ガイドライン「中間報告」でわかったこと


日米両政府は、10月8日、ガイドラインの見直しに関する「中間報告」を発表しました。
あくまで「中間報告」なので、あまり詳しい内容は書かれておらず、目次や骨子といった程度のものですが、そこから読み取れる新しいガイドラインの問題点をまとめました。

1 ガイドラインって?

ガイドラインの正式名称は、「日米防衛協力のための指針」といいます。

外務省作成のパンフレットによると「日米安保体制を円滑で効果的に運用するため、日米防衛協力の基本的な枠組みや方向性などについて表したもの」であるとされています。

例えば、日本が攻撃されたときに、日本とアメリカがそれぞれどのような役割を果たし、どのように協力し合うのかといったようなことを定めています。

ガイドラインは、1978年に策定され、1997年に一度改定されています。
いま、再度の改定に向けて準備がすすめられています。

2 手続上の問題点~国会の承認すり抜け

まず、手続上の問題点として、本来であれば国会の承認が必要なはずであるのに、国会の承認なく策定されているという点が指摘できます。

(1)国会の承認が必要な条約と不要な条約

一般に「文書による国家間の合意」を条約といいますが、この条約は厳密にいうと、以下の表のとおり5段階に分類できるとされています。

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(2)国会の承認を回避するためのからくり

ガイドラインは、その内容からして、国会の承認が必要な「Ⅳ」にあたりそうです。
しかし、実際にはガイドラインの策定や改定にあたって、国会の承認がなされたことは一度もありません。どうしてこのようなことがまかり通ってきたのでしょうか。

ガイドラインには、「いずれの政府にも、立法上、予算上又は行政上の措置をとることを義務づけるものではない」という一節があります。
このように「法的拘束力はない」ことが確認されているため、「Ⅰ」に該当し国会承認は不要になるという訳です。

しかし、現行のガイドラインには、上記引用箇所に続けて「日米両国政府が・・・具体的な政策や措置に適切な形で反映することが期待される」と記載されており、事実上の「拘束力」を持たせています。
97年ガイドライン制定後には、周辺事態法などガイドラインの内容に沿った法律が制定されていることからも、先に引用した一節が国会の承認を回避するために便宜的に盛り込まれたものであることは明らかです。

3 内容面での問題点

(1)閣議決定の要件や「歯止め」は無意味

集団的自衛権の行使を容認する閣議決定について、政府は「限定的なものである」、「歯止めがある」等と説明しています。

しかし、「中間報告」にはそのような限定や歯止めに対応する記載は一切ありません。
むしろ、以下に述べるとおり、自衛隊の役割を拡大する記載が目立ちます。
この「中間報告」によって、閣議決定が定めた要件や歯止めはまったく機能しないことがはっきりしました。

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(2)安保条約すら踏み越えた内容~グローバルな協力

78年に策定されたガイドラインでは、日本が攻撃された場合=「日本有事」への対応について定められていました。

97年に改定された現行のガイドラインには、「日本有事」に加えて、「周辺事態」への対応が盛り込まれました。

改定後のガイドラインでは、この「周辺事態」という限定を取り払い、日米両国が地理的な制約なく「グローバルな協力」をしていくことが確認される見込みです。
日本の防衛とはまったく無関係に、米軍と自衛隊が地球規模で連携をとっていくことを意味している訳ですが、このような活動については安保条約にもその根拠を見いだすことができません。

(3)警察権の領域まで軍事的対応を行う~シームレスな対応

また、「日本有事」だけでなく「平時」や「グレーゾーン」まで含めた事態について、シームレスな(切れ目のない)対応ができるようにすることが強調されています。

本来警察権で対応すべき領域についてまで軍事的な対応をすることになる訳で、小競り合いから突発的に本格的な戦争にエスカレートしてしまいかねない危うさを孕んでいます。