主権者教育の特別授業@新潟県立巻高校*追記あり


1 オファーをいただいて

開志学園の先生からの口コミで

3月22日(木)、新潟県立巻高校におじゃまして、1・2年生(650人!)を対象に、主権者教育の特別授業をしてきました。

オファーしてくれた先生によると、開志学園の先生が「よかったよ」と伝えて下さったたのがきっかけだったとのこと。当事務所のブログで、安塚高校や上越総合技術高校などで行った主権者教育の授業に関する記事を読んで、「生徒にわかりやすく有意義な教育実践をしていらっしゃると思ったので」と、お申し込みのメールを送ってくれました。

開志学園の授業では、最後まで集中して聞いてもらうことの難しさを感じ、反省していたのですが、先生方には好評だったことがわかり、オファーをいただけたこととあわせて、二重にうれしかったです。

6年前に建て替えたばかりということでとってもきれいで素敵な校舎でした (写真は学校のホームページから)

6年前に建て替えたばかりということでとってもきれいで素敵な校舎でした(写真は学校のホームページから)

準備の過程で

講師をするときはいつもそうなのですが、準備の過程でいろいろ本を読んで深みにはまってしまい、「あれもこれも」伝えたくなってしまうというのが私の悪い癖。今回も授業の1週間前くらいから同様の症状が出てしまいました(笑)。

ただ、今回は、時間が1コマ分しかなくもともとそんなにたくさん話すことはできないことと、対象が650人と大勢で最後まで退屈させずに聞いてもらうこと自体がかなり難しい設定だったことから、授業の前日に立ち直ることができました。

いろいろ考えた末、タイトルは開志学園の授業と同じく「私が選挙権を得る前に知っておきたかったこと」にし、授業の流れは以下の様にしました。

図

「はじめに」と「おわりに」以外の本体部分は、クイズと簡単な解説だけのほんとにシンプルな内容にして、生徒さん達の反応を見ながら、適宜雑談などをはさんでいくことにしました。

2 授業でお話したこと

最初にマイストーリー

「はじめに」 で、「みなさん、この人何しに来たのかな?と思っていると思うので、長めの自己紹介をさせてください。」と伝えたうえで、私が弁護士を志したきっかけの1つであるHIV訴訟についてお話ししました。

「人の命よりもお金を儲けることが優先されたことを知ってびっくりした」こと、「自分がそういう社会とどう関わっていくのかということを考えたときに見て見ぬふりをするような生き方はしたくないと思った」こと、「社会の歪みによって被害を受けた人を支えたり救ったりするためにはいろいろな力を身につけないといけないと感じた」ことなどなど。

無関心ではいられても

「今の日本社会がどういう状況にあるのか、いくつかデータを見てみましょう」と言い、人口予測データを示しつつ、『未来の年表』(河合雅司著・講談社現代新書)で指摘されている事態を紹介。また、「借金時計」のウエブサイトを見てもらいながら、財政状況について簡単にコメント。
図1

「よく、政治のことや社会のことに関心を持とうと言われたりしますけれど、関心があるかないかに関わらず、政治や社会の問題は否応なしにみなさんの前に立ちはだかってきます。無関心でいることはできても、無関係でいることはできないんですよね。どうせ無関係でいられないのであれば、よく知ったうえで、どう対応すべきかを考えた方がよいのではないかと、私は思っています。」

本体部分はクイズを交えて

本体部分では、クイズを交えながら、選挙、予算、法律、憲法についてお話しました。

クイズ以外でも、「どうして法律に従わないといけないの?」「どんな法律でも従わないといけない?」など、問いかけをしながらお話をすすめました。

授業開始から30分くらい経ったあたりから、眠そうな顔をしている生徒さんが出てきたので、配布してもらっていた憲法条文クリアファイルを使って、憲法クイズを出題。全員がクリアファイルで条文を一生懸命探してくれている様子がなかなか壮観で、ちょっぴり感動してしまいました。
また、出来たてほやほやの、「憲法こどもカレンダー」も配布してもらいました。
12552537_1698531827061455_7950725331954945596_n

