「脱原発」にもいろいろある?


1 候補者が言う「脱原発」

都知事選では原発に対する政策が1つの争点になっており、「脱原発」を掲げる立候補予定者も複数いるようです。ただ一口に「脱原発」と言っても個別の問題に対するスタンスを見ると、大きな違いがあったりします。

参議院選挙のときも同様でしたが、「脱原発」や「原発ゼロ」という言葉に惑わされず、具体的な政策を見極める必要がありそうです。

2 原発に対する意見の分類

その際ポイントになるのが、以下の2つの質問に対する回答ではないかと思います。
①原子炉の再稼働を認めるかどうか
②原子炉の新設・増設を認めるかどうか

A:狭義の脱原発=即時原発ゼロ

①の質問にNOと答える人は、いわゆる「即時原発ゼロ」の立場です。
政党でいえば共産党、社民党などがこの立場です。
東京都知事選への立候補を表明している宇都宮健児氏、細川護煕氏ともこの立場であるようです。

B:広義の「脱原発」=●●年代に原発ゼロ

①の質問にYESと答え、②の質問にNOと答える方は、広義の「脱原発」の立場です。
一昨年、当時の野田政権が「2030年代に原発ゼロ」と掲げたのはこの立場です。既存の原子炉の耐用年数をふまえると自ずと稼働期間が限定されるため、新設・増設を認めないこの立場は「●●年代に原発ゼロ」になる訳です。

Bの立場はさらに、新しい規制基準よりも厳しい基準を再稼働の条件とする立場(B-1)と、新しい規制基準をクリアすれば再稼働を認める立場(B-2)とに分けることができます。
新潟県の泉田知事は、B-1の立場といえます。都知事選への立候補を表明している舛添要一氏は、「脱原発」と言っていますが、詳しいやりとりから判断すると、B-2ないしCの立場にあるようです。

C:原発維持・推進

①と②の質問のいずれに対してもYESと答える方は、原発維持・推進の立場です。安倍政権が閣議決定しようとしている新しい「エネルギー基本計画」がこの立場です。なお、「エネルギー基本計画」では①、②に加えて、核燃料サイクル政策も継続するとしています。

3 今後重要になること

世論調査では、質問が的確に設定されていないケースもありますが、全体の傾向としてはAとB-1を足した(新しい規制基準をクリアした原子炉の再稼働を認めない)立場が4~6割を占めています。
また、B-2やCの立場の人は、その理由について「電気が足りなくなる」「経済活動が停滞する」「電気代が高くなる」等の点を挙げています。

前政権がB-2(規制基準改定前に大飯原発の再稼働を決定しているため)だったのに対し、現政権はCに政策を変更しようとしています。

今後は、B-2やCの立場の人が挙げる上記の理由(=不安)に対して丁寧に応えるとともに、新しい規制基準をクリアしただけで安全とはいえないということをきちんと説明していくことが重要ではないかと思います。

もちろん、東京都は電力の最大消費地であり東京電力の株主でもあるので、都知事に誰を選ぶのかということも極めて重要です。原発立地県である新潟の一県民として、都民のみなさんの選択に期待しています。