1 安保法制を廃止するために
来年の参議院選挙に向けて
安保関連法制が9月30日に公布され、半年以内に施行されることになりました。
この法律の廃止を求める取り組みが、既にはじまっています。
この法律を廃止するためには、国会内の構成を変える必要があります。
その最初の機会が、来年7月の参議院選挙です。
この選挙で、安保法制の廃止を求める議員を、一人でも多く当選させる必要があります。
口コミが一番確実
そのためには、法律の問題点を語り広げていく必要があります。
現時点で関心を持っていない人や、賛成の立場の人に、問題点を知ってもらうための近道はなく、一人一人が自分の周りにいる人に伝えていくことが、もっとも確実な方法です。
しかし、日本では長らく「政治の話」がタブー視されてきた面があります。
安保関連法制については、各種メディアが連日のように報じたこともあり、このタブーを打ち破りやすい雰囲気も生まれてきていますが、まだまだ話すのが難しいという方も多くいらっしゃるのではないかと思います。
そこで、この問題について周囲の方と話をするうえで心がけたいことなどをまとめてみました。
2 対話の内容
まず、どのようなことを話せばよいのかという点です。
大きく分けて以下の2つの内容があると思います。
安保関連法制の「必要性」やデメリットについて
1つは、安保関連法制をつくる必要性があるのか、つくることによるデメリットはないかという点です。
これは、法律に対する賛否を分けるポイントともリンクしています。
非常に大ざっぱな言い方をすると、この法律に賛成の方は、「安全保障環境が厳しさを増しており、抑止力を高める必要がある」「抑止力を高めるための法整備だから、戦争法案というのは的外れだ」というように、必要性があり、デメリットはないと考えており、
逆に反対の立場の方は、「安保法制によって抑止力が高まるとは言えない」「抑止力的発想は古い」「アメリカの要請を断れなくなり、日本が戦争に巻き込まれるリスクが高まる」というように、必要性はなく、デメリットが大きいと考えています。
この大まかな対立構造を把握したうえで対話されるとよいと思います。
問題の本質は憲法違反の法律を作ったこと
2つめは、安保関連法制が憲法に違反するという点に関わる問題です。
圧倒的多数の憲法学者、歴代の内閣法制局長官、元最高裁長官が指摘しており、憲法違反であるということについては決着がついているといってよいでしょう。
問題は、「憲法違反の法律をつくったこと」をどう捉えるかという点です。
国会の立法権は、憲法によって授けられたものなので、憲法に違反する法律をつくる権限は誰にもありません。
また、国会議員にも、閣僚にも、官僚にも、憲法尊重擁護義務がありますので、憲法に違反する法律をつくることは許されません。
しかし、政府は憲法に違反するとの指摘に対して、まともに反論できないままに、数の力で無理を通してしまいました。東京大学の石川健治教授は、このことについてクーデターであると指摘しています。
憲法は、どのような政治的立場に立っているかに関係なく、政治に関わる以上、誰もが守らなければならないものです。これを守ることを前提にして、国家権力を行使することが許されている訳です。
このようなルール無視は、たとえ安保関連法制に賛成の立場に立ったとしても許すべきではありません。この点の理解を広げることがとても大切です。
3 対話の進め方
次に、対話の進め方についてです。
まずは話をよく聞く
対話は、相互理解を深めるためになされるものです。
このため、対話を通じて、相手を説得しよう、論破しようなどと考えるのは適切ではないでしょう。
対話する相手の意見や考えを聞いて、この問題に関する自分の理解を深めることや、相互理解を深めることが目標とされるべきだと思います。
共通点を確認する
対話では、まず自分と相手との共通点を探しましょう。
戦争はすべきではない、子どもを戦場に行かせたくない、強行採決のようなやり方はおかしいなど、安保法制に関する賛否が分かれていても、何らかの共通点はみつかると思います。
そして、その共通点が存在することを相手との間で確認することが大切です。
意見が異なる理由を分析する
次に、最終的な意見が異なる理由を分析しましょう。
中国や北朝鮮を脅威と感じている、戦争に巻き込まれるようなことはないと考えている、自分や自分に近い人に影響が及ぶような話ではないと捉えている等々、人によって様々な理由があると思います。
そこがわからなければ、こちらからいろいろ聞いてみるのもよいと思います。
自分の意見を伝える
理由がわかったら、その点についての自分なりの考えを伝えましょう。
特に、親しい人との対話では、1人称で話すのがベストだと思いますが、やや距離がある人と話すときには、一般的に言われている理由を疑問形で伝えるというのも1つの方法です。
例えば、
集団的自衛権は日本が攻撃を受けた場面の話ではないので、それを行使できるようになったとしても、日本に対する攻撃を思いとどまらせる抑止力にはつながらないという話も聞くけどどう思う?
「後方支援」で自衛隊を海外に派遣すれば、日本の防衛が手薄になってしまい抑止力が低下するという指摘もありますよね?等々。
また、安保法制についてまとめられたリーフなどを使って話をするというのもよいと思います。
4 対話の注意点
対話するうえで意識しておいた方がよいことや注意点は以下のとおりです。
事実と評価を区別する
対話をする際は、「事実」と「評価」をはっきり区別することが大切です。
例えば、10年前と比べて自衛隊機のスクランブル発進の回数が7倍になっているというのは「事実」です。
それらの事実をもとに、「中国は軍事的な脅威である」というのは「評価」です。
相手の話を聞きながら、「事実」レベルと「評価」レベルのどちらで話をするかということを見極める必要があります。
「事実」レベルの話というのは、例えば、10年前はスクランブル発進の回数がもっとも少なかった時期であり冷戦時代は、現在よりも回数が多かったというように、「事実」そのものの捉え方を対象とする方法です。
これに対し、「評価」レベルの話というのは、例えば、日中はお互いに「最大の貿易相手国」であり、経済的な相互依存度が高いから、単純に軍事的脅威と評価するのは適切でないというように、
異なる「事実」を示すなどの方法で、こちらは「評価」を対象としています。
無理をしない
2点目は、無理をしないということです。
一度や二度話をしただけで意見が変わるようなことは、むしろ稀ではないかと思います。
「日本が戦争をするようなことにはしたくないから気になっちゃうんだよね~。
また今度話しましょう。」など、「共通点」まで戻して話を切り上げるというのも1つの方法です。
また、「私はそこのところがよくわからないから、今度弁護士さんの話を聞きに行こうと思っているんだけど」などと言って、憲法カフェに誘うというのもアリでしょう。
先にも書いたとおり、対話は相互理解を深めるためのものです。
意見を押しつけようとしたり、しつこく食い下がったりするようなことは、不信感を芽生えさせ、かえって相互理解を妨げることになるので、絶対にやめましょう。
5 対話の意義
最後に対話することの意義についてコメントしておきます。
対話は、民主主義の基本です。
民主主義が成り立つ前提条件と言ってもいいでしょう。
しかし、安保法制に関する新聞社のスタンスは、真っ二つに分かれています。
法律を積極的に評価するのが、読売・産経・日経の各紙で、法律に批判的なのが、朝日・毎日のほか、多くの地方紙です。
また、テレビのニュース番組も、新聞ほどではないですが、TV局や番組によってスタンスが異なります。
このため、読んでいる新聞や、見ているニュース番組が違えば、法律に対する「評価」だけではなく、その前提となる「事実」の認識すら大きく異なっています。
このメディアの二極化によって、国民が分断されているように感じます。
これを乗り越えるのが、対話です。私たち一人一人が、分断を乗り越えて、対話により相互理解を深めることが、民主主義という点からも重要になっていると思います。
*10月23日追記
続き、というか、スピンオフ的なブログを書いたので、こちらもあわせてご覧いただければ幸いです。