1 チャレンジ企画
4月3日、新潟市で開催された『憲法カフェ・スペシャル 安保法「賛成」弁護士があなたにチャレンジ!!!』に、安保法「賛成」弁護士の1人として参加してきました。
企画名からもわかるとおり、講師役の弁護士が安保法賛成の立場からプレゼンを行い、参加された方からそれに対する反論を考えてもらうというものです。
賛成の立場からプレゼンするテーマは2つ。
「安保法制は日本を守るために必要だ」という点を私が、「安保法制は憲法違反ではない」という点を二宮淳悟弁護士が担当しました。
各テーマ毎に、弁護士からのプレゼン→グループディスカッション→グループごとの発表→弁護士からのまとめのコメントという流れですすめられました。
2 安保法制の必要性について
(1)私からのプレゼン
最初のプレゼンでは、パワーポイントを使って各種のグラフ、図表、新聞記事などを紹介しながら、以下の3点について説明し、日米同盟を強化してアメリカを支える必要がある、そのための安保法制であるということをお話ししました。
- グローバルなパワーバランスの変化
- 中国が南シナ海や東シナ海で現実に行っていること
- 中国の政治体制や領有権に関する主張内容の問題点
(2)グループディスカッション
グループディスカッションでは、以下の様な意見が出されました。
- パワーバランスの変化は事実だが、それに対応する方法は様々なものがあるはずではないか
- 南シナ海の問題に、地域外の国が口出しするのは不適切ではないか。例えばASEANで協議することが望ましいのではないか。
- 中国と軍拡競争をしても敵わない。別の道を探るべきではないか。
- 中国が日本と戦争をするつもりだとは思えない。
また、私が紹介した記事で不当な印象操作がなされていることを具体的に指摘する、鋭い意見も出されました。
(3)まとめコメント
対話をする際の思考方法
最後のまとめコメントでは、まず安保法制に賛成の立場の人と対話をする際、どのような順序で検討するとかみ合ったものになるのかという点について、私なりに考えたところをお話しました。
- どのような変化が起こっているのかを把握する
- その変化に対して何らかの対応が必要であるかを検討する
- その対応策として安保法制が適切であるか検討する
- 不適切であるとすればより適切な選択肢はなにか考える
軍事的対処だけでは「抑止力」は働かないこと
次に、上の3.と4.に関連して、軍事的対処の効果や適否、「抑止力」のそもそも論についてお話しました。
- 軍事的対処の「効果」には限界があること
- 軍事的対処には大きな弊害があること
- 軍事力を強化するだけでは「抑止力」を高めることにはならないこと
- 「抑止力」を発揮するためには、最低限の信頼関係と、認識の共有が不可欠であること
- 「抑止力」を高める上で、経済的な連携の強化・制度化や、外交的な機会費用の増加が有効であること
いろいろなごまかしや論理の飛躍があること
最後に、いろいろなごまかしや論理の飛躍があるので、冷静に見極めましょうというお話をしました。
- 東シナ海で中国が挑発的ともとれる行動をするようになったきっかけは何か
- 「中国の脅威」が煽られている面がある→「中国の脅威」とは具体的に何なのかを見極める必要がある
- 「中国の脅威」が安保法制の必要性にどのようにつながるのか、そもそも安保法制は日本の防衛にどのように関係するのか
3 安保法制の合憲性について
(1)二宮弁護士からのプレゼン
二宮弁護士からのプレゼンでは、閣議決定によって憲法解釈がどのように変わったのかについて確認的にコメントがあり、そのうえで以下の点について説明がなされました。
- 政府には、憲法の解釈権があること
- 内閣法制局は解釈の補助機関に過ぎず、法制局の見解が内閣を拘束するものではないこと
- 憲法の解釈変更は一切許されない訳ではなく、過去に実例もあること
- 今回の解釈変更には必要性も相当性もあることから憲法にも立憲主義にも違反しないこと
(2)グループディスカッション
グループディスカッションでは、内閣が勝手に憲法の解釈を変更できるとすれば大変なことになる、9条の規定からはとても導き出せないものではないかなどの意見が出されました。
(3)まとめコメント
二宮弁護士から、以下のようなまとめのコメントがありました。
- 解釈は条文の文言の縛りを免れない。
- 「国際環境の変化」という抽象的な理由で解釈を変更することはできない。具体的な事実を確認することが必要。
- 憲法9条の文言からは「他衛」の場合にも武力行使できるという解釈を導くことは出来ず、解釈の限界を超えている
4 対話を通じて理解を深める
(1)安保法制が必要だと考える人とも対話を
当日配布したパワーポイントについて、「これが出回ったら安倍さんを喜ばせるだけではないか」と本気で心配する意見も出されました。
ただ、ある世論調査では、7割近くの人が「安保法制が必要」と回答したという結果もでています。設問が誘導的だとの指摘もあり、私自身もそのように感じますが、それでもこれだけ多くの人がそのように回答したという事実にはきちんと向き合う必要があると思います。
(2)理解を深めるきっかけに
以前対話に関するブログ記事にも書きましたが、認識というのはらせん状に発展するものです。このため、自分とは逆の立場の意見に触れることにより、自分自身の理解を深めることができると思います。その意味で、今回の企画は、対話ブログの実践編として位置づけることができそうです。
私自身も、今回の企画の準備を通して、新たに知ったことや理解が深まったことがたくさんありました。今回の企画の準備過程で以下の本を参考にしましたが、このうち3分の1くらいは、この企画がなかったらそそもそも手にとることもなかっただろうなと思います。
(3)よろしければお声がけください
対話を広げ、理解を深めるきっかけとして、今回の様な企画はとても有益だと感じました。二宮弁護士と一緒に県内各地を回るのも面白いなと(一人で勝手に)思っています。
「うちでもやって欲しい」という方がいらっしゃればお声がけください。
*4月6日付追記
今日付のしんぶん赤旗に記事が載っていたので貼り付けます。記者さんが来ていたのも知らなかったんですが、うまくまとめてくれています。