1 接種の義務化
子宮頸がんワクチンの正式な名称は、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンといいます。このワクチンは、2009(平成21)年12月から、国内での製造・販売がはじまりました。そして、2010(平成22)年11月から公費助成の対象となり、2013(平成25)年3月には、「定期接種」の対象となりました。
「定期接種」の対象になると、市町村長は接種対象者に接種を勧奨すること、及び定期接種を実施することが義務付けられます(予防接種法5条1項、8条)。また、接種対象者には、定期接種を受ける努力義務が課されます(同法15条、16条)。
2 有効性と危険性のアンバランス
HPVワクチンの有効性について、現時点で「子宮頸がんの発症を予防する効果」までは確認されていません。確認されているのは、「粘膜の異形成(前がん病変)を阻止する効果」だけです。しかも、その持続期間は最長でも10年に満たないとされています。
さらに、すべての対象者に効果があるわけではなく、最大でも全体の5割程度の人にしか効果がありません。
これに対して、HPVワクチンの副反応としては、冒頭に記載した症状のほかに、ギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)など極めて重篤な症例が報告されています。
日本で認可されているHPVワクチンには、「サーバリックス」と「ガーダシル」の2つがありますが、副反応の報告件数は、インフルエンザワクチンと比べて、サーバリックスが38倍、ガーダシルが26倍です。また、重篤な副反応の報告件数は、サーバリックスが52倍、ガーダシルが24倍となっています。
このように限定的な有効性しかなく根本的な予防策とはいえない一方で、重篤な副反応が一定の確率で生じるワクチンの接種を義務づけることは、大きな問題です。
3 中止勧告と、その撤回を巡るせめぎ合い
定期接種の開始後に副反応被害の報告が相次いだため、2013(平成25)年6月、厚労省は、各自治体に対し接種勧奨を一時中止するよう勧告しました。また、対応を協議するための検討会を発足させました。
ところがいま、関連学会が声明を発表するなど、再び接種勧奨を再開させようとする動きが活発化しつつあります。
4 被害者がおかれている状況と求められる対策
定期接種の対象となっているのは、小学校6年生~高校1年生です。健康で元気に暮らしていた中高生が、HPVワクチンの接種後に重篤な副反応がでて通学出来なくなり、留年や退学を余儀なくされるケースもあります。
またこの副反応は医療現場でも十分に周知されていません。このため、受診した患者の訴えが理解されず、精神科を紹介されるケースもあるといいます。
被害者がこれ以上増えないよう、まずは接種を義務づける「定期接種」の対象から外すことが必要です。また被害状況を調査し、十分な情報提供を行うとともに、被害者に対する救済制度を確立することが求められています。
*この問題についてより詳しく知りたい方は、薬害オンブズパースン会議のホームページをご覧ください。