ジブリ、参院選、「憲法改正」


1 ジブリスタッフのみなさんの憲法に対するおもい

スタジオジブリが発行する小冊子「熱風」の最新号で、「憲法改正」が特集されています。

小冊子は発売直後に完売となったようですが、ホームページにPDFがアップされており、宮崎駿監督、鈴木敏夫プロデューサー、高畑勲監督など、ジブリスタッフのみなさんの憲法に対する思いを読むことができます。ジブリの小冊子・「熱風」(2013年7月号)

『熱風』2013年7月号http://www.ghibli.jp/shuppan/np/009348/から

『熱風』2013年7月号http://www.ghibli.jp/shuppan/np/009348/から

みなさんにもぜひ原文をお読みいただきたいと思いますが、印象に残ったフレーズをいくつか引用します。

宮崎駿監督:『憲法を変えるなどもってのほか』
「かつて日本が膨張したように、膨張する国もあります。でも、その度に戦争をするわけにはいかない。(中略)こんな原発だらけの国で戦争なんかできっこないじゃないですか。中国が膨張しているのは中国の内発的な問題です。そして、中国内の矛盾は今や世界の矛盾ですから、ただ軍備を増強したり、国防軍にすればけりがつくなんていう問題じゃないと僕は思います。」

鈴木敏夫プロデューサー:『9条 世界に伝えよう』
「作家の堀田善衛さんが、こんなことを言ったことがあるんです。『人間の歴史は殺し合いだ』って。その殺し合いが、だんだん残虐になったのが歴史だと。最初は宗教をめぐる争いで、あるときから国家同士の争いになった。人間というのはそういうことをするもんだなぁっていうのが、実際にあるわけですが、その中でね、やっとたどり着いたわけでしょ、この平和憲法に。すごい理想主義でしょ。人間がそこまできたってのは、すごいこと。僕はそう思いますけどね。」

高畑勲監督:『60年の平和の大きさ』
「この情けない私たちに歯止めをかけるすべはあるのでしょうか。知性や理性を眠らせないですむ方法はあるのでしょうか。そのための根本理念が憲法第9条なのではないかと私は思います。
あの高く掲げられた理想主義の旗。それと、これまでの日本の現実の歩みとのギャップはたしかにたいへん大きなものがあります。しかし、(中略)理想と現実の相剋を、理想を捨て去ることによって解決しようとすることほど愚かなことはありません。この大きな歯止めをはずせば、あとはただ最低の現実主義で悪い方へずるずるいく危険性がまことに高いと思います。

2 参院選の結果と「憲法改正」をめぐる状況

今回の参議院選挙では、経済政策の「成果」をアピールすることに重点をおき、憲法問題については多くを語らない戦略をとった自民党が大きく議席を増やしました。

自民、維新、みんなの3党は、てはじめに憲法改正の手続きについて定めた憲法96条を変えよう(改正手続きを緩和しよう)という点で一致しています。参院選の結果、これら3党の参議院における議席は合計で143となりましたが、「憲法改正」の発議に必要な「3分の2」=162には届きませんでした。

しかし、民主党には「憲法改正」に積極的な議員も多いうえ、公明党内にも憲法の基本理念に関わらない条文については要件の緩和を検討すべきとの意見があると報じられています。このため、今後の展開次第では、「憲法改正」の発議が現実になされるおそれもあります。

「憲法改正」については、各種の世論調査で賛否が拮抗していることからも、今回の選挙で国民が「憲法改正」を信任したわけではないことは明らかです。
国会内の多数派が勢いにのって過ちをおかさないように、私たちが「知性や理性を眠らせない」ことがますます重要になっています。