つれづれ語り(平和を創る)


『上越よみうり』に連載中のコラム、「田中弁護士のつれづれ語り」。

2019年9月3日付に掲載された第67回は、「平和を創る」です。
「ピースデー」が広く認知されるようになったきっかけや、「反日デモ集会」でのフリーハグなど、勇気ある人の行動に触れて感じたことを書きました。

文末に関連する動画を貼り付けました。どちらも感動的な内容ですので、よろしければご覧ください。

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平和を創る

ピースデー

みなさんは、ピースデーをご存じだろうか?

正式名称は、国際平和デー(International day of peace)。1981年の国連決議で「9月の第3火曜日」と定められた。この日は国連総会の開会日でもあり、82年以降は、開会式で各国の代表が1分間の黙祷を行うことが慣例となっていた。しかし、ピースデーの存在は、一般的にはあまり知られていなかった。

「この状況を何とかして変えたい」、「1年に一度でもいいから、戦争や紛争、あらゆる暴力を止めたい」と考えたのが、ドキュメンタリー映画監督であり、NPO法人「ピース・ワン・デー」の創設者でもあるジェレミー・ギリ氏だ。ジェレミー氏は、ピースデーの日付を固定して、実際に非暴力の日として機能するようにしたいと考え、世界各国を駆け巡って、平和活動家や各種団体、さらには各国の首脳に働きかけた。

こうした活動が実り、2001年9月7日の国連決議で、ピースデーを毎年「9月21日」に固定し、「非暴力と世界の停戦の日」とすることが決められた。

ジェレミー氏はさらに、アフガニスタンの140万人の子ども達にポリオワクチンを届けるキャンペーンを展開。国連やアフガニスタンの現地機関の協力のもと、2001年9月21日、実際に戦争を停止して、ポリオワクチンの接種を実現した。

これ以降、ピースデーは世界的に認知され、各国で様々な取り組みが行われるようになった。ニューヨークの国連本部では、毎年この日に、国連事務総長が「国連平和の鐘」を鳴らす特別セレモニーが行われ、すべての国と人々に対してこの日一日は敵対行為を停止するようにとの呼びかけがなされている。

フリーハグ 

日本ではいま、隣国との関係が急速に悪化している。そんななか一人の日本人男性が、韓国の「反日デモ」会場の一角で、フリーハグを行ったことが話題になっている。

男性は、「私は日本人です。今、NO安倍集会が行われています。日本ではこれが反日デモと報じられ韓国人全員が日本人を嫌いだと思ってしまう人もいます。しかし、私はそう思いません。日本には、日韓友好を願う多くの市民がいます。韓国にも、日韓友好を望む多くの方がいると思っています。私は皆さんを信じています。皆さんも私を信じてくれますか?もしそうなら、ハグを。」と韓国語で書かれたボードを置き、アイマスクで目隠しをして、両手を広げて立つ。着ているTシャツには、胸に「FREE HUGS FOR PEACE」と大きく書かれている。

「本当に勇気のある人だ」と声をかけながらハグをする男性、「ありがとうございます」と日本語で話しかけながらハグをする男性、涙ぐみながらハグをする男性、ハグをして水の入ったペットボトルを手渡す男の子、優しい笑顔でハグをする母娘など、インターネット上にアップされた動画には、人と人が温かく心を通わせるシーンが数多く収められている。

韓国の国営放送KBSもこれを取り上げ、「民間レベルで市民同士が良い関係を続けることで、政府間でもよい雰囲気を作り上げていきたい」という男性の思いに多くの市民が共感し、デモ参加者の中にもハグに応じた人がいたことなどを報じた。

平和というもの

起こせる波紋の形や大きさは違っても、一石を投じることは誰にでもできる。それぞれが自分に出来ることを考え、行動を起こしていくことが、平和を創る確かな力になっていく。

いや、平和というのは、それを望む一人一人の思いを繋いでいくことそのものなのではないか。世界を動かした二人の勇気ある行動に触れて、そう感じた。

 

■映画『ザ・デー・アフター・ピース』予告編

■「日本人が反日デモでフリーハグをしてみた」