主権者力≒対話力

「おわりに」は、主権者力≒対話力という話。

対話と討論の違い、対話が目指すもの、対話をするうえで私なりに気をつけていることなどを、具体例を織り交ぜながらお話しました。後ろの方に座っていた先生が、この部分でとても熱心にメモをとって下さっていたのが目に入り、うれしかったです。

授業の最後に、「これからの時代では、意見が異なる人との対立や分断を乗り越えて、対話を通じて、よりよい答えを一緒に見つけていくことが求められると思います。みなさんには、それぞれの専門性を身につけることとあわせて、対話力を養うことの大切さを頭の片隅にでも置いておいてもらえればうれしいです。」と伝えました。

図3 図4

3 オファーをお待ちしています

これまでいろいろな形で縁がつながり、4つの高校で主権者教育の特別授業をさせていただきました。カリキュラムの調整が大変ななかで、お話する機会がいただけることは、ほんとにありがたいことだと感じています。

引き続き、チャンスがあれば積極的に取り組んでいきたいと思います。
主権者教育をどうしようかと悩んでいる先生がいらっしゃいましたら、お気軽にお問い合わせください。

*4月12日付追記
授業を受けた生徒さん達の感想が届きました。私が伝えたかったことをしっかり受け止めてくれたことがわかりうれしくなりました。いくつかご紹介します。

「日本国憲法の中で1つだけ残すとしたら、13条の個人の尊重だとおっしゃる田中さんの意見はとても素敵だと思った。主権者力が対話力に近いというのも、個人個人の意見を集めて、生きやすい環境をつくるということだからだと思う。(中略)私は対立した意見を理解しようとしても難しいことが多いけれど、相手の話をよく聞いて、共通点を探せるように努力して、みんなが気持ちよく過ごせる環境をつくりたいなあと思った。今の私の悩みにすごくマッチしていてありがたく、元気がでました。

「憲法を学ぶことはあっても、根本を理解していなかったので、とてもためになった。先生の話はとてもわかりやすく、飲み込みやすかった。異なった意見を持つ人との間で、対立する討論ではなく、相互理解を深めて新しい考えにたどりつく対話をすることの必要性を強く感じた。」

「日本国民としてだけではなく、人としてためになる講演だったと思いました。一人一人欠けてはならない人間であるということを憲法は表しているのだと感じました。(中略)人と人の意見、価値観など違いが生じるのは当たり前で、だから多数・少数の人たちのどちらも幸せになることの重要性を学ぶことができました。

どんなに多くの人が賛成したことでも、誰かの人権が侵害されたり、憲法に違反することをしてはいけないということがわかった。(中略)自分と違う意見を持っている人と対立するのではなく、互いに理解することが必要だということもわかりました。みんなで話し合って国を作っていくことで、主権者の意見が尊重されるようになるのではないかと思いました。」

「今日の田中さんの講演を聴いて、対話がいかに大切かということを再確認した。相手の話をよく聞く、相手との共通点を探し共有する、自分の意見と違う理由を考える、自分の考えを伝える、この4点を念頭において対話することはとても大切なことだと思った。また、意見の違う人同士は、お互いがお互いを必要としているという言葉を聞いて、納得した。対話を通じて理解しようと努力すれば、自分の価値観や、もしかすると世界観さえも変えることができるのではないかと思った。」

「今回の授業で自分たちが選挙に行った方がいい理由がよくわかりました。ちょっと前まで選挙なんて別に行かなくてもいいでしょ、という考えでしたが、自分たちに大きく関わる大切なことだと思いました。また、日本の政治の根本を知れたことで、これから政治に関わるニュースについても考えを深めることができそうです。これからももっと色々な情報を見たり聞いたりすることで、将来に役立てていきたいなと思いました。」

大切なのは選挙にいくことではなくて、自分で社会を理解して参加するということなんだ、と思った。対話も大切だと分かった。相手と意見を交換することで、新しい考えを出すことができると、私も感じた。」

現在の国の状況や憲法の意義を知ることによって、選挙権を得たとき、誰を選ぶべきか考えられるのだなと思いました。主権者力≒対話力と教わって、これは現在の私たちにとってとても大切な力だなと思いました。これを身につけることによって、選挙をする際にいろんな意見を聞き、吟味し、時には誰かと話し合って、よりよい選挙をすることができると思いました。